「青天を衝け」実業<算盤>編、感想・解説集|第32話から最終回<ネタバレあり>
第41話「青春はつづく」感想・解説集
第41話のあらすじ
老年になっても走り続ける栄一(吉沢 亮)は、ワシントンの軍縮会議に合わせて再び渡米し、移民問題など悪化した日米関係の改善に尽力する。一方、栄一の後を継ぐ決心をした孫の敬三(笠松 将)は、銀行員となり、経験を積むため渡英する。そんな折、関東大震災が発生。周囲の心配をはねのけ救援の最前線に立った栄一は、内外の実業家に寄付を呼びかけ資金を集める。また中国の水害に対しても、自宅からラジオを通じて募金への協力を呼びかけるが、満州事変が勃発。救援物資は受け取りを拒否されてしまう。それでも栄一はあきらめず、病床から自らの思いを伝えつづける。第41話の感想
最期まで、栄一は栄一だった。80歳、90歳になっても精力的に活動を続ける栄一。1919年に第一次世界大戦が終結し、米国での半日運動が盛んになりつつある情勢であっても、ともに手を取り合おうと呼びかけることをやめなかった。栄一の後継として東京帝国大学で勉強をする孫・敬三(笠松将)の視点から、晩年の栄一の様子が語られる最終回。
とりわけ、1923年の関東大震災において、互いの無事を喜び抱き合う栄一と篤二(泉澤祐希)のシーンや、中国で起きた水害を救うため寄付を呼びかける栄一の力強い様子には、胸を打たれる。
これまでも、栄一を演じる吉沢亮の表現力には目を惹きつけられてきた。しかし、それ以上に、この物語が終わるのが惜しく感じられるほどの熱演が、この最終回にはあった。
90歳を過ぎた栄一が、わざわざラジオ局へ出向いて中国への寄付を呼びかけるのは至難の業である。それを、家の中をラジオ局にしてしまうことで解決した。
「手を取り合いましょう」
「止まっている人がいれば助け合いましょう」
作中で栄一自身が言ったように、決して難しいことではない。ともに手を取り合うこと、助け合うこと。人として世を生き抜くために必要な営みが、昨今では少しずつ忘れられつつあるのかもしれない。そんなことを思いながら、敬三が涙するところでともに泣いた。
振り返ってみれば、長かった。
幼少期の栄一、青年時代の栄一。彼が貫いたのは「この世を良くすること」その思いだけ。父母の教えを全うしつつ「みんなが嬉しいのが一番」を信条に、自分勝手な態度を最も嫌った。
確かに、今の日本の姿は、恥ずかしくて彼には見せられない。今のこの世を、彼はどのように受け止め、嘆くだろうか。
いや、きっと、彼は下を向かない。後ろを振り返りもしない。「ただ励むだけだ」そう言い切って、今の自分にできることを探し、それに向かって一直線に進むだろう。ここまで物語を追ってきた視聴者の皆様も、彼のことをそう捉えているはずだ。
切り開いた道の先を歩いているのは、私たちなのだから。
(文:北村有)
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