Netflixシリーズ「今際の国のアリス: シーズン1」Netflixにて独占配信中|Netflixシリーズ「今際の国のアリス: シーズン2」|12月22日(木)よりNetflixにて独占配信|© 麻生羽呂・小学館/ROBOT

Netflix「TUDUM Japan」レポ:キャストの言葉は作品を読み解く重要なファクター



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Netflixが全世界のファン向けに行う年に1回のグルーバルファンイベント「TUDUM」が、9月24〜25日にかけて開催された。(日本時間)

韓国〜インド〜ヨーロッパ&アメリカとステージをリレー、そのグランドフィナーレとなったのが日本で行なわれた「TUDUM Japan」だ。“ネトフリ”で配信されるアニメやドラマ、オリジナル映画などの新作( ※一部はすでに配信中)への期待がより高まった同イベントについて、cinemas PLUSでは特に印象的だった部分にフォーカスした記事をお届けする。

「TUDUM Japan」で感じた監督・出演者の“訴求力”


▲イベント配信YouTube(※アーカイブは2023年9月24日まで)

13時から3時間半にわたって全世界に向けて配信された「TUDUM Japan」では、新作のティザー映像をふんだんに紹介。出演する俳優や声優、作り手たちのインタビュー映像に加えて、3組のキャストが会場に登壇してトークを展開した。(『今際の国のアリス』シーズン2から山﨑賢人&土屋太鳳、『舞妓さんちのまかないさん』から森七菜&出口夏希、そして『First Love 初恋』から満島ひかり&佐藤健が、それぞれ登場)

抽選で招待されたオーディエンスおよび取材に訪れたメディア陣、そして配信を見る全世界のユーザーに向けて撮影秘話や見どころを語ったことにより、各作品の視聴意欲が大いにそそられたのは、記者だけではないはず。出演者や監督自身が発する言葉の訴求力を、あらためて感じずにはいられなかった。

■『今際の国のアリス』シーズン2


Netflixシリーズ「今際の国のアリス: シーズン1」Netflixにて独占配信中|Netflixシリーズ「今際の国のアリス: シーズン2」|12月22日(木)よりNetflixにて独占配信|© 麻生羽呂・小学館/ROBOT

『今際の国のアリス』シーズン2で言えば、緑化した渋谷の巨大なオープンセットを足利にしつらえた話、はたまた名古屋の道路を封鎖してカーアクションを撮った話(名古屋はカーアクションロケのメッカだが、同作ロケでの封鎖距離は歴代最長とのこと)、多数のコンテナを迷路状に組んだ神戸ロケの話などが挙げられる。

そんなエピソードが、解禁されたばかりのティザー予告やメイキング映像に添えられることで、スケールの大きさがよりイメージしやすくなるのだ。(しかも、山﨑や土屋らによる語りおろしだけあって、臨場感も伝わってくる)


Netflixシリーズ「今際の国のアリス: シーズン1」Netflixにて独占配信中|Netflixシリーズ「今際の国のアリス: シーズン2」|12月22日(木)よりNetflixにて独占配信|© 麻生羽呂・小学館/ROBOT

中でもひときわ期待値が上がったのが、山﨑演じる主人公のアリスと山下智久ふんするキューマが対峙するシークエンス。

「すごかった!(土屋)」「そう、インパクトが…… (山﨑)」と主演の両者が思わず感嘆したシーズン2屈指の注目キャラクターを、山下自身も「チャレンジングな役だった」と回想した。

さらに山﨑が「(キューマと)正面で目と目を向き合わせてしゃべるシーンで、山下さんと目と目で会話のキャッチボールをしたなぁ、という印象がめちゃめちゃ強いです」と撮影時の印象を語ると、山下も「(アリスとキューマは)キャラクターは全然違うんだけど、根本にあるものがちょっと近いというか、根の方でつながったような印象が僕の中で勝手にあって。撮影なのかリアルなのか、フワフワした感じだったんですけど、演技の中でうれしくて貴重な瞬間を味わえたことは、すごくいい経験になりました」と、敬意を込めて返答する。


Netflixシリーズ「今際の国のアリス: シーズン1」Netflixにて独占配信中|Netflixシリーズ「今際の国のアリス: シーズン2」|12月22日(木)よりNetflixにて独占配信|© 麻生羽呂・小学館/ROBOT

現場での俳優同士の関係性や全身全霊で役に臨んだ意気込みが垣間見えて、短いながらも実に興味深いやりとりだったことを強調しておこう。

■『舞妓さんちのまかないさん』


Netflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」|2023年1月12日 (木)Netflixにて全世界同時配信予定|©小山愛子・小学館/ STORY inc.

『舞妓さんちのまかないさん』では主演の森と出口に加えて、総合演出を務めた是枝裕和監督との鼎談映像に、同作を読み解くワードが散りばめられていた。


Netflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」|2023年1月12日 (木)Netflixにて全世界同時配信予定|©小山愛子・小学館/ STORY inc.

思わず膝を打ったのが、「森さんの中には、小さな樹木希林が棲んでいる」という是枝監督による森七菜評。なるほど、どの作品でも“その世界の住人”になれる彼女の感性は、かの名優と通底していたのか──と、深く頷かされた。

対して出口には、「いい意味で計算ができないのが魅力。撮っていて面白かった」と、旬の素材のみずみずしさを浮き彫りに。素ではすこぶる天然キャラと、綾瀬はるかを彷彿させる一面もある弱冠20歳は、本格的に芝居の道を歩み出したばかりの成長株だ。


Netflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」|2023年1月12日 (木)Netflixにて全世界同時配信予定|©小山愛子・小学館/ STORY inc.

そんな2人の関係性が中盤のエピソード以降、役を通じて明らかに変わっているのが見てとれたと是枝監督が語ったように、森と出口=キヨとすみれが絆を深めて成長していく過程がメタ構造として描かれていることにこそ、この作品の妙味がある。

実際、登壇した2人の微笑ましい会話とやりとりに、京都での3ヶ月が濃密で特別な忘れがたい日々だったことが透けて見えた。

■「First Love 初恋」


Netflixシリーズ「First Love 初恋」|2022年11月24日(木)Netflixにて全世界独占配信開始

「TUDUM Japan」で“トリ”を務めたのは、11月24日から全世界独占配信される「First Love 初恋」の主演・満島ひかりと佐藤健だった。両者の対談も例に漏れず実に興味深く、随所で類いまれな表現力を持つ2人の俳優の凄味を実感させられることに(しかも本人たちは、凄味とは自覚していない)。たとえば、次のやりとり。何気ない会話だが、実のところ無意識に本質に迫っている。


Netflixシリーズ「First Love 初恋」|2022年11月24日(木)Netflixにて全世界独占配信開始

満島「晴道(=佐藤の役)、どうだった? 自分で見て」
佐藤「晴道はね……人間としてダメです(笑)。“ラブストーリーあるある”でもあるんですけど、『もっと自分の心の中で正解出てるだろ!』って思いながら見ていました」
満島「でも、その感じがよかったよ。人は結局、誰のことでも愛せるんだけど──という感じが出ていて、晴道に」
佐藤「そうそう、リアルではあるし、たぶんそういう男性はとても多いと思うんですけど、見ている僕はモヤモヤしましたね。『オイッ、気づけ! 逃げるなッ!』って」


Netflixシリーズ「First Love 初恋」|2022年11月24日(木)Netflixにて全世界独占配信開始

数多の役柄の人生を生きて、疑似的ではあるものの、その数だけ恋や愛を経験してきた2人だからこその、芯を食ったエピソードトーク。初恋という甘美なテーマをほろ苦くも滋味深く、ときに喉の奥に引っかかるようにして居心地悪く残り、しかしながら胸の奥では忘れ得ぬ若き日々という特別なものとして描いている作品であることが、浮き立ってくる。


Netflixシリーズ「First Love 初恋」|2022年11月24日(木)Netflixにて全世界独占配信開始

会場で両者が繰り広げた“サイコロ恋バナ”でのほっこり具合もさることながら、俳優として役や作品をじっくりと語る言葉の強さと重みを再認識したという意味でも「TUDUM Japan」は意義深かったと言える。



エンターテインメントをより深く楽しむためのフックとなり得るイベントとして、来年以降もさらなる充実を──と勝手なリクエストをしつつ、新作の配信を待つこととしよう。

(文:平田真人)

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