スペイン版アカデミー賞“ゴヤ賞”6部門制覇『「僕の戦争」を探して』

(C) 2014 FERNANDO TRUEBA P.C., S.A 2013. All rights reserved.

スペイン版アカデミー賞のゴヤ賞が先日発表され、『スモーク&ミラーズ』というクライム映画が作品賞受賞しました。

そんなゴヤ賞において、2014年に6部門を受賞し、本家アカデミー賞外国映画部門スペイン代表にもなった実話ベースの一風変わったロードムービーそれが『「僕の戦争」を探して』。誰もが堪能できる本作の魅力について今回はお伝えします。

ストーリー

舞台は1966年のスペイン・アルバセテ。英語教師のアントニオは筋金入りのビートルズファンで、ビートルズの歌詞を使って英語を教えるほど。アンダルシア地方のアルメリアではイギリス人のリチャード・レスター監督が「ジョン・レノンの 僕の戦争」を撮影しており、アントニオはこの映画に出演していたジョン・レノンに一目会うことを目指して、アルメリアまで旅することを決意する。その途中にヒッチハイカーの家出少年フアンホと訳ありげな女性ベレンを拾い、3人はそれぞれの夢と自由を探す旅を続ける。

「僕の戦争」ってどういう意味?

「僕の戦争」とは何のことか。これは「ビートルズがやってくる」「HELP!」のビートルズ映画で知られる映画監督リチャード・レスターの戦争や国家を思いきり皮肉った映画「ジョン・レノンの僕の戦争」のことを指しています。

ちなみに「「僕の戦争」を探して」の英語タイトルは「Living is easy with eyes closed」でこれも、ビートルズの名曲ストロベリー・フィールズ・フォーエバー(劇中に実際に流れる)の歌詞から引用されています。この曲は実際に映画の撮影の合間にジョンが作った楽曲でもあります。

家出少年フアンホの髪型がどう見てもマッシュルームカットであったり、セリフの随所にビートルズが絡んだ言葉が盛り込まれていたりと、そのあたりを知っているとさらに楽しめます。

また、この時代のスペインはフランコ独裁政権下にあって、国民の生活はなかなか安定せず、言論の自由などにも規制がありました。

基本的に東西どちらかの両陣営に世界中の国が属していた冷戦下にあっても、歴史も国土も、国力も相応のものを備えていながらスペインは国際的に孤立していました。

冷戦の主な舞台であったヨーロッパ諸国の中でこのような立ち位置の国はほかにありませんでした。

そういう部分もさりげなく描かれているので少し予習をしておくといいかもしれませんね。

そんなこともあって、漏れ伝わってくるビートルズとジョン・レノンは自由の象徴のような存在でもありました。

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見ず知らずの三人が本音をぶつけ合う!

実は家出少年フアンホもヒッチハイカーのベレンも人生に躓き中でした。しかし中年に差し掛かってなお憧れの存在に一目会うために車を走らせ旅をしようとするアントニオの素直な姿、素直な物言いを見ていくうちに目を逸らしていた自分の人生に少しだけ正面から向かおうとします。

ロードムービーの醍醐味といえば、その別れ際。

見ず知らずの人間たちが認め合い、二度と会うことはないかもしれないものの、確かな友情と信頼関係を築いていく様をきれいに描き出せれば成功と言って間違いありません。
その点、この映画は爽快の一言です。

影響を受けていたのは何も二人だけではありません、決して暴力に訴えることなかったアントニオが最後に見せる大暴れは実に痛快です。

ラストはほっこりの畳みかけ

事実上のエンディングソングとしてジョンによるストロベリー・フィールズ・フォーエバーが流れます(権利上あり得ないのですがオリジナルそっくり)。
これを聞きながらするフアンホのちょっとしたいたずらも思わず笑いがこみあげます。

そして、最後にさりげなく挿入されるテロップにはびっくりです。

CD(当時はLP)に今では当たり前についているものをビートルズが採用したのはこの映画の元ネタになっていることが発端という事実。

ビートルズの名曲の一節を何気なく口ずさめるのは実はアントニオのおかげかもしれません。

[この作品を見れる動画配信サイト](2017年2月10日現在配信中)
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(文:村松健太郎)

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    ライタープロフィール

    村松健太郎

    村松健太郎

    村松健太郎
    脳梗塞と付き合いも10年目に入った映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、イベント運営に携わる一方で各種記事を執筆。

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