『人魚の眠る家』以前に東野圭吾×堤幸彦が仕掛けたサスペンス大作

©2018「人魚の眠る家」製作委員会 

11月16日より堤幸彦監督作品、篠原涼子・西島秀俊主演の映画『人魚の眠る家』が公開されます。

水の事故で脳死状態となった愛娘をめぐっての父や母たちの献身が、やがて家族そのものの運命を大きく揺るがしていく東野圭吾・原作のヒューマニスティックなサスペンス映画。人間と生命の尊厳を問う感動の問題作として広く一見をお勧めします。

東野圭吾・原作ということでは、来年1月には木村拓哉主演の『マスカレードホテル』が公開されます。

そのせいか、ここにきて本屋の店頭で東野小説が平積みされているのを見かけることも増えてますし、TVの映画&ドラマ・チャンネルでも東野原作作品の特集が組まれたりもしています。

ならばこちらも今回、東野原作映画の中で最もスケールの大きいポリティカル・サスペンス作品で、『人魚の眠る家』以前の2015年に堤監督がメガホンをとった『天空の蜂』をご紹介!

 (C)2015「天空の蜂」製作委員会

テロリストに奪取されたヘリが
増殖炉上空でホバリング!

映画『天空の蜂』は東野圭吾が1995年に発表した同名小説の映画化です。

映画も時代設定を現代に直すのではなく、1995年に据えています。

ある日、自衛隊の巨大ヘリコプター・ビッグBが“天空の蜂”と名乗るテロリストによって制御奪取され、遠隔操縦で福井県敦賀市にある高速増殖原型炉「新陽」の上空まで持っていかれ、そのままホバリング。

“天空の蜂”は日本政府に、新陽以外の国内すべての原子力発電所の破棄(具体的には発電タービン棟をすべて破壊し、発電不能にすること)を要求します。

聞き入れられない場合は、ビッグBを新陽に墜落させる……。

ビッグBの燃料が切れて、ホバリングできなくなる時間はおよそ8時間。

しかも、ひそかにその中には爆弾も詰め込まれています。

さらには、その中にはたまたまヘリ見学に来ていた子どもが乗っていて……。

子どもの父親でビッグBの開発責任者でもある錦重工業の湯原(江口洋介)は、新陽の設計者でもあった三島(本木雅弘)らと共闘あるいは反目しつつ、我が子を救出すべく行動を開始するのですが……。

壮大なサスペンスの中から
醸し出されていく人間ドラマ

ストーリーは二転三転していくので、これ以上の筋を記すわけにもいきませんが、東日本大震災以後の日本において、本作は単なる社会派サスペンス映画の域を越えて見る者ひとりひとりに訴えかけてくるものがあり、同時にこの問題をいちはやく採り上げていた東野圭吾の先見の明にも唸らされるものがあります。
(逆に今はこのモチーフをエンタテインメントの世界に繰り出すのは難しいかもしれません)

また、ネタバレは厳禁ですが、あえてひとつだけ記すのを許されるとしたら、やがて本作はテロリストの危機を描いた壮大なサスぺンス映画としての情緒を保ったまま、徐々に哀しくも骨太な人間ドラマを醸し出していきます。

常に人の心の機微こそを底辺に敷き詰めながら点秋される東野ミステリ&サスペンスの醍醐味は、映画化された本作の中でも何ら薄れていません。

豪華キャストの競演も大きな魅力で、江口洋介や本木雅弘らドラマの主軸となる面々の魅力もさながら、石橋蓮司や國村隼、竹中直人、柄本明、光石研、佐藤二朗、手塚とおるなどなど、日本映画界を代表する個性派俳優が贅沢に現れては一癖も二癖もある個性をさりげなく発揮しているところもお楽しみです。

堤幸彦監督は東野ワールドの中にツワモノ名優たちを投入させたカオスの中から、スリリングかつダイナミック、そしてヒューマニステイックなドラマを構築し得ています。

ここでの彼の裁量が、『人魚の眠る家』監督の抜擢にも繋がっているのでしょう。

秋もふけゆく中の夜長のひととき、国と社会、家族、友情、さまざまな想いをかけめぐらせながら、本作を堪能していただければ幸いです。

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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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