映画コラム

REGULAR

2017年06月16日

ホントはとっても怖かった『キョンシー』!

ホントはとっても怖かった『キョンシー』!



(C)2013 Kudos Films Limited. All Right Reserved.



キョンシーをご存知でしょうか? 

いわゆる東洋版ゾンビみたいなものながら(マニアからすると、実際はかなり違うのだ! と怒られそうですけど)、どこか愛嬌あるキャラクターとして日本でも親しまれて久しいこのキョンシー。

でも本当はかなり恐ろしい怪物だっだとしたら?

そう、映画『キョンシー』は、従来のキョンシーのイメージをぶち破った画期的な作品なのでした!

1980年代に一世を風靡した
キョンシー・ブーム



映画『キョンシー』の話に入る前に、まずはキョンシーに関する基本的なことからご紹介していきたいと思います。

そもそもキョンシーとは中国に古来より伝わる死体妖怪の一種で、死後硬直したまま、両手を前に突き出してピョンピョン動き回り、ときには神通力をもって空を飛ぶものもいるそうです。

このキョンシー、実はかなり狂暴な存在で、血に飢えた人食い妖怪でもあるのですが、1985年に香港で製作されたホラー・コメディ映画『霊幻道士』が日本でも翌86年に公開されて大ヒット(ピョンピョン跳ね回るキョンシーの動作は、ここから始まったと言われています)して以来、映画はシリーズ化されていきます。

同時に亜流作品も次々と作られるようになっていき、その中でも台湾制作の『幽玄道士』(86)は日本でテレビ放送されるや、ヒロインの少女テンテン(シャドウ・リュウ)の可愛らしさが評判となり、こちらも後にシリーズ化されるとともに、キョンシーはどことなく愛嬌のある存在として広く親しまれるようになりました。

こうしたキョンシー・ブームは90年代に入ると一気に終息していきますが、その後も時折ブームを懐かしむような作品がチラホラ登場しては、映画ファンの温故知新的な興味を保たせてくれています。



『霊幻道士』にオマージュを捧げた
バイオレンス・ホラー映画



さて、そんな中で2013年に香港で制作された『キョンシー』は、キョンシー・ブームの火付け役となった映画『霊幻道士』にオマージュを捧げた作りになっているのが、何といってもユニークです。

それはどういうことかというと……。

本作の主人公は、かつてホラー映画スターとして活躍しながら、今ではすっかり落ちぶれてしまったチン・シュウホウ。

彼を演じているのが、何とかつて『霊幻道士』でキョンシーを退治する道士の頼りない弟子を演じて人気を得たチン・シュウホウなのでした。

つまり本作はスターのセルフ・パロディ的な要素も含んでいるのですが、しかしながらこの作品、コミカルな要素を一切省いたハードなバイオレンス・アクション・ホラー映画に仕立てあげられている!

それもそのはず、この作品のプロデューサーは、日本が誇るJホラー・ブームの立役者のひとりで、現在監督最新作『こどもつかい』が公開中の清水崇。

つまりはJホラー的な恐怖の情緒とキョンシーを融合させた香港映画、それが『キョンシー』なのです。

落ちぶれた俳優チン・シュウホウは自殺を考え、幽霊が出没すると噂される団地に入居しますが、そこでさまざまな住人たちと出会い、いつしかキョンシーとの戦いに巻き込まれていくのでした……!

歌手兼俳優としても活躍中のジュノ・マック監督は、文字通り幽玄な雰囲気を保ちつつパワフルな、ときに残酷さも辞さない描写で従来のキョンシーのイメージを覆していきますが、根本にはそのブームを築き上げた『霊幻道士』への敬意がちゃんと敷かれているので、旧来のファンが見ても嫌な感じはなく、一方で劇場公開時は賛否が割れたラストも含めて、観賞後は大いに語りたくなる作品にもなり得ています。

旧来のファンは、これを見ると久しぶりに昔のキョンシー映画を見直したくなるかもしれないですね。

その意味でも実に有用な作品であると思います。

[この映画を見れる動画配信サイトはこちら!](2017年6月16日現在配信中)
b_dtv

b_hulu

b_netflix

b_amazon

b_gyao

b_rakuten

b_itunes

b_googleplay




(文:増當竜也)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

RANKING

SPONSORD

PICK UP!