スティーヴン・キング原作・脚本の問題作『セル』について

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1月27日より公開となるダーク・バトル・ファンタジー映画『ダークタワー』。原作は『キャリー』『シャイニング』『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』『マングラー』などモダン・ホラーの帝王としてしられるスティーヴン・キング。

昨年秋に日本公開された『IT”それ”が見えたら、終わり。』のクリーン・ヒットも記憶に新しいところです。

その『IT』と同じ2017年に公開製作され、スティーヴン・キングが原作だけでなく脚本(共同)も手掛けた衝撃のサバイバル・スリラー映画『セル』もまた、キング・ファンも、それ以外の方も必見の問題作なのでした!

ケータイの電波で人々が
ゾンビのように狂暴化!?

映画『セル』は、コミック作家のクレイ(ジョン・キューザック)が、ボストン空港から別居中の妻子にケータイで電話をかけたものの、バッテリーがなくなって途中で切れてしまった直後から、戦慄の物語がスタートします。

クレイの周りで電話をかけていた人々が突然狂暴化して暴れ出し、またたくまに空港内は阿鼻叫喚の地獄と化していくのです。

何とか地下鉄へ逃げ込んだクレイは、車掌のトム(サミュエル・L・ジャクソン)や少女アリス(イザベル・ファーマン)らと連携しながら、狂暴化した人々の群れから身を隠しつつ、妻子の住むニューハンプシャーを目指すのですが……。

ゾンビのように突如人間が狂暴化して人々を襲うといった類のホラー映画は日常の映画的風景と化して久しいものがありますが、本作はケータイの電波で人々が発狂していくのが新味。

タイトルの“CELL”とは「携帯電話」「細胞」といった意味もあります。

いわゆるゾンビ・メイクを施していない生身の風貌ながら、目だけはイッちゃっている人間が醸し出す恐怖は新鮮で、むしろこちらのほうがぞっとさせられます。

ケータイの電波による狂暴化というアイデアそのものも、結構身震いさせられてしまうものがあります。

(ケータイの電波は体に悪い云々って、昔からよく聞かされてますしね)

主演のジョン・キューザックは本作の製作総指揮も務めていますが、なるほどエンタテインメントの中に社会性などのメッセージを織り込んだ作品に多々出演し続ける彼ならではの姿勢の賜物とも思えます。

また、いわゆるファンタ系作品には欠かせないというか、実はギネスに挑戦しているのではないかと思えるほどこの手の作品の出演が多いサミュエル・L・ジャクソン。

そして紅一点のアリス役のイザベル・ファーマンは、あのおぞましき恐怖少女を演じた『エスター』の印象が強く、そのうち何かしでかすのではないかと、あらぬ心配をしてしまうほどの存在感!?

監督は人気POVホラーの前日譚『パラノーマル・アクティビティ2』で評価されたトッド・ウィリアムズです。

https://youtu.be/QFvpGqlCjMI

安易に理由を解き明かさない
キング原作に見る側も挑戦!

さて、本作はスティーヴン・キングが脚本にも参画しているだけあって、その意欲がうかがえるものになっていますが、意外に原作者が脚本まで手掛ける作品はファンの賛否を呼ぶのが常で、本作もまた例外ではありません。

キング小説は、恐怖をもたらすさまざまな要素に関する理由や説明などをあえて明らかにしないものが多く、それゆえに映画化されるとき、安易に理由付けしてしまうとドッチラケになりますし、理由がないまま描いていくとイチゲンさん的な観客は置いてけぼりを喰らうことにあります。

つまり、キング原作は映画化が難しい。

そのことはキング自身もよくわかっているようで、一方で大の映画好きでもある彼は、映画に少しでも関わりたくて、脚本や監修、出演までしてしまうことが多々あります。監督作品『地獄のデビルトラック』もあります。

それは自身の読者も含む映画ファンに挑戦状を叩きつけ、挑発しているかのようにも思えてなりません。

本作も、ケータイの電波で人々がおかしくなったことまでは容易に想像させてくれるものの、その具体的な理由などはまったく明かされません。

また時折、妄想の中に登場する謎の赤いフードの男(それは主人公の描くコミックのキャラでもあります)の正体は?

ネタバレは避けますが、前半のスリリングな展開から、後半は徐々に観念的なものへ移行していきます。

ラストも見る側の予想(期待?)を大きく裏切るという点で、賛否は免れないでしょう。

しかし、こういったスティーヴン・キングの挑戦にどう応えるかも、また映画ファンのお楽しみ。

劇中提示されていくさまざまな謎を、観客であるあなた自身がどう解釈し、作品そのものを咀嚼して楽しむか?

どうせ味わうなら美味しく味わいたいもの。

その意味でも本作は正直マニアックなテイストが強く、軽い気持ちで接すると「???」となる危険もありますが、どうぞそこで踏み止まって、ひとつひとつの謎を自分なりの仮説を立てて、解き明かしてみてください。

映画はただ単に受動的に接するだけでなく、あれこれ勝手に想像しながら能動的に楽しむこともできます。

『セル』も、そして多くのスティーヴン・キング原作作品も、そんな能動的な愉しみこそを推奨したい作品なのです。

[この映画を見れる動画配信サイトはこちら!](2018年1月26日現在配信中)
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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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