俳優・映画人コラム

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2022年01月19日

<ウィレム・デフォーの魅力>闇と光のカリスマ性

<ウィレム・デフォーの魅力>闇と光のカリスマ性


光のウィレム・デフォー


『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』 (C)2017 Florida Project 2016, LLC.

一方で、善人を演じることもある。『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』ではモーテルの管理人役を演じている。モーテル「マジック・キャッスル」には貧しい家庭が住んでおり、無邪気にモーテル周辺で遊びまわる子どもたちを見守っている。アイスをこぼす子どもたちに呆れながらも、その目には優しさがある。不審者が敷地に現れると、子どもたちの目に触れぬ場所に連れ出し撃退する。優しい表情から、一気に怒りの表情をみせる瞬発力をみせている。


『セブン・シスターズ』(C)SEVEN SIBLINGS LIMITED AND SND 2016     

同年に製作された『セブン・シスターズ』でも同様の瞬発力をみせている。人口過剰により一人っ子政策が行われる近未来で、7つ子を守ろうとするシングルファーザー役を演じている。子どもたちを守るために、家を改造し、教育をほどこす際の献身的な眼差し。しかし、ひとたび玄関を叩く音を聞くと銃を持ち出し、殺し屋としての構えでもって扉ににじりよる。優しさゆえに厳しい表情をみせていくのだ。オーラを瞬時に切り替え、場の空気を変容させる演技は観る者の興味を惹く力がある。



光のウィレム・デフォーとしてカリスマ性を提示した作品には『仮面の真実』(03)がある。逃亡する修道僧ニコラスが出会う劇団のボス役を演じている。劇団員としての経験がここでは活かされており、舞台の上で演じている姿と劇団のボスとしてのカリスマ性を使い分けている。

特にボスとしての演技が魅力的であり、自ら舞台に立ち仲間に指示を出すリーダーシップ、怯えるニコラスに手を差し伸べ、彼と同じ目線で勇気付けるきめ細かなマネジメント能力を表現している。ヴィランを演じることが多い彼だが、この作品を観ると理想の上司だと思わずにはいられないだろう。

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