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映画コラム

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2022年02月26日

映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』の「自閉症役を、そうではない人が演じた」論争について思うこと

映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』の「自閉症役を、そうではない人が演じた」論争について思うこと


3:合わせて観てほしい、自閉症を扱った隠れた名作映画

最後に、近年では自閉症を描いた、意義深い映画が数多く公開されていたので紹介しておこう。

『テンプル・グランディン 自閉症とともに』(10)は実在の動物学者の伝記映画だ。自閉症の「こだわり」を表現した演出が見事で、初めは軽んじられた人物がやがて自己実現を果たしていく過程がサクセスストーリーとして抜群に面白く仕上がっている。現在はU-NEXTで独占見放題配信がされている。

『旅立つ息子へ』(20)は、チャップリンを愛する自閉症の息子が、施設への入所の日にパニックになり、父と逃避行をするロードムービー。父が息子を愛するあまり共依存になっている状態と、彼らがお互いに旅を経て成長していく過程が描かれていた。現在は各種配信サービスでレンタルでの鑑賞ができる。



『梅切らぬバカ』(21)では自閉症の息子がいることから巻き起こる出来事を、綺麗事にもせず、過度にウェットにも大げさにもせず、77分という時間の中でユーモラスかつ誠実に描く作品だった。自閉症に限らない「偏見」の寓話としても見応えがある。現在は一部のミニシアターで上映が行われている。

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また、今では自閉症についての理解が進み、自閉症スペクトラムという広い範囲の言葉を用いて、映画の中で登場させることもある。『パワーレンジャー』(17)では軽度の自閉症を持つ少年が、自身の問題に悩むも、ヒーローへと成長する姿も描かれていたりした。重い障害にまつわる問題を描いた作品ももちろん必要だが、こうした「当たり前に活躍する」作品もまた世に多く出てほしいと願う。

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このように、作り手の自閉症の向き合い方、また観客が作品から受ける印象も多種多様だ。『ライフ・ウィズ・ミュージック』と合わせて観て、自閉症や、それにまつわる様々な問題について(簡単にわかったような気にはなってはいけないが)考えてみてはいかがだろうか。

(文:ヒナタカ)

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