実際に起きた恐怖のエピソードを収めた『いま、殺りにゆきます』

夏の映画の風物詩と言えば、やはりホラー映画。

2014年から始まった〈夏のホラー秘宝まつり〉は、好評につき今年も東京キネカ大森で8月19日から9月1日まで開催されますが、Jホラーの新作からスプラッター、往年の名作群まで多彩な番組で、真夏の暑い夜を恐怖で凍らせてくれることでしょう。

では今回、それ以前に行われていた〈ホラー秘宝JAPANまつり〉第2弾として2012年12月25日に劇場公開(こちらは何と真冬のクリスマス上映でした!?)された『いま、殺りにゆきます』をご紹介したいと思います。

いま、殺りにゆきます

平山夢明による現実に起きた悪夢を
5人の若手美人女優が再現!

『いま、殺りにゆきます』は、ホラー小説作家としてカルト的な人気を誇る平山夢明による、実際にあった恐怖体験を集めて記した同名オムニバス小説の中から5編をピックアップして映像化したものです。

「わたしのししゅう」

ある日、路上でホームレスから詩集を買った高2の奈緒(森田涼花)が、中身が素晴らしかったと感想を伝えて以降、その男に付きまとわれるようになり……。

「おまけ」

古本屋でお目当ての絵画集を手に入れた織恵(桃瀬美咲)が、本が入った箱の中から1枚のDVDを見つけ、何気なくそれを再生してみたところ……!

「やあ、カタオカ!」

出社途中の智恵(肘井美佳)は、小学校の同級生だったという奇妙な男から声をかけられ、かつて彼女がなくした筆箱を見つけたと告げられるのですが……。

「さよなら、お~える」

公衆トイレに駆けこもうとした夏美(菅野麻由)は、そこで雨宿りをしていた女子高生から「そこのトイレ危ないよ」と言われますが、無視して中に入ると……。

「いま、殺りにゆきます」

突然頭上からTVを投げつけられて、脅える美鈴(大友さゆり)。ようやく帰宅した彼女のケータイに、今度は非通知で「いま、殺りにゆきます」という声が……。

「わたしのししゅう」より

恐怖の中から醸し出される
現実世界の滑稽な情緒

いずれのエピソードもオカルト的なものではなく、日常に潜む人間がもたらす猟奇的恐怖を描いたもので、いわば「この世で一番怖いのは人間そのものである」というメッセージが込められている作品です。

ただしその一方で、徹底的に不気味なテイストを一貫させつつ、いずれもどこかしらシュールなオチで、それゆえにブラック・コメディ風に滑稽な情緒までもたらしているあたり、「世の中なんて、こんなに不条理まみれなものであることを覚悟しときな」とでも言わんばかりのシニカルなキャメラ・アイにも翻弄されることでしょう。

監督はアメリカで映画演出術などを学び、『巌流島』(03)『AVN エイリアンVSニンジャ』(10)など時代劇アクションやダーク・ファンタ・ジャンルにこだわった活動を続けている千葉誠治。

彼は本作以外にも『劇場版東京伝説 恐怖の人間地獄』(14)『同 歪んだ異形都市』(14)や『「超」怖い話』(16)、そして今年度の〈第4回夏のホラー秘宝まつり2017〉にも出品される新作『「超」怖い話2』など、平山夢明原作ものに定評のある監督でもあります。

宗教などで言われる“地獄”って、本当は現世=この世の中を意味しているという説を聞いたことがありますが(あゝ人生……)、ちょっと周りを見渡すだけで、実は危険な要素が満載という、そんな思いをしながらも生き続けていくのって、ホント怖いものですね!?

[この映画を見れる動画配信サイトはこちら!](2017年8月18日現在配信中)

b_hikarib_unextb_amazonb_netflixb_itunesb_googleplay

(文:増當竜也)

他の記事も読む
    映画の配信情報をチェック!
                      

    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

    ピックアップ

    新着記事

    Facebook Auto Publish Powered By : XYZScripts.com