ホラー最恐『悪魔のいけにえ』をハロウィン・シーズンに楽しもう!

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まもなく10月31日、ハロウィンがやってきます。もともとは秋の収穫を祝い、悪霊などを追い払う西洋の宗教的意味合いの行事(もっとも、キリスト教のお祭りではありません)でしたが、現在はホラー・チックなお祭りとして日本でもここ数年急にゾンビや魔女などコスプレをして盛り上がるようになってきています。

一方、このところホラー映画の名匠たちがあいついでこの世を去っています。『エルム街の悪夢』(84)『スクリーム』(96)のウェス・クレイヴン(1939~2015年)、『ゾンビ』(78)『URAMI~怨み~』(00)のジョージ・A・ロメロ(1940 ̄2017年)、そして『悪魔のいけにえ』(74)『スペースバンパイア』(85)のトビー・フーパー(1943~2017)……。

では今回、これらハロウィンの時期に見るにふさわしい今は亡き名匠たちの作品群の中から、代表して『悪魔のいけにえ』について振り返ってみましょう!

異常殺人鬼レザーフェイスに
襲われる若者たちの惨劇!

映画『悪魔のいけにえ』の原題は“THE TEXAS CHAIN SAW MASSACRE”=“テキサス・チェーンソー大虐殺”。

そのタイトルにふさわしく、1973年8月18日、折しも墓荒らしが頻発している真夏のテキサス州を、帰省がてらワゴン車でドライブ旅行中の5人の男女が、道中拾った不気味なヒッチハイカーのために散々な目に遭います。

その後、車がガス欠したために、一行は近隣の家を訪ねますが、そこには人間の皮の面をかぶった大男“レザーフェイス”や、先ほどのヒッチハイカーたちが住んでいました。

実はその家の住人たちこそ墓荒らしの犯人であり、人骨で家具を、人肉でソーセージを作る異常残虐殺人鬼一家だったのです。

そして若者たちは、ハンマーやチェーンソーなどで次々と、レザーフェイスによって惨殺されていくのでした……。

本作は1957年にウィスコンシン州プレーンフィールドで実際に起きた農夫エド・ゲインによる猟奇殺人事件をモデルに作られたものとされていますが、これが長編映画2作目で商業映画としてはデビュー作ともなったトビー・フーパー監督は、16ミリ・フィルムの粒子の粗さや手持ちキャメラを活かしながら、その惨劇を冷徹に、あたかもアメリカン・ニューシネマのようなドキュメンタリー・タッチで捉えていきます。

日本では『エクソシスト』(73)に始まる世界的オカルト映画ブーム真っ盛りの75年2月に公開されました。
(一方で当時は『悪魔の赤ちゃん』73、『悪魔のはらわた』74、『悪魔の墓場』74など、ホラー映画の邦題に“悪魔”とつけるのが流行していました)。
当時これをまともに批評できる映画マスコミはほとんどいなかったという記憶があります。

みんな、あまりにも前例のない究極の残酷映画を目の当たりにして、ただただ圧倒され、その恐怖と狂気におののくしかなかったからです。

知恵と工夫を駆使した映像と音響で
究極の恐怖を芸術的なまでに描出!

実はこの作品、よくよく見ると、後のスプラッタ映画のような特殊効果を駆使しての、肉を切り刻み内臓が露になるといったあからさまな残酷ショットはほとんどありません。

16ミリ・フィルムの使用もそうですが、要はこの映画、当時8万3000ドルというかなりの低予算で作られており、そういった部分にお金をかけられなかった分、夜の闇や夕景の赤、一家の棲む家の毒々しい色彩美術、また脂漏化した死体や歯などの不気味なアイテム、恐怖におののく目や口のアップなど撮り方そのものを工夫しながら、いつしか見る側にまで痛みや不快感をも伴わせるような生々しい恐怖を醸し出すことに見事成功しているのです。

特に音響効果は、音だけで映画はかくも狂暴になれるものかとおののくほど秀逸なもので、特にチェーンソーの音や、ヒロイン役のマリリン・バーンズの絶叫などのすさまじさは、映画ファンなら一度は体験しておくべきでしょう。

現在全国的に爆音上映映画祭が流行っていますが、そのマスト・ムービーとしても本作は欠かせない存在になっています。

本作自体は、公開後の若い映画ファンらの口コミや記憶によってやがてカルト化し、またトビー・フーパー監督はこの後も『悪魔の沼』(77)『ファンハウス/惨劇の館』(81)など猟奇残酷映画を連打し、その一方で『悪魔のいけにえ』の大ファンであったスティーヴン・スピルバーグに誘われてSFXホラー大作『ポルターガイスト』(82)を撮るなど、着々とキング・オブ・ホラーの道を歩み始めていきました。

86年にはフーパー監督自身のメガホンで本作の続編『悪魔のいけにえ2』を発表。

その後、別の監督たちによってシリーズ化され、また2003年にはリメイク映画『テキサス・チェーンソー』や、2006年には前日譚『テキサス・チェーンソー・ビギニング』なども製作されています。

そして現在、レザーフェイスの少年時代を描いた“LEATHERFACE”がまもなく世界中にお目見えとなる予定です。

本作のマスターフィルムは、その「高い芸術性」を評価されて、ニューヨーク市近代美術館に永久保存されています。

恐怖を芸術の域にまで高めた『悪魔のいけにえ』、未見のかた、ホラー映画が苦手という人も、ハロウインなどのイベントを良ききっかけにして、一度は見てみることをお勧めします。何度も見ている人には……もう何も言うことはありませんね。

[この映画を見れる動画配信サイトはこちら!](2017年10月27日現在配信中)
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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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