学園青春ミステリの快作『ソロモンの偽証』を改めて振り返る

ソロモンの偽証 前篇・事件

(C)2015「ソロモンの偽証」製作委員会 

7月6日から『虹色デイズ』が公開されます。佐野玲於、中川大志、高杉真宙、横浜流星といった人気若手イケメン男優が男子高校生に扮して繰り広げる、友情と恋の物語。学園を舞台とする青春映画ならではの初々しいときめきと躍動感にファンは魅了されること必至。

もっとも、学園ドラマはこういった恋と友情ものだけではありません。

ときに対立やイジメなど負の確執といった真逆の要素をモチーフに、シリアスに、そして当然ながら真摯に若者たちの機微を描いていくものもあります。

今回ご紹介する『ソロモンの偽証』2部作は、中学生たちが同級生の死をめぐって学校内裁判を始めるという衝撃の青春ミステリ映画です。

自殺か? イジメによる殺人か?
ひとりの少年の死をめぐる謎

宮部みゆきの同名ミステリ小説を映画化した『ソロモンの偽証』は、雪降り積もるクリスマスの朝から始まります。

城東第三中学校の校庭で2年Å組の生徒・柏木卓也の死体が発見されました。

警察も学校も自殺と判断しますが、その後「彼の死は大出俊次をリーダーとするグループのイジメによる殺人だ」という匿名の告発状が届きます。

マスコミが騒ぎ立てる中、穏便に事を進めようとする学校側に対し、事件の発見者でもある2年A組の学級委員長でもある藤野涼子(藤野涼子)は、自ら真実を追及すべく、大出を被告人に据えて、全校生徒による学校内裁判を開廷するのでした……。

本作は、事件そのものの成り行きから、涼子が学校内裁判を開廷するに至るまでを描く『前編・事件』121分と、裁判そのものの動向を描いた『後編・裁判』146分という2部作仕立ての長尺で(ちなみに原作は『事件』『決意』『法廷』)、ひとりの少年の死をめぐる中学生それぞれのデリケートな心の闇に迫っていきます。

何よりも中学生による学校内裁判という意表を突いた設定そのものに負けない、繊細かつ残酷で哀しい思春期の繊細な心理に着目しているところが妙味ともいえるでしょう。

藤野涼子をはじめとする若手俳優の
初々しきステップアップの場

本作の監督は、日本アカデミー賞作品賞など10部門を受賞した『八日目の蝉』(11)などの成島出。ミステリはもとより、あらゆるドラマの中にヒューマンな味わいを盛り込むことに長けた才人は、ここでも思春期の子どもたちひとりひとりに厳しくも慈愛に満ちた眼差しを注ぎつつ、事件の糾明、およびそこに至るまでの確執などを見事に描出しています。

そして何よりも中学生たちのキャスティング!

本作は当時“日本映画史上最大規模”とも謳われたオーディションが開催され、およそ1万人の応募者の中から主人公・藤野涼子役の女優を選抜し、役名と同じ藤野涼子の芸名でデビューすることになりました。

結果、彼女は日本アカデミー賞をはじめ報知映画賞、ヨコハマ映画祭など数々の新人賞を受賞する好演で、やもすれば陰惨なイメージに陥りがちな世界観の学園ドラマに心地よい風を吹き込ませています。

彼女だけではなく、ここには数々の少年少女の俳優たちが集団劇の一員として大挙出演。

その中には石井杏奈、板垣瑞生、清水尋也、富田望生、望月歩など、本作をステップに現在も旺盛に活躍中の者も多数います。

こういった作品は、内容そのものの面白さもさることながら、そこに出ていた俳優たちの現在の動向などと照らし合わせつつ、その成長ぶりの原点などを再確認できるといったお愉しみもあります。

なかなか息をつかせてくれないほどのスリリングなミステリと裁判シーンの中から、まだ大人になりきれてない中学生たちの、中学生ならではの幼くも真摯、ときに悲壮をも帯びた駆け引きの数々から、思春期だからこそのエモーションが確実に、そして繊細に発露されていきます。

季節はいよいよ真夏に突入、冷房の効いた部屋でじっくりと、この学校内裁判の動向を見守ってやってください。

[2018年7月6日現在、配信中のサービス]
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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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