常に“最高潮の男”ブラッド・ピット── 俳優としての魅力に迫る!


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伊坂幸太郎の小説「マリアビートル」をハリウッドで映画化し、日本でも9月1日から公開が始まった『ブレット・トレイン』。監督はスタントマン出身でアクション描写に定評のあるデヴィッド・リーチ、そして主演を務めているのがハリウッドを代表する俳優ブラッド・ピットだ。

今や俳優としてだけでなく、製作者としての実力も評価されているピット。長年ハリウッドの第一線で活躍し、もはや「カッコいい」という言葉だけではくくれない強靭な存在感を放つ。今回はそんなブラッド・ピットについてご紹介していきたい。

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その名を知らしめた衝撃作『セブン』



おそらくブラッド・ピットの名前を一躍世に広めた作品が、デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』だろう。キリスト教の七つの大罪をなぞる連続猟奇殺人事件が発生し、引退を控えたベテラン刑事サマセットと新人のミルズが犯人を追うサスペンス作品だ。もはや説明不要といっても過言ではない大ヒット作で、ピットは血気盛んなミルズ刑事を演じている。

映画が公開された時点でピットのビジュアルは完璧に仕上がっていて、スクリーンに映し出されたその姿を見た瞬間に一目惚れした人も多かったのではないか。物語は血の気が引くほどおぞましい内容だが、作品の衝撃度に真っ向から対抗できるほどの魅力がピットには備わっていた。



さらに掘り下げれば、泥臭く或いは血生臭い場面でも全力でぶつかっていくピットの熱量が映画の成功をもたらした一因であることは間違いない。ただ「カッコいい」というだけでは、さすがにピットの存在も目を背けたくなるあの内容には埋もれてしまっていたはずだ。

雨中のシーンで車のフロントガラスに突っ込むほどの力の入れようで(劇中でミルズが装着していたギプスはこの時の傷が原因らしい)、ミルズが迎える悪夢のような結末もピットの演技力あってこそだと思える。

ピットのスター性を見抜いていた巨匠監督



ピットのフィルモグラフィを遡ると、『セブン』より前からいくつものメジャー作品に名前が連ねられている。そういった意味では、1991年の『テルマ&ルイーズ』で演じた風来坊J.D.役が印象深い。

リドリー・スコット監督が手がけた本作は、タイトルロールであるテルマとルイーズの逃避行が描かれ「なぜ2人が追い詰められなければならないのか」というやり場のない怒りに似た問いかけを観客に投げかけてくる。

ピット演じるJ.D.も2人の運命に大きく関わり、誰もが彼に対して負の感情を抱くはず。言うなれば汚れ役なのだが、ピットはどこか嬉々と演じているようにも見える。

ようやく掴んだメジャー作品の重要な役柄とはいえ(オーディションにはジョージ・クルーニーも参加していた)、“イケイケ感が爆発した軽薄キャラ”が板についてしまえば今後のキャリアに影響する可能性もあったはず。それを厭わなかったピットの好演は、確実にテルマとルイーズの心だけでなく作品そのものにも大きな爪痕を残した。

あまりにも美しいヴァンパイア



ピットよりもさらに長くハリウッドで活躍し、『トップガン マーヴェリック』の特大ヒットで改めて存在感を示したトム・クルーズ。彼とピットの貴重な共演作が、1994年の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』だ。

アン・ライスの原作小説を映画化したヴァンパイア・レスタトにまつわる物語である。とにかく本作ほど“耽美”という言葉が似合う作品も珍しいのではないだろうか。当初はクルーズとピットの配役に苦言を呈したライスが、映画を鑑賞して翻意したというエピソードも頷ける。

とにかく、レスタトとピットの演じるヴァンパイア・ルイが美しい。ルイはレスタトに選ばれてヴァンパイアと化しており、ことあるごとに対立する対の存在にもなっている。言うなれば、合わせ鏡のようなキャラクター。既にトップスターとして君臨するクルーズと競演するだけでなく、まったく引けを取らなかったピットの覚悟が垣間見える作品でもある。

怪演が光った『12モンキーズ』


(C)1995 UNIVERSAL CITY STUDIOS. INC. All Right Reserved. 

これまでに筆者が観てきたピットの出演作で、「特に印象に残る演技は」と聞かれたら『12モンキーズ』を挙げるかもしれない。鬼才テリー・ギリアムが監督した『12モンキーズ』は『セブン』の大ヒット直後に公開され(なお日本では翌年1996年に公開)、ピットはゴールデングローブ賞助演男優賞を獲得し、アカデミー助演男優賞へのノミネートにも至った。


(C)1995 UNIVERSAL CITY STUDIOS. INC. All Right Reserved. 

本作は謎のウイルスが蔓延したことにより50億人が死滅し、わずかに生き残った人類が地下で暮らす世界が舞台。とはいえウイルス蔓延より前の時代にタイムスリップを重ねるため、物語は主に1990年と1996年のパートが多くを占めている。

過去に向かう主人公ジェームズにブルース・ウィリスが起用され、本編の隅々までギリアム節が詰め込まれた本作。進めば進むほど謎が深まる物語はもちろん、アンダーグラウンドなプロダクションデザインが従来の大作映画とは一線を画す作品だ。


(C)1995 UNIVERSAL CITY STUDIOS. INC. All Right Reserved. 

ピットが演じたのは、1990年にタイムスリップしたジェームズが精神病院で出会う患者・ジェフリー。初登場シーンから一癖も二癖もある振舞いが目立ち、ジェームズという男の行動に自然と目が奪われてしまう。

物語の時代設定が変わることもあり、ジェフリーは容姿含めて“精神病院の患者”から“動物解放協会の男”へと変容していく。一方でどこか危険な匂いのする男という印象は一貫していて、斜視がちの表情からも何を考えているのか掴みどころがない。

結末に大きく関わるため詳細は伏せるが、ジェフリー=ピットの存在は観客をミスリードさせる意味でも極めて大きい。ウイルスをばら撒いたとされる集団“12モンキーズ”が物語の鍵を握る上で、ジェームズが翻弄されるように観客もまたピットの演技に惑わされてしまうのだ。

新旧スター俳優の共演で話題のサスペンス・アクション



筆者がブラッド・ピットという俳優を知ってから遡った作品の1つに、『リバー・ランズ・スルー・イット』がある。名優ロバート・レッドフォードが監督を務め、ピットが主演した美しいロケーションが画面に映えるドラマ作品だ。

レッドフォードは出演こそしていないものの、筆者は当時映画初心者ながらレッドフォードとピットが「似ている」と感じていた。顔立ちもそうだが、佇まいと言うのか、それともオーラと言うべきなのか……。

そんな2人が時を経て共演というかたちで顔合わせを果たしたのが、トニー・スコット監督の『スパイ・ゲーム』。『セブン』はもちろん『ファイト・クラブ』や『スナッチ』への出演でまさに波に乗るピットがレッドフォードと共演、しかも監督がヒットメーカーのトニー・スコットなのだからチェックしないわけにはいかなかった。

フタを開けてみれば2人はCIA内で師弟関係にあり、拘束された弟子(ビショップ)を救うべく引退直前の師匠(ミュアー)が動くというストーリー。エモい。じつにエモい。さらにトニー・スコットのスピーディーでサスペンスフルな演出、ハリー・グレッグソン=ウィリアムズの緊張感みなぎるエキゾチックな音楽も重なって全編が見どころ。クライマックスの怒涛の展開を、レッドフォードとピットのバックボーンも重ねながらぜひ観てほしい。

コーヒー代を出演料にノリノリでカメオ出演


(C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

ピットほどの大スターとなれば作品は自らの目で選び、主演を張ることがほとんど。最近サブに回った『ザ・ロストシティ』への出演で話題を呼んだが、脇役で出ることなどほとんどない。端役となればなおさらだろう。

ところが『デッドプール2』は違った。デップーがやりやがった。公開まで伏せられていたが本作にピットがカメオ出演しており、しかも演じたのはパニッシャーという体を透明にできる能力を持ったキャラクター。そのたもピット本人の顔は一瞬しか映らない(爆笑必至の状況で)。

大スターらしからぬカメオ出演だが、映る時間はわずかでも本人はなんとも楽しそう。しかもピットが出演料として要求したのが“コーヒー代”(つまり「ギャラはいらないよ」という意味)というのだから微笑ましい。本来なら現実には有り得ないようなエピソードながら、『デッドプール』シリーズの作品性やリーチ監督がかつてピットのスタントダブルを務めていた縁もあるかもしれない。

いずれにせよ、大スターになっても自分を飾ることのないピットの人柄がうかがえるエピソードだ。

俳優として念願のオスカー獲得!



ピットはプロデューサーとして多数の作品に携わり、その慧眼は『それでも夜は明ける』や『ムーンライト』でアカデミー作品賞を受賞した輝かしい功績からも窺い知れる。プロデューサーという立ち位置で先にオスカー像を手に入れたわけだが、ピットは2019年の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でついに俳優としてアカデミー助演男優賞を獲得した。



本作はクエンティン・タランティーノ監督、レオナルド・ディカプリオ主演の強力タッグでネームバリューとして申し分なし。そこにピットや物語の重要な役割を担うシャロン・テート役でマーゴット・ロビーが加わるのだからまさに「最強の布陣」と呼べるだろう。

オスカーを獲得するほどのピットの演技については、ここで語るべくもない。筆者はなにを隠そうピットが披露したバキバキの腹筋に光の速さで目を奪われたし、マイク・モー演じるブルース・リーとの対決シーンで見せた華麗なアクションだけで元が取れたと思った。



ピットはディカプリオ演じるテレビ俳優ダルトンを支える付き人でスタントマンのクリフを演じており、ダルトンとの関係性やシャロン・テート殺害事件に光を照らすストーリー自体ももちろん良かった。だからこそ、そしてあのクライマックスを踏まえてこそ、本作は身構えることなくもっと気楽に(と書いてしまうと事件本来の悲劇性を無視してしまうため語弊もあるが)俳優の魅力を堪能できると思った次第。

トップを走り続けるピットがここにきて演技力・肉体美の最高点を更新した事実は、純粋に素晴らしいことなのだ。


今回ご紹介した作品群は、ピットのフィルモグラフィの中でもメジャーかつ比較的すぐに鑑賞しやすいタイトルが中心。他にも『ファイト・クラブ』や『バベル』、『ジェシー・ジェームズの暗殺』、『マネーボール』などピットの作品選びは振り幅が限りなく広い。

常に最高潮の男ブラッド・ピットが今後俳優として、製作者として、どんな活躍を見せてくれるのか目が離せない。

(文:葦見川和哉)

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(C)1995 UNIVERSAL CITY STUDIOS. INC. All Right Reserved. 

| 1995年 | アメリカ | 130分 | (C)1995 UNIVERSAL CITY STUDIOS. INC. All Right Reserved. | 監督:テリー・ギリアム | ブルース・ウィリス/ブラッド・ピット/マデリーン・ストウ/クリストファー・プラマー |

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