「青天を衝け」実業<算盤>編、感想・解説集|第32話から最終回<ネタバレあり>
第35話「栄一、もてなす」感想・解説集
第35話のあらすじ
アメリカ前大統領・グラントの来日が決まり、栄一(吉沢亮)たちが民間を代表して接待することになった。栄一は、夫人同伴が当たり前の西洋流を採り入れようと、千代(橋本愛)やよし(成海璃子)にも協力を願い出る。そこに、大隈綾子(朝倉あき)や井上武子(愛希れいか)ら政財界の婦人も加わり、西洋式マナーの習得に悪戦苦闘する。官民あげた歓迎は順調に進むが、数日後、グラントが“渋沢家に行きたい”と言い出す。渋沢家では、千代が中心になって、グラントを歓迎するための準備が始まった…。
第35話の感想
アメリカ合衆国前大統領のグラント将軍が、日本にやってくる。いかに日本が西洋に追いついているかを見せつけるための好機と捉え、もてなす準備に邁進する栄一たち。流鏑馬(やぶさめ)や歌舞伎、相撲……。日本には胸を張れる文化がたくさんあるのだと、改めて認識できる。
夫人同伴の夜会を催すことになり、西洋式のもてなしを学ぶお千代たち。
「笑う時には歯を見せること」
「挨拶をする時は手を取り合い、ハグをすること」
これまでの日本の風習から考えると、お千代たちにとっては「はしたない」とされる習慣だろう。現代から考えると、日本も西洋の文化を柔軟に受け入れたことにより、今の形になったのだと感慨深く思える。
「女も、変わらなきゃいけない」
これはお千代の言葉だ。男性の後ろでしずしずと黒子のように働くのではなく、国を代表する一員として責任を負うこと。彼女は、女も男も関係なく、一人の人間として生きる心構えをいち早く持っていた人なのかもしれない。
夜会を無事に終えたと思いきや、今度はグラント前大統領を渋沢邸に招くことに!
焦る栄一だが、お千代の肝はすでに座っていた。前大統領をもてなす準備をせっせと始めるお千代。「ああ、ぐるぐるします!」「ぐるぐる?」と掛け合う栄一とお千代が、微笑ましい。
子供たちの歌でお出迎えしたり、国技である相撲を披露したり。血洗島名物の煮ぼうとうを振る舞うシーンでは、見ているこちら側も空腹を覚えるほどだった。
現在は大統領ではない人物を盛大にもてなして何の意味があるのか、といった見方をする者もいるようだが、栄一にとっては「意味なんてどうでもいいんじゃないか」「お千代のあんな顔は初めて見た」と思える、大成功のもてなしだったようだ。
国同士の関係性は、どうしてもデリケートに見える。過去の遺産である戦争の記憶が、ふとよみがえる瞬間もあるかもしれない。しかし、今話を見ていたら、国籍などは度外視した個人間のやりとりを大切にしたいと思えるようになった。
歴史は重んじるべきだろう。それと同じように、”今”を積み重ねていく姿勢も重視する。現代を生きる私たちにとって、それが「歴史に敬意を払う」ことにもなるのではないだろうか。
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