伝説的殺人鬼誕生秘話を描く『レザーフェイス―悪魔のいけにえ―』

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なかなか収まるところを知らない今年の酷暑ですが、以前『八つ墓村』をご紹介したように、やはり夏を涼しくしてくれるのはホラー映画!

その伝でいきますと、海外ホラー映画の代名詞ともいえる『悪魔のいけにえ』シリーズの最新作『レザーフェイス―悪魔のいけにえ―』(17)もまさに適任といえるでしょう!

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『悪魔のいけにえ』シリーズの
これまでの流れ

『レザーフェイス―悪魔のいけにえ―』の話に入る前に、やはり『悪魔のいけにえ』シリーズとは何ぞや? といったところから解説していきましょう。

『悪魔のいけにえ』は1974年のアメリカ映画。真夏のテキサス州に帰省しようとしていた若者たちが、殺人鬼ソーヤー一家によって次々と惨殺されてく模様を冷淡なドキュメンタリー・タッチで描いた、ホラー映画史上に残る伝説的作品です。

中でも、人皮のマスクをかぶり、チェンソーを振り回す大男“レザーフェイス”(一家の四男ババ・ソーヤー)は、その後の同ジャンル作品群に多大な影響を与えることになりました。

本作で一躍有名になったトビー・フーパー監督は、86年に続編『悪魔のいけにえ2』を監督します。これは前作で殺された若者たちの叔父がレザーフェイスへの復讐を企てるさまを、グレードアップさせた残酷描写とブラック・コメディ・タッチを交えながら描いたものでした。

その後、フーパーは監督を退き、殺人鬼一家の家族構成を一新させての新たな惨劇を描く『悪魔のいけにえ3 レザーフェイス逆襲』(90)、卒業パーティを抜け出した高校生たちが殺人鬼一家に遭遇する『悪魔のいけにえ レジェンド・オブ・レザーフェイス』(94)が作られました。

21世紀に入ると、マイケル・ベイの製作で第1作をリメイクした『テキサス・チェーンソー』(06)とその前日譚『テキサス・チェーンソー・ビギニング』(06)も作られています(レザーフェイスの本名はトーマス・ブラウン・ヒューイット、殺人鬼一家の長男へと変更)。

さらには2013年、第1作の続編を新たな発想で、しかも3D方式で描いた『飛び出す悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』(13)も発表されました。

5歳の誕生日プレゼントに
チェンソーをもらった少年

こうした流れの中、シリーズ最新作『レザーフェイス ―悪魔のいけにえ―』は、レザーフェイスというおぞましき殺人鬼がいかにして誕生したのか? という前日譚を描いたものです。

本作の特徴は、第1&2作目の監督であり、シリーズの生みの親でもあるトビー・フーパーが製作総指揮に名を連ねていることで、その伝でいえば久々にシリーズ本流の流れを汲むものとして屹立していることでしょう。

監督はジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロのフレンチ・ホラー映画ニューウェイヴを牽引するフランス人コンビに託されました。

物語は、殺人鬼ソーヤー一家に生まれた5歳の子どもジェドが、何と誕生日のプレゼントにチェーンソーを贈られることから始まります。
(シリーズ1&2作では、レザーフェイスは本名ババという設定でしたが、改変されています)

まもなくしてソーヤー家の農場で少女ベティの変死体が発見され、ジェドは厚生施設へ移されます。

そして10年後、厚生施設で暴動が発生し、ジェドは破滅的な仲間たちとともに逃亡を強いられてしまいます。

さらに彼らを追う保安官は、10年前に殺されたベティの父で狂気に満ちた保安官ハートマンでした……。
(このあたりの設定は、シリーズ第2作へのオマージュも感じられますね)

正直、第1作での狂気に満ちたレザーフェイスから遡って考えると、少しイメージが違うかなという感もなきにしもあらずで、むしろ『テキサス・チェーンソー』2部作や『飛び出す』同様、パラレルワールド的に捉えたほうが得策のような気もしています。

もちろん残酷描写なども多彩ではありますますが、それ以上に殺人鬼としての英才教育(?)を受けてきたひとりの少年が、さまざまな狂気や絶望と対峙しながらそこに感化されていく悲しみや切なさみたいなものまで醸し出されてるようです。
(その伝では殺人鬼映画の原点『サイコ』シリーズのノーマン・ベイツの過去のいきさつを描いた作品群とも共通するものを感じます)

これまでの『悪魔のいけにえ』シリーズのレザーフェイスは、あくまでも狂える人間として捉えられており、決してモンスターではありません。

逆に考えますと、人間以上のモンスターはこの世に存在しないということなのかもしれませんね。
 そしてユニークなのは、青年期に入ってから、いったい誰がジェドなのか、即ち誰がレザーフェイスになるのかがなかなか明かされないことで、そのあたりのサスペンス趣向を楽しむのも一興でしょう。

最近、マコトかウソか「ホラー映画は心身に良い」といった学説をネットで読みました。

どうやらスリリングかつアブノーマルな極限的疑似体験が、鑑賞後のカタルシスをもたらすとともに、ストレス発散になるといった要旨。

その伝に倣えば、本作の恐怖も心身に良いのか否か?その目でぜひ確かめてみてください!
(もっとも、この手のものが苦手な方は、トラウマにならない程度にね)

(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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