映画コラム

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2022年07月07日

<日向坂46の魅力>逆境から辿り着いた“東京ドーム”までの軌跡

<日向坂46の魅力>逆境から辿り着いた“東京ドーム”までの軌跡



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今や国民的アイドルグループと呼ばれるまでに成長した日向坂46

しかし2022年3月30日、31日の東京ドーム公演の成功に至るまでの道のりは決して平坦なものではなかった。モットーの“ハッピーオーラ”を掲げるグループの輝かしい姿とは裏腹に、彼女たちはコロナ禍による東京ドーム公演の延期、そして多くのメンバーの活動休止をグループとして初めて経験している。

思えば、日向坂46というグループはけやき坂46時代から決して順風満帆な歩みをしてきたわけではなかった。

そんな日向坂46の東京ドーム公演の発表から成功までの約2年間を追ったドキュメンタリー映画第2弾『希望と絶望 その涙を誰も知らない』が7月8日に公開される。

ドキュメンタリーでも描かれる、彼女たちが歩んできた2年間を改めて振り返ってみたい。

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ドキュメンタリー第1弾『3年目のデビュー』が描いたもの


(C)2020映画「3年目のデビュー」製作委員会

『希望と絶望 その涙を誰も知らない』の公開の約2年前には、同様のスタッフが手掛けたドキュメンタリー映画第1弾『3年目のデビュー』が公開されている。ここでは欅坂46のアンダーグループとしての立場に置かれていた“けやき坂46”が“日向坂46”への改名に至るまでのメンバーたちの葛藤とアイデンティティの獲得が主眼に描かれていた。

AKB48のドキュメンタリーにしろ、乃木坂46のドキュメンタリーにしろ、アイドルが描くドキュメンタリーは、メンバーが直面する不条理なまでの現実と、そこでもがき苦しむメンバーたちの生々しい姿が映し出されている。本作の序盤では欅坂46と比べてガラガラな握手会の現状が描かれているが、笑顔でアイドルらしく振る舞う彼女たちの姿には胸を打たれるものがあった。

もちろん、日向坂46の『3年目のデビュー』でも、けやき坂46の創設メンバーである長濱ねるの葛藤や、けやき坂46としてのアイデンティティに悩むメンバーの言葉がドキュメンタリーの文脈において映し出されている。本作では葛藤や悩みから団結力を高め、自らのアイデンティティを確立していくメンバーたちのどこまでも前向きな姿も平行して描かれていた。

このように長濱から始まったグループが、自分たちの存在意義を見つけ出していくのが作品のテーマである。本作を通して日向坂46の知られざる葛藤や思いをより深く知ることで、彼女たちのグループへの愛はもっと深くなっていった。

遠のいた夢の東京ドーム



日向坂46には、けやき坂46時代から歌い継がれている大切な楽曲がある。

夢である東京ドームへの思いを歌った「約束の卵」だ。メンバーとファンの共通目標として東京ドーム公演を歌った同曲は、ライブのラストで歌われる定番曲であり、ファンとの絆を再確認する楽曲でもある。

そんな夢にまでみた東京ドーム公演が決定したのは2019年12月に幕張メッセで開催された「ひなくり2019 〜17人のサンタクロースと空のクリスマス〜」だった。同公演のサプライズで2020年に東京ドーム公演決定の映像が流れると、涙を目に浮かべながら倒れ込むメンバーたち。

同曲が発表された2018年から2020年までの約2年の間に、けやき坂46は日向坂46となり、グループを最前線で引っ張ってくれた柿崎芽実と、持ち前のバラエティセンスで多彩なカラーを示してくれた井口眞緒の卒業など、グループが置かれた状況は目まぐるしく変わった。

しかし、グループが目標とする東京ドームでのライブをやりたいという思いはいつまでも変わらなかった。長い間、欅坂46のアンダーグループとして自らのアイデンティティを見失っていたこともあったし、将来に期待が持てないこともあったかもしれない。ただ、東京ドーム公演という大きな舞台に立つことは彼女たちが確実に前進していることを示してくれていた。

夢の東京ドーム公演。しかし、彼女たちは三度も逆境に立たされることになる。それはエンタメ界隈に大打撃を与えた新型コロナウイルスの感染拡大である。東京ドーム公演が発表されてからわずかの間に、エンタメに付随するコンサートやライブは軒並み開催が見送られ、アイドルの活動の軸でもある握手会は形を変え、オンライン&グリートと呼ばれるオンライン握手会を余儀なくされた。

もちろん、日向坂46も冠番組「日向坂で会いましょう」(テレビ東京系)がオンライン収録になったり、ライブは配信ライブになったりと、おひさま(日向坂46ファンの総称)との直接的な交流が減ることとなった。一方で、1stアルバム「ひなたざか」の発売やドキュメンタリー映画『3年目のデビュー』の公開、「NHK紅白歌合戦」への出場など明るい話題も多かった。とはいえ、メンバーはおひさまとの距離が遠のいていく現状に対して、メンバーはブログやテレビ番組等で悔しさを各々が口にするようになる。

アイドルである以上、目の前のファンの存在は大きい。日向坂46もまた思うような活動ができない状況に戸惑いを見せていった。それでも、配信ライブでのパフォーマンスは、顔が見えない状況であるがゆえに、メンバーのファンに届けたいという思いが滲み出ていて、リアルなライブ現場で感じる手触りのようなものが、配信を通して感じられたのを覚えている。

日向坂46の明るさは空間を超えるんだと、当時の私は思った。

メンバーの相次ぐ活動休止



新型コロナウイルスの感染拡大と並行して、グループは松田好花、宮田愛萌、富田鈴花、佐々木美玲、小坂菜緒といったメンバーが体調不良等により、相次いで活動休止を発表。

アイドルは輝かしいイメージに反して、体力的にも精神的にも並大抵の胆力だけではやってはいけない職業だ。ましてや10〜20歳の女性であれば、より困難を伴うのは当然だろう。それに日向坂46のメンバーは誰もがファン思いで、いつでも全力で、笑顔を届けてくれるがんばり屋であることはファンはみな知っている。だからこそ、この一連の活動休止発表はとても心配だった。

メンバーの活動休止がこれほど相次ぐのは異例の出来事。その都度感じたのは、メンバー同士の絆だった。渡邉美穂はかつて公式ブログで「もし仲間が倒れた時は僕が背負うから」という「約束の卵」の歌詞を引用したうえで、「私はずっとこの言葉を忘れたくないし、これまでも忘れないようにしてきました」と綴り、金村美玖も公式ブログで「全員が日向坂にとって大きな存在なんですよね」と仲間を大切に思う気持ちを言葉にしていた。

活動休止の度にメンバーの口から告げられるこうした言葉の数々は、復帰の後押しになっただろうし、改めてグループの絆の強さを感じさせられた。

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(C)2022映画「希望と絶望」製作委員会

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