熱きボクシング映画、邦画に絞って13選!

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1月12日から『クリード 炎の宿敵』が公開されます。

今や伝説的人気の『ロッキー』シリーズを経ての新たなボクシング映画『クリード』シリーズ第2弾にして、かつて『ロッキー4 炎の友情』(85)における米露ボクサーたちの遺恨を数十年後の次代の息子たちに託した壮絶ファイティング・シーンをクライマックスに据えたこの作品、日本でも世代を超えて多くの支持を得ることかと思われます。

では、日本にはボクシング映画ってあるの? これが意外にあるのですよ。

その中で今回は昨年『斬、』が話題になった塚本晋也監督による1995年の異色作『TOKYO FIST 東京フィスト』をご紹介!

男女の三角関係がもたらす
肉体そのものの痛み

(C)1995 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER 

『TOKYO FIST 東京フィスト』のストーリーは……ある保険会社の営業マン津田(塚本晋也)が高校時代の後輩で今はプロボクサーになった小島(塚本耕司)と偶然再会します。

このふたり、高校時代に共通の女友達を殺された暗い過去を持っており、それゆえに長らく疎遠になっていました。

やがて小島は津田の恋人ひづる(藤井かほり)に接近していき、それを知った津田は小島のアパートに乗り込むも返り討ちに遭ってしまい、おまけにひづるとの関係も崩壊してしまいます。

まもなくして津田は小島と同じボクシングジムに通いだします。

一方、小島と暮らすようになったひづるは、急にボディピアスや刺青などで自分の身体を傷つけるように快感を覚えるようになっていきます。

そして小島もまた、死の恐怖に脅える自分に気づきはじめ……。

本作はいわゆる『ロッキー』『あしたのジョー』的な熱血スポーツ感動ものとは一線を画し、男女の三角関係の中から、現代都市の中で生きる人々の孤独や心の傷などを、きしむような肉体の痛みそのものを通じて描いていきます。

それは塚本監督の出世作である『鉄男』(89)から最近の戦争映画『野火』(14)や時代劇『斬、』(18)まで一貫して描いてきた、肉体と精神の関係性への言及そのものであり、特にここでは拳でダイレクトに殴られることの痛みが徹底的な生々しさで異様なまでに活写されていきます。

よく本作をボクシング版『鉄男』と称する向きがあり、確かにその通りだと思いつつ、本作には『鉄男』にはなかった人生そのものの痛みまで描かれていると個人的には思っています。

製作から監督・脚本・出演も兼ねる才人・塚本晋也ですが(最近は『シン・ゴジラ』など他の監督作品に役者として登板して好演する機会も多いですね)、今回は実弟の塚本耕司を俳優として起用して大きな成果を上げ、ヒロイン藤井かほりとともにその年の新人賞を多数受賞することになりました。

またトレーナーに扮する竹中直人が、どこか『あしたのジョー』の丹下段平を彷彿させる好演。
(彼は塚本映画『ヒルコ/妖怪ハンター』(91)でも怪、いや快演しており、田口トモロヲと並んでこの時期の塚本作品に欠かせない存在でもありました。正直、また彼らを起用した塚本映画にも久々お目にかかりたいものです)

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まだまだある!
日本のボクシング映画

ちなみに日本のボクシング映画ですが、実は他にもいっぱいあります。1970年代以降のものに絞ってみても……。

『あしたのジョー』(70)ご存知、伝説の人気コミックを原作にした実写映画で、ジョーに石橋正次、力石に亀石征一郎が扮している。

『ボクサー』(77)詩人で大のボクシング・ファンでもあった寺山修司が監督した念願のボクシング映画で、彼独自の哀愁が濃厚に滲み出た秀作。

『どついたるねん』(89)“浪速のロッキー”こと赤井英和の自伝を基に、本人を主演に迎えて描いた阪本順治監督の熱いデビュー作。

『鉄拳』(90)阪本監督の第2作で、菅原文太&大和武士主演。『どついたるねん』から一転して、クライマックスはシュールな仕上がり。

『のぞみウィッチズ』(90)もともとラブコメだったのが次第に本格ボクシングものに転じた人気漫画の映画化。監督は『スクール・ウォーズ』の関本郁夫。

『BOXER JOE』(95)辰吉丈一郎選手へのインタビューとドキュメント風ドラマを交錯させながら、阪本監督が94年の対薬師寺保栄戦までの辰吉の苦悩と再生を描出。

『キッズ・リターン』(96)落ちこぼれ高校生のボクシングの目覚めと挫折。事故で生死を彷徨った北野武監督の復帰作で、独自の死生観がにじみ出た作り。

『あしたのジョー』(11)人気漫画、二度目の映画化。ジョーに山下智久、力石に伊勢谷友介。CGでドヤ街を再現しつつ、俳優陣の筋肉美は生身で妥協なし。

『タナトス』(11)竹原信二原案のボクシング漫画を基に、孤独な不良青年がボクサーをめざす姿を描く青春スポーツ映画。主演は徳山秀典。

『ジョーのあした 辰吉丈一郎との20年』(15)『BOXER JOE』の後、辰吉選手の人間性に惹かれた阪本監督が20年間密着してまとめあげたドキュメンタリー映画。

『百円の恋』(14)何と安藤さくら扮するダメダメ・ニートが、恋をきっかけに女子ボクシングに臨む血沸き肉躍る活劇。本作で彼女は多数の女優賞を受賞。

『あゝ、荒野』(17)寺山修司が唯一記した長編小説の舞台を近未来に変えて、前後編の2部作として映画化。主演の菅田将暉はこれで同年度の映画賞を総なめ。

などなど、意外といっては失礼ですが、なかなかに見応えあるものが多いので、これを機に他の作品群などにも目を向けていただけたら幸いです。

(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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