『家族はつらいよ』シリーズが訴える現実の家族の諸問題

(C)2018「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」製作委員会 

先ごろカンヌ国際映画祭で日本映画『万引き家族』がパルムドールを受賞しました。やはり家族をモチーフにした映画は世界的に不変なのだなと改めて思わされますが、『万引き家族』は血の繋がりのない赤の他人が同じ屋根の下に住み、家族の絆を深めていくという、いわば寓話的世界を通して現代社会を見据えていくものです。

一方、5月25日に最新第3弾『妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3』が公開される『家族はつらいよ』シリーズは、現実にどこでもある平凡な家族のドタバタ騒動を通して、今の時代を見据えていくという、日本映画界を代表する大ベテラン山田洋次監督ならではの賜物であるともいえるでしょう。

熟年離婚をモチーフにした
シリーズ第1作

(C)2016「家族はつらいよ」製作委員会 

『家族はつらいよ』に登場する平田家は主・周造(橋爪功)&妻・富子(吉行和子)の夫婦と、長男の幸之助(西村まさ彦)&妻・史枝(夏川結衣)とふたりの子どもたちによる家族が同居しています。

核家族化が当たり前となって久しい現代の日本社会において、二世帯同居は一見珍しく思えるかもしれませんが、景気の停滞やら住居事情、介護問題などもあって、最近はまた親と子ども家族が一緒に住むようになったというケースもあちこちで見聞きします。

平田家にはもうひとり次男の庄太(妻夫木聡)が住んでいましたが、第1作で看護師の憲子(蒼井優)と結ばれ、第2作目以降は新婚夫婦として別居しています。

また長女の成子(中嶋朋子)は金井泰蔵と結婚して久しいのですが、ある日、彼女が浪費癖のある夫と別れたいと平田家に泣きついてきますが、この時すでに周造と富子に離婚の危機が迫っていた⁉

そう、富子の誕生日を忘れていた周造は、あとになって何かほしいものはないか尋ねてみると、何と彼女は離婚届を突きつけたのでした!

シリーズ第1作『家族はつらいよ』は熟年離婚をモチーフに繰り広げられていきます。

まさに昭和の家父長制度をひきずるかのように家庭内で傍若無人にふるまう周造ですが、すでに21世紀に突入して平成の世もまもなく終わろうとしている昨今、明らかに時代遅れではあるでしょう。

実際、熟年離婚は現代の深刻な問題の一つとされていますが、やはりそこに至るまでの妻の忍耐やストレスといった事象に夫がまったく気づかないという無頓着ぶりも大いに指摘されるわけで、「一体誰が働いて家族を支えてきたと思ってるんだ!」などという夫の言い分も、妻からすると身勝手にしか聞こえないのも道理かもしれません。

では、時代と人間を常に厳しくも温かく見据えてきた山田監督は、この平田家の危機をどう解決させるのか? そこが第1作の大きなポイントとなっていくのです。

[2018年5月25日現在、配信中のサービス]
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高齢化社会に伴う諸問題を扱う
第2作、そして第3作は…?

 (C)2017「家族はつらいよ2」製作委員会

第2作『家族はつらいよ2』のモチーフは、“高齢者”をキーワードにしたさまざまな問題が綴られていきます。

まずは高齢者ドライバー問題。最近高齢者による交通事故が頻繁に起きている中、周造(ちなみにこのとき73歳)も愛車のあちこちに傷をつけてくるので、家族は周造に車の運転を禁止させようとし、そこからとんだドタバタ騒動が起きてしまうのですが、そこはまあ見てのお楽しみ。

また、その過程で周造は高校時代の同級生・丸田(小林稔侍)と再会。当時はもてまくり、みんなの憧れの的であった女性と結婚した彼も、事業に失敗し、家族と別れ、今は独りでアパートに暮らし、交通誘導の仕事でかろうじて生計を賄っています。

下層老人問題も21世紀に入ってから頻繁にささやかれるようになった問題のひとつで、高齢化社会における光と影とでもいいますか、子どもたちと同居する周造夫婦は、まず住居や生活の心配はほぼないかと思われますが(ちなみにこの第2作、妻の富子は友人らと海外旅行に出かけるなどして、熟年人生を満喫しています)、対する丸田の現状はまさに人生の光と影を対比させているようでもあります。

やがて丸田は平田家に招かれ、一泊するのですが……もうここからは山田演出の真骨頂ともいえる悲劇と喜劇が相まみえた人生泣き笑いの構図が見る者を圧倒させてくれるのです。

最終的に現代ならではの格差社会や無縁社会、および喜劇映画として扱うことの少ない“死”の問題にまで言及した巨匠の意欲的姿勢に大いに敬服する次第です。

[2018年5月25日現在、配信中のサービス]
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そして第3作『妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ』は、平田家長男・幸之助の妻・史枝を主軸に据えたドラマが展開していきます。

(C)2018「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」製作委員会 

ここでは理解のない夫に対して史枝が反旗を翻すという構造を通して、専業主婦も働く主婦も、どちらもかけがえのない存在とする山田監督の“主婦讃歌”が奏でられていきますが、その一方で男たちに大いに反省を促す点において、これぞシリーズ共通の要素かもしれません。

第3作のラストでは、次なるキャラクターを主軸に据えた続編の制作も匂わせています。なるほど、家族の一人一人、誰もが人生の主人公であり、即ち映画の主人公足り得るのだという山田洋次監督ノメッセージが聞こえてくるかのようです。

ぜひ第1&2作を見直し(未見の方はこの機会に!)、『妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ』を劇場でご覧になってみてください。

(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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