小栗旬の映画デビュー作。懐かしいTV番組を通して家族を描く『しあわせ家族計画』

テレビドラマの映画化は昔も今もいっぱいありますが、テレビのバラエティ番組、しかも視聴者参加型番組の映画化というものも、実は時たまあったりします。

今回ご紹介する映画『しあわせ家族計画』もその1本です!

『銀魂』主演の小栗旬の映画デビュー作でもあります。

(C)1999 松竹株式会社

1990年代末に好評放送されていた
人気番組『しあわせ家族計画』

1997年4月30日から2000年9月13日にかけて、TBS系にて毎週水曜夜8時に『しあわせ家族計画』という番組が放送されていました。

これは、全国から寄せられる出場希望ハガキの中から番組が選んだ家庭の主人に宿題を与え、1週間後にスタジオでその成果を披露するというものです。

宿題の中身はピアノなどの楽器演奏、東海道五十三次などの暗唱問題、世界の国旗やオリンピック歴代金メダリストなどの暗記問題、シガーボックスやジャグラー、テーブルクロス引きなどの曲芸、サッカーボールの連続リフティングなどスポーツ・パフォーマンスなどなどさまざま。

賞金は何と300万円!

こういった難題にお父さんたちが家族の長としての面目をかけて挑戦し、その過程もドキュメントとして放送されていきますが、ときどきお母さんがサラリとできてしまえるものがお父さんにはなかなかできなかったり、子どもたちも応援したり白い目線を送ったりと(何せ300万円かかってますから!)、そしてスタジオでの本番では緊張でガチガチになっているお父さんとその家族の悲喜こもごもの様子が、何とも視聴者の心をほっこりさせてくれる楽しい番組でした。

そして映画『しあわせ家族計画』は、そんな番組に出場することになったお父さんとその家族の物語なのです!

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松竹大船調の現代的再生ともいえる
映画『しあわせ家族計画』

映画『しあわせ家族計画』は、リストラで会社も社宅も追い出された川尻富士夫とのその家族が妻・優子の実家に居候するも、その後詐欺に遭ったりで脱サラに失敗して家の中に隙間風が吹くようになったころ、息子が『しあわせ家族計画』に勝手にハガキを出し、それが当たってしまった!

番組からの宿題は、ピアノで《ホーム・スイート・ホーム》をミスなく弾くこと。

果たして富士夫は1週間で演奏できるようになるのか? そして家族の絆は? その再生は?

今から20年ほど前のTV番組をモチーフにした映画ではありますが、当時よりもむしろ今見たほうが、「ああ、あんな番組あったな」みたいな懐かしさに加えて、自分らの身の回りのことなども思い出しやすくなるのは、こういった作品の利点ではあるでしょう。

主人公のお父さんに三浦友和。いい人なんだけど、何をやってもついてない中年男の悲哀を嫌みなくにじませた好演で、さらに妻役が渡辺えり子(現・渡辺えり)というコンビネーションの妙によって、実に麗しき夫婦の姿を提示してくれています。

そう、この作品は松竹映画の伝統でもある“大船調”とも呼ばれた人情家族喜劇を現代に再生させたものであり、監督も山田洋次監督作品の助監督出身、阿部勉監督のデビュー作としてオーソドックスながらも実に初々しい演出を披露し、第33回ヒューストン国あい映画祭ファミリーチルドレン部門金賞を受賞。家族の絆に国の内外など関係なし、むしろ当時は海外のほうが高く評価された作品でもありました。

主演ふたり以外のキャスティングもなかなか豪華で、いかりや長介に野際陽子といった惜しくも鬼籍に入られた名優から小林稔侍、片岡鶴太郎、名取裕子、笹野高史、大竹しのぶなどベテラン勢。まだ10代の頃の平山綾(現・平山あや)や、小栗旬の姿まで見られます。ふたりとも本作品が映画デビューでした。

ただし、番組司会者には実際(和田アキ子&古舘伊知郎)とは違って、吉村明宏と向井亜紀が扮していますので、その点はご了承のほどを。

ちなみに番組そのものの第1回の宿題は、ピアノで《エリーゼのために》を間違いなく演奏しろというもので、映画版もそこを意識してピアノ演奏に設定していることは容易に想像できますが、曲目を《ホーム・スイート・ホーム》に替えているあたり、これは松竹が企画制作したホームドラマであることをさりげなく訴えているようにも思います(TBSは企画協力で実際の制作にはタッチしていません)。

実はこの作品、99年に劇場公開が予定されていましたが、諸事情によって大幅に遅れ、ようやく陽の目を見たのは番組終了後の2001年という、ある種不遇な作品でもあったのですが、その後見た人たちの口コミでじわじわと評価が高まり、2011年にはソフト化、そして現在こうして配信されるようになった次第です。

小さな作品ではありますが、それゆえのささやかな良さを湛えており、家族の普遍的絆を心地よく訴え得た松竹らしい映画です。かつてのTV番組という要素も、今のほうが懐かしく純粋に映えています。

余談ですが、ドラマ以外のTV番組の映画化としては、かつてはNHKの長寿番組をモチーフにした『のど自慢』(98)などが有名でしたが、最近は『ゴッドタン キス我慢選手権THE MOVIE』シリーズ(13~)や『テラスハウス クロージングドア』(15)、『ローカル路線バス乗り継ぎの旅THE MOVIE』(16)など、今や何でもありの時代になってきましたね!?

そういえば8月26日から『関西ジャニーズjr.のお笑いスター誕生!』が公開。こちらも『しあわせ家族計画』の阿部勉監督同様、松竹大船撮影所で修業を積んだ石川勝己監督の第1回監督作品です。ぜひご覧になってください。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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