クリスマスは、涙を流せるあの定番映画を今年も!

©THE DOG OF FLANDERS PROD.

もうすぐクリスマスですね。

家族そろって、恋人同士で、あるいはおひとり様で、それぞれの過ごし方があるかと思われますが、家で映画を見るのもまた一興。

ならばどんな映画がふさわしいか? 

楽しい映画や華やかな映画もいいけれど、今回はクリスマスに見て清い涙を流すこと必至の作品を選んでみましょう。

そう、誰もが知る名作アニメーション映画THE DOG OF FRANDERS 劇場版フランダースの犬』です!

『フランダースの犬』の物語が
世に出ていった背景

まず『フランダースの犬』の原作が記された背景から調べてみましょう。

本作は19世紀ベルギー北部フランドル地方ホーボケン(アントワープの隣)が舞台となっていますが、原作小説はイギリスの作家ウィーダが1872年に記したもの。

ウィーダは執筆の前年にこの地を訪れ、そこで悲劇の少年ネロや、彼を慕っていた少女アロアのモデルとなった人々の話を聞かされ、それを小説にしたのでした。

日本では1908年に出版されましたが、当時はネロ=清、アロア=綾子、犬のパトラッシュ=斑(ぶち)と、日本の固有名詞を用いて翻訳されていたそうです。

戦後は小学校の図書館などに必須の童話として知られるようになった『フランダースの犬』。これがいちやく爆発的なブームになったのは、1975年に“世界名作劇場”枠で放送されたの同名テレビ・アニメーション・シリーズからでしょう。1年の長きにわたって繰り広げられる薄幸の少年の悲劇は、毎週日曜の夜、子どもたちの涙を搾り取るほどの人気を博しました。最終回の関東地方の視聴率は何と30.1パーセント。これは“世界名作劇場”枠の最高記録です。

そして1997年、75年のテレビ・シリーズを製作した日本アニメーションが劇場用長編映画として新たに構築した作品、それが映画『THE DOG OF FRANDERS 劇場版フランダースの犬』なのです。

©THE DOG OF FLANDERS PROD.

哀しみの涙はいつも
人の心を浄化させる

おっと、ストーリーを記すのをうっかりしていました(が、ほとんどの方はご存知ですよね)。

アントワープ郊外におじいさんと愛犬パトラッシュと共に暮らす貧しい少年ネロ。絵の才能があり、いつか画家になることを夢見ている彼は、風車小屋の娘アロアが唯一の友達でしたが、彼女の父はネロを蔑み、ふたりを遠ざけようとしています。

やがて立て続きに不幸な出来事がネロたちに襲いかかり、おじいさんは死去。住んでいた小屋も追い出されれてしまいます。

絵画コンクールに応募していたネロは、その発表だけを心の支えにしていましたが、結果は落選。

傷心のネロは吹雪で雪積もるクリスマス・イヴの夜、アロアの父の大事な財布を拾い、それを届けがてらパトラッシュを預けて、独りで外へ出ていきます。

アロアの父はそれまでの己の非を悔やみ、またそのときネロの絵の才能を買う著名な画家が、彼を引き取りに現れます。

しかし、その頃ネロはアントワープ大聖堂へ向かい、パトラッシュはその後を追いかけていました……。

何だか書いているだけで泣きたくなるほどの哀しい物語、この映画版もテレビシリーズ1年分の悲劇をぎゅっと2時間に凝縮して、これでもかと言わんばかりに披露していきます。

ただし大きな救いもいっぱいあり、それは美しい映像と音楽による、どこか神々しいまでのアニメーション美学であるとも断定できるでしょう。

本作の監督は、テレビシリーズと同じ黒田昌郎。もともと東映動画(現・東映アニメーション)で『狼少年ケン』や『ゲゲゲの鬼太郎』第1シリーズなどの演出に携わり、その後日本アニメーションに移ってからはテレビ版『フランダースの犬』や『母をたずねて三千里』『ペリーヌ物語』『不思議な島のフローネ』など数々の“世界名作劇場”に貢献してきた大ベテランです。

そんな黒田監督のキャリアの集大成ともいえる作品が、この『THE DOG OF FLANDERS 劇場版フランダースの犬』であるといっても過言ではないでしょう。

なお、本作の前も後も『フランダースの犬』はさまざまな形で映像化され続けていますが(中にはハッピーエンドとアンハッピー、ふたつのラストが設けられた実写映画もあったりする⁉)、やはり決定版は黒田監督によるTV&映画作品でしょう。

哀しみの涙がいかに人の心を浄化させるものであるか、『フランダースの犬』の物語を知る人なら、そしてこの作品を見たことのある人なら理解してくれることと確信しています。

家族で、友人や恋人同志で、独りでも、どんな形でも構いません。

クリスマスの夜、静謐な面持ちで、ぜひご覧になってみてください。

[この映画を見れる動画配信サイトはこちら!](2017年12月22日現在配信中)
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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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