『クレヨンしんちゃん』だけじゃない!原恵一監督のさらなる作家性を感じられる映画5選

映画の『クレヨンしんちゃん』はご覧になったことはありますか? 『嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』と『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』は大人も泣ける名作として話題を集めたので、そのおもしろさを知っている方は多いでしょう。

『オトナ帝国』と『戦国大合戦』を手がけた原恵一監督は、じつは『クレヨンしんちゃん』以外にも素晴らしい作品を世に送り出しています。ここでは、その5つの作品をご紹介します。

1.河童のクゥと夏休み

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本作でもっとも特徴的なのは、少年と河童の友情を描きながらも、さまざまなテーマを内包していること。
異なる存在を受け入れる家族、少女への淡い恋心、軽薄なマスコミとそれに付和雷同する人々などが描かれており、それぞれが密接に絡み合いながら物語が展開しているのです。

何より素晴らしいと思えたのが、仲間も親も生きるべき目的もなくしてしまった河童のクゥの境遇が、どこにも身の置き所がない小学生の女の子に重なり合っていること。だからでこそ、この女の子は、自分と似たクゥを「守ってあげてほしい」と主人公に願ったのではないでしょうか。

爽やかさを感じさせるタイトルですが、じつは“残酷さ”からも逃げない作品です。やさしい人間たちがいる一方で、悪意ある人間の行動も明確に描かれているのですから。クゥがつぶやく「人間はなんで変わるんだろう」というセリフにハッとする方は多いでしょう。

どこかノスタルジーを感じさせる、豊かな自然の風景も満載です。夏のいまこそ、ぜひ観てみてはいかがでしょうか。

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2.カラフル(2010年製作)

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一度死んでしまった“僕”が、中学生としてもう一度人生をやり直すチャンスを与えられるという物語です。

この映画で大好きだったのが“悩むことはふつうである”というメッセージ。
主人公はクラスメイトの援助交際を目撃するうえ、母の浮気を知ってしまい、深く苦しむことになります。
“心に傷を負った事件”を、思春期ならではの性の悩みと絡めて、物語の重要なファクターとしていることに確かな意義を感じられました。

登場人物のよいところも悪いところも描いた“人間くささ”も大好きです。一見仕事ばかりの父親も“後ろ向き”なことを言うし、無関心のようであった兄の行動にもどこかやさしさを感じられます。

主人公が希望を見つけられたのは、気のよい友だちができたから、というのも素晴らしいです。この友だちは“はぐれものの主人公”にもとっても親切で、なかでもコンビニで買った肉まんを半分こするとき、ちょっと指を動かしてから割って、“大きいほう”を主人公にあげるという、細かい描写には感動させられました。

ぜひ、思春期の少年少女に観て欲しい作品です。大人にとっても、子どもとの接し方を考えさせられる映画かもしれませんね。

3.はじまりのみち

はじまりのみち
『二十四の瞳』などで知られる映画監督・木下惠介を主人公とした伝記映画で、原恵一監督にとって初の実写作品です。

伝記映画は、その人物のことを深く知らないとよく意味が理解できなかったり、不親切に感じることも多いのですが、本作はそんな心配は無用です。
“母が子を想う気持ち”という普遍的なテーマが過不足なく描かれただけでなく、わかりやすいロードムービーになっているのですから。

作品に溢れているのは、原監督の“木下作品の素晴らしさを知ってもらいたい”という想い。とくに作中で引用されている『陸軍』のラストシーンで、そのことを存分に感じられるでしょう。
そして、木下作品にある“戦争がないことの幸せ”というメッセージは、原監督の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』とも共通しているのです。

加瀬亮、ユースケ・サンタマリア、宮崎あおいなどの豪華キャストにも注目。とくに濱田岳演じる“便利屋”のキャラクターは、多くの人が気にいるのではないでしょうか。

4. 百日紅 〜Miss HOKUSAI〜

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故・杉浦日向子による漫画『百日紅』を原作としたアニメで、原恵一監督はこの映画をきっかけに、同作がいまの人に知ってもらえることを望んでいたそうです。
『はじまりのみち』と同じく、原監督は映画を使って、自分が知っている素晴らしい作品を世の中に伝えることができるという、うらやましい方なのですね。

なお、実在の浮世絵師である葛飾北斎とその娘の葛飾応為を主人公としていますが、リアルな伝記映画ではありません。
舞台となる江戸にはところどころに“妖怪”の影をちらつかせており、どこかファンタジーめいた描写がたっぷりあるのです。
その“ちょっと不思議”な物語の数々、普段は知り得ない江戸の風景や人物描写が、本作のいちばんの魅力と言っていいでしょう。

目が見えない少女の想像力を“見せる”ような演出、“暗闇”の描写にも感動させられました。その暗闇は恐怖や孤独を感じさせるもので、これはアニメでしかできない表現でもあるのです。

できれば、映画の後でもいいので、原作も読んでみてください。映画では省かれた優れたエピソードがたっぷりあり、読めばきっとその不思議な世界に酔いしれることでしょう。

5. エスパー魔美 星空のダンシングドール

原恵一監督の、劇場作品初監督にして、原点と呼ぶべき作品です。

人形をなくしてしまった女の子と、人形劇団の青年という2部構成で展開する物語で、お互いが思わぬところでリンクする巧みな構成に唸らされました。

『百日紅』にも受け継がれた、クライマックスでの、“暗闇”を強調した画の美しさには圧倒。ラストの爽やかな感動は、ぜひ一度体験してほしいです。
41分の中編ではありますが、この上映時間とは思えないほどの満足感を与えてくれるでしょう。

ちなみに、本作は“アニメ「エスパー魔美」アニバーサリーDVD-BOX”に収録されていますが、単体のソフトの発売はされていません。この名作を観ることが難しいのはもったいないので、配信サービスなどで視聴できるようになってほしいですね。

そのほかの原恵一監督作品では、スパイ映画の醍醐味を感じられるエンタメ大作『クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦』や、戦国時代の暮らしを描いた『ドラミちゃん アララ少年山賊団!』もオススメです。
個人的に原恵一さんはもっとも好きな映画監督のひとりなので、新作の発表を心待ちにしています。

(文:ヒナタカ)

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ライタープロフィール

ヒナタカ

ヒナタカ

ヒナタカ 「カゲヒナタの映画レビューブログ」運営中のフリーライター。All Aboutでも映画ガイドとして執筆中。なぜか中高生向けの恋愛映画もよく観ています。

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