『永遠の人』は30年にも渡るドロドロ愛憎劇だった!

『ブルーバレンタイン』や『ゴーン・ガール』など、大人の男女によるドロドロとした愛憎劇はお好きですか。
ストリーミングで観られる映画を毎週紹介する“金曜映画ナビ”、今回はアカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた『永遠の人』(1961年製作)を紹介します。

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1.夫を恨み続けて30年!

本作で描かれているのは、自分を犯し、あまつさえ夫となった男を30年(!)にわたって憎み続けた女の半生の物語です。

その過程はとにかく壮絶。女は犯されたために自殺を企てる、戦争に行っていた恋人はそのことを知る、やがて恋人は苦渋の決断をして去ってしまう、生まれた子どもとギクシャクしてしまう……そんな地獄のような夫婦関係となっていくのです。

中でもキツかった(褒め言葉)のは、女が「人間には忘れられることと、忘れられんことがあります」と呟くシーン。このときに憎き夫に言われた言葉は残酷ながら“正論”であり、この後のさらなる過酷な展開を暗示しているかのようでした。

2.『二十四の瞳』の監督、主演女優とは思えない!

本作の監督は、『二十四の瞳』で有名な木下恵介です。
木下監督は『喜びも悲しみも幾歳月』にて長年の夫婦の絆を、『野菊の如き君なりき』では少年と年上の少女との清らかな恋を描いていましたが……それとは正反対のドロドロしまくった夫婦関係を、これほどまでねっとりと表現するとは……とても同じ監督の作品とは思えません。

しかも本作で主人公のさだ子を演じるのは、『二十四の瞳』でかわいい先生を演じた高峰秀子さんです。その演技の幅の広さ、ギャップにも驚けるはずです。

なお、最低な夫を演じるのは、日本が誇る名優・仲代達矢です。そのギラギラした眼差しを見ると、よい意味で嫌悪感たっぷりになるのでしょう。

3.日本映画なのにフラメンコ?

本作で何よりも特徴的なのは、フラメンコ音楽が使われていること。ときおり激しいギターの音が響き渡るので、ギョッとしてしまうかもしれません。

ミスマッチのようではありますが、これが激しく揺れ動く主人公の心を表しているよう、さらに物語の“残酷さ”や“やるせなさ”を増幅させるかのようでもありました。

4.田村正和の本格デビュー作!

じつは本作は、『古畑任三郎』でおなじみの田村正和の本格デビュー作。当時はまだ17〜18歳の高校生ですが、その顔を観ると「田村正和だ!」とすぐ気が付けるはずです。

いまの田村正和の渋い大人の魅力ではなく、若いからでこその純粋さを感じられる演技は必見。その役どころはかなり重要であり、両親への手紙に残したあの内容、その前の幼い弟とやりとりは、痛烈な印象を残すでしょう。

5.不幸が連鎖する物語だった。

本作では、誰かが誰かを憎み、つぎつぎと憎しみと不幸の連鎖が起こる過程がじっくりと描かれています。
そして物語は、その連鎖を断ち切るには、相手を”許す”こと、または事実を“忘れる”ことが重要である(それは決して簡単ではない)、ということを教えてくれるのです。

『永遠の人』というどこかポジティブさのあるタイトルながら、実際はよい意味でネガティブで、心が痛くなる物語です。
ちょっと暗めの映画が観たい方、愛憎劇はもちろん“復讐もの”が好きな方にもぜひオススメします。なぜ復讐ものなかといえば……それは観ればきっとわかるでしょう。

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永遠の人| 1961年 | 日本 | 107分 | (C)1961 松竹株式会社 | 監督:木下恵介 | 高峰秀子/佐田啓二/仲代達矢/石浜朗/田村正和 |

(文:ヒナタカ

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ライタープロフィール

ヒナタカ

ヒナタカ

ヒナタカ 「カゲヒナタの映画レビューブログ」運営中のフリーライター。All Aboutでも映画ガイドとして執筆中。なぜか中高生向けの恋愛映画もよく観ています。

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