春こそ『東京物語』のような名作を観賞しましょう!

(C)1953/2011 松竹株式会社 

まもなくゴールデン・ウィーク到来です。

旅行や帰省、遊園地に動物園、スポーツ観戦するも一興、自ら身体を動かすのも楽しいし、はたまた美術館や博物館などじっくり探求するもよし。

そして映画は…といいますと、やはり『レディ・プレイヤー1』のような華やかな洋画大作や、『名探偵コナン』に『映画クレヨンしんちゃん』、そして『リズと青い鳥』(これは傑作!)といったアニメーション映画の話題作が軒並み揃い、実に賑やかな風情ではありますが、たまの連休、のんびりと家で寝ころびながらじっくり大人の映画を見るのも、また一興ではあるでしょう。

というわけで、そんなときはやはり世界映画史上に残る日本映画『東京物語』なんていかがなものでしょうか?

今から65年前の日本
上京した老夫婦の想い

名匠・小津安二郎監督が1953年に手掛けた『東京物語』。

今からちょうど65年前の日本の姿が映し出されます。

ドラマは、広島県尾道に住む老夫婦(笠智衆&東山千栄子)が、東京で暮らす子供たちを訪ねて上京します。

しかし戦後の混乱を抜けて、日本が高度経済委成長期へさしかかろうとしていた時期、働き盛りの息子たちは多忙を極め、日常の慌ただしさも手伝い、なかなか両親にかまってやることができません。

結局、やさしい心遣いを示してくれたのは、戦死した次男の妻(原節子)だけでした。

それでも老夫婦は子どもたちに会うことができただけでも満足だと言わんばかりに、東京を後にしますが、まもなくして……。

本作は、あたかも戦後の日本が復興していく代償として、家族の絆が崩壊していくのではないかといった、そんな小津安二郎監督の危惧の想いが、どこかしら人生そのものの虚無的な哀しみまで浮き彫りにしつつ描出されたホームドラマの傑作です。

そんな親と子の複雑な関係性は65年前と今とでさほど変わってもいないようで、一方でその関係性は日本のみならず世界的にも普遍的なものでもあったようで、時が経つにつれて世界各国の映画ファンの喝采の度が増していくという稀有な名作でもあります。

小津監督の人間を見据えるキャメラ・アイそのものが、古今東西共通した普遍的なものだったという証左でもあるでしょう。

世界中からリスペクトされ続ける
人と人との繋がりを描いた真の名作

『東京物語』は1953年度のキネマ旬報ベストテンでは第2位を獲得し、58年に英国ロンドン国際映画祭でサザーランド賞を受賞したことが、世界に小津映画を知らしめる大きなきっかけになったようです。

以後、世界各国の世界映画ベストテンで上位に入り、またヴィム・ヴェンダースやホウ・シャオシェンなど名匠監督たちからリスペクトされる存在となって久しいものがあります。

そこにはもちろん、ローアングルで固定されたキャメラ・ポジションや、人物を真正面からとらえた小津調とも呼ばれる独自の撮影技法なども讃えられてしかるべきものではありますが、それ以上に世界中の映画ファンは本作を見て、やはり人が生きていく上で必要不可欠な、人と人とのつながりの尊さを痛感させられているのでしょう。

ちょうど『東京物語』の公開から60年後の2013年には、山田洋次監督が本作にオマージュをささげた『東京家族』が製作されましたが、山田監督はこのときのキャスティングをそのまま移行させた喜劇映画『家族はつらいよ』シリーズをスタートさせ、5月25日には第3弾『妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ』が公開されます。

『東京物語』の精神、即ち大船調とも呼ばれる松竹映画の伝統がいつまでも受け継がれていきますよう、そう祈らずにはいられません。

[2018年4月13日現在、配信中のサービス]
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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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