映画コラム

REGULAR

2018年05月04日

ハリウッドでリメイクされた感動の日本映画『タイヨウのうた』

ハリウッドでリメイクされた感動の日本映画『タイヨウのうた』



(C)「タイヨウのうた」フィルムパートナーズ 


最近は日本映画の話題作がハリウッドで映画化されることも珍しくはなくなってきましたが、その大半は『リング』を代表とするホラー映画のように思われます。

その中で今回ご紹介する『タイヨウのうた』は若者たちのピュアな恋を描いた青春ラブ・ストーリーで、これをハリウッドでリメイクした『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』が5月11日より全国公開されます。

ハリウッド版を見る前に、オリジナルがどんなものであったか、一緒に振り返ってみませんか?

太陽の光にあたることのできない
ヒロインの生の輝き


『タイヨウのうた』は脚本家・坂東賢治のオリジナル・ストーリーを原作に映画化したものです。

ヒロインの雨宮薫(YUI)は幼いころから色素性乾皮症(通称XP)という、太陽の光にあたると身体に異常をきたす病気を抱えており、そのため昼間は外に出ることができず、日が暮れてから活動するという、昼夜逆転生活を強いられてきています。

それでも家族(岸谷五朗&麻木久仁子)の愛情や幼馴染の松前美咲(通山愛里)の友情に支えられながら幸せに暮らしている薫は、いつしか音楽に魅せられ、それが高じて夜ごと公園でストリート・ライヴを行うようになっていました。

そんなある日、いつものようにライヴをしている薫の前に一人の青年が現れます。

それは薫が幼い頃から家の窓からずっと見つめ続けていた藤代孝治(塚本高史)でした。

このあと、当然ながら惹かれ合っていく二人ですが、しかしそこには病気という壁が大きく立ちはだかっていきます……。


主演YUIの歌がもたらす勇気と希望
『ちはやふる』監督の長編デビュー作


こういったジャンルの作品は昔も今も数多く作られ続けていますが、単に難病をネタにしてお涙頂戴に持ち込むものよりも、限られた命をいかに燃やし続け、鑑賞後の観客になにがしかの勇気や希望をもたらしてくれるもののほうが圧倒的に後世に残る名作として讃えられていきます。

『タイヨウのうた』は言わずもながの後者であり、またそこにはもともとシンガーソングライターであるYUIの好演はもとより、自ら歌う歌曲の数々も大きく映画に貢献しているといってもいいでしょう。

中でも主題歌『Good-Bye days』はCDの売り上げが20万枚を計上し、映画そのものも興収10.5億円を越えるヒットとなりました。

Good-bye days



こうした成果もあって、この年の第30回日本アカデミー賞でYUIは新人俳優賞を受賞しています。

さらに今振り返ると、監督が『ちはやふる』3部作で日本映画界の若手旗手の筆頭となった小泉徳宏であることも特筆しておくべきでしょう。

本作は学生時代から自主映画制作で認められた彼の、映画監督としての長編デビュー作であり、1980年生まれですから若干25~26歳で大任を果たしたことになります。

韓国で、ヴェトナムで
そしてハリウッドでリメイク!


ちなみに本作は2006年6月に公開されていますが、翌7月から沢尻エリカ&山田孝之主演のTVドラマ・シリーズが放送されています。こちらは映画版と比べて設定の改変も多く、結果として映画&TV双方の人気が相乗効果をもたらし、『タイヨウのうた』そのものの知名度をアップさせることにもなりました。

こういった好もしいヒットの連鎖が海外でも認められ、2010年には韓国で舞台ミュージカル化され、2013年にはヴェトナムでTVドラマ化(こちらは国内ドラマ版でスランプに陥った歌手・橘麻美役として登場した松下奈緒が同役で出演)。

そして2018年、スコット・スピアー監督によるハリウッド・リメイク『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』が日本公開となります。



ヒロイン薫にあたるケイテイには、子役出身でTVドラマ『シェキラ!』(10~13)で主役を張り、映画は『子連れじゃダメかしら?』(15)などの出演。シンガー&モデル、さらには声優としてもマルチに活躍中のベラ・ソーン。

孝治にあたるチャーリーには、何とアーノルド・シュワルツェネッガーの実子パトリック・シュワルツェネッガーが扮しています(さほどマッチョではないようだけど、笑った顔の口元など父親そっくり!)

基本的な内容は日本版と同じではありますが、やはり華やかでにぎやかなプロム・パーティのシーンなどが挟まることで、よりアメリカナイズされた青春群像劇として屹立しています。

また日本版はヒロインの両親が健在なのに対し、ハリウッド版は父親のみという設定なのがちょっと異色ではあり、人気コメディアンのロブ・リブルが抑制を利かせたいぶし銀の名演を示してくれています。

『ミッドナイト・サン』の予習復習として、その原点である『タイヨウのうた』をぜひご覧になってみてください。

[2018年5月4日現在、配信中のサービス]
b_dtv

b_hulu

b_hikari

b_unext

b_netflix

b_amazon

b_jcom

b_auvideo

b_gyao

b_rakuten

b_itunes

b_googleplay



(文:増當竜也)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

RANKING

SPONSORD

PICK UP!