【湊かなえ】映画化作品6作+αを総まとめ!

(C)2022映画「母性」製作委員会

「デビュー作にその作家の全てが凝縮されている」の言葉が、湊かなえには特にぴったりと言えるでしょう。湊かなえのデビュー作は、映画も大ヒットした「告白」です。この1作だけで“イヤミス(読後、イヤな気持ちにさせるミステリー)”を世間一般に定着させた影響力はあまりに大きいでしょう。

そんな湊かなえが「これが書けたら作家を辞めてもいい。そう思いながら書いた小説です」と語った作品『母性』が映画化されました。

そこで今回は『母性』の公開に合わせて、“湊かなえ”原作の映画について振り返ってみたいと思います。

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『告白』(2010年)

(C)映画「告白」フィルムパートナーズ

まずは何と言っても『告白』です。

2008年の同題の湊かなえの作家デビュー作を当時『下妻物語』『嫌われ松子の一生』などで注目を浴びていた中島哲也監督映画化。

主演に松たか子、共演に岡田将生・木村佳乃が並びました。また松たか子演じる教師の担当クラスの生徒たちの中には、今となっては売れっ子となった若手俳優が揃っています。

それまで極彩色の世界観を展開していた中路監督が一転してモノトーンの絵作りを展開、原作通りの展開ではあるモノの中島監督映画だと感じさせる異様な1本となりました。本作は興行収入38.5億円のヒットを記録しただけでなく、日本アカデミー賞最優秀作品賞を筆頭に批評の面でも成功を収めています。

改めて見直してみれば、それまで好青年キャラだった岡田将生が“何かちょっと嫌な部分がある奴”を演じています。近年『ドライブ・マイ・カー』『CUBE一度入ったら、最後』などで演じていた、爬虫類的なキャラの原点を見ることができます。

衝撃的な“イヤミス展開”にハマる人が続出し、“湊かなえ映画”は絶好のスタートを切りました。
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『北のカナリアたち』(2012年)

(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会

 “湊かなえ映画”は2作目にして。一気に吉永小百合主演映画にまで昇りつめます。短編集「往復書簡」の中の一遍を原案にした阪本順治監督作品『北のカナリアたち』です。

北海道の分校で働く教師とその6人の教え子の子供の頃と20年後の物語を交互に描く1本。

吉永小百合に加えて柴田恭兵・仲村トオル・里見浩太朗と言った実力派が揃い、さらに20年後の6人の教え子を森山未來・満島ひかり・勝地涼・宮崎あおい・小池栄子・松田龍平という豪華すぎる面々が並んでいます。

本作も興行・批評の両面で成功と言っていい結果を残しました。

ミステリーとしての要素は少なめですが豪華キャストによるヒューマンドラマとしての完成度が高い1本です。

『白ゆき姫殺人事件』(2014年)

(C)2014「白ゆき姫殺人事件」製作委員会 (C)湊かなえ/集英社

湊かなえの“イヤミス”感満載の映画といえば『白ゆき姫殺人事件』でしょう。

井上真央と綾野剛のW主演体制に加えて染谷将太・金子ノブアキ・菜々緒・貫地谷しほりなど、隅々まで話題性の高いキャスト陣で固めてきた逸品です。

監督は伊坂幸太郎作品などミステリー作品で定評のある中村義洋が務めています。

いわゆるネット上の誤った拡散と炎上を取り込んだ内容で、今でも起きているデジタルタトゥー的なモノを想像させ、万が一にも自分が巻き込まれたらと考えたらゾクっとさせられる作品です。

原作では架空のSNSですが、映画ではTwitterに変更されています。Twitter側の全面協力によって実現し、観客にとってはよりリアルに感じられる物語です。

原作小説の出版が2012年で、映画化は2014年。原作は何と10年前ですが、ネット上で誤った情報が拡散・拡大されていく様は現代的なものになっています。

『少女』(2016年)

(C)2016「少女」製作委員会

死の瞬間に取りつかれた女子高生の夏休みを描いたのが、2016年の『少女』です。監督・脚本は三島有紀子。 

原作者も女性で主人公も女性。一方で映画化の際に女性が監督を務めた“湊かなえ映画”は『少女』だけです。

Wヒロインを演じるのは本田翼と山本美月。当時すでに20代半ばだった2人の女子高生役は、極端な世界観の“湊かなえ映画”で違和感なく馴染んでいました。知的なキャラを本田翼が、天真爛漫キャラを山本美月が演じる、いい意味でパブリックイメージとは異なるキャスティングも面白く作用しています。

共演には稲垣吾郎が出ていたり、新田真剣佑や石橋静河の名前も。

大きな枠組みでいえばミステリーですが、スティーブン・キングの青春譚のような雰囲気のある物語で、イヤミスに抵抗感がある方にもオススメです。

『望郷』(2017年)

(C)2017 avex digital Inc.

1つの島を舞台にした全6編の短編集「望郷」から「夢の国」「光の航路」の2編を、貫地谷しほりと大東駿介の主演で映画化したのが『望郷』

しきたりを重んじる家庭に育ち、故郷に縛られる生活をしていたヒロインは、大人になり幸せな家庭を築いていました。そんな中、子どもの頃から自由の象徴として憧れていた本土にある「ドリームランド」が閉園することを知り、彼女がずっと思い続けていたことを語り始めます。その一方で、転任のため9年ぶりに本土から故郷へ帰ってきた男のもとに、1人の男性が訪ねてきます。教師をしていた父の教え子を名乗る男の話から、自分の父親の真の姿を知ることに。

“親子”という共通したテーマがあるものの、もともと別のお話ということもあって、新規カットを加えた形で別々に独立したドラマ版に再編集されています。

ちなみに「望郷」からは後に3編がドラマ化されています。

番外:『贖罪』(2012年)


ドラマでありながら、ヴェネチア国際映画祭を筆頭に世界各国の映画祭に招待されたのが『贖罪』です。

監督が国際的に評価の高い『CURE』や『スパイの妻』の黒沢清監督作品だったことも大きいと思いますが、珍しいケースです。

主演は小泉今日子、共演に蒼井優・小池栄子・安藤サクラ・池脇千鶴と名前だけでも惹かれます、また作品としての完成度も高く、未見の方にはオススメです。

『母性』(2022年)

(C)2022映画「母性」製作委員会

2022年の最新“湊かなえ映画”が『母性』です。

母親と娘の2つの視点、そして映画ならではの第3者的な視点を盛り込んだ映画ならではのトリッキーさと戸田恵梨香&永野芽郁の熱演が光る作品です。

本作もミステリーという大きな枠組みの作品である一方で、見どころはいわゆる謎解きや犯人探しではなく、母と娘の“愛情”の物語です。

とにかく、見どころは戸田恵梨香。本人も演じた後もかなり引きずったということですが、“それもありなん”と思わせます。ただ生きていくだけなのに魂・心身がどんどん擦り減っていく、削り取られていく様は“熱演”とか“怪演”といった言葉でも足りません。渾身の演技は必見です。

“イヤミス”の女王と呼ばれて久しい湊かなえ作品の本質は、謎解きや犯人探しではなく事件や事件ですらない事柄に接した時の人々の心理描写だと思います。描写が生々しいために結果として“イヤミス”という言葉に結び付くのでしょう。

“湊かなえ映画”は「ミステリーという体裁の人間心理ドラマ」だと思って接することが、作品へのの正しい作法と言えるかもしれません。

(文:村松健太郎)

■『白ゆき姫殺人事件』配信サービス一覧

| 2014年 | 日本 | 126分 | (C)2014「白ゆき姫殺人事件」製作委員会 (C)湊かなえ/集英社 | 監督:中村義洋 | 井上真央/綾野剛/蓮佛美沙子/菜々緒/貫地谷しほり/金子ノブアキ |

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