山田洋次監督&吉永小百合『母と暮せば』語る―憎しみから生まれる良いことはない

母と暮せば 核兵器のない世界へ 長崎国際会議 山田洋次 吉永小百合

昨日12月11日に、長崎で行われた「核兵器のない世界へ 長崎国際会議」で、山田洋次監督の『母と暮せば』の上映会が開催され、山田洋次監督、吉永小百合が登壇した。

母と暮せば

2015年公開の『母と暮せば』は、吉永小百合、二宮和也、黒木華といった豪華な顔ぶれの俳優陣が大きな話題となった山田洋次監督が初めて描いたファンタジーで、来年の第89回米国アカデミー賞の外国語映画賞の日本代表作品にも選ばれている作品だ。

このたび長崎・長崎大学で行われた「核兵器のない世界へ 長崎国際会議」において本作の上映会が行われ、山田洋次監督、吉永小百合が登壇。さらに国連のキム・ウォンス軍縮担当上級代表や外務省の武井大臣政務官、映画の登場人物のモデルにもなった土山秀夫元長崎大学長、若い世代のユース非核特使らとともに、映画について、また平和についての意見交換会を行った。

会場となった長崎大学医学部記念講堂には、長崎市内の市民や学生、海外からの長崎国際会議参加者ら約300名の観客が訪れ、ほぼ満席となった。今回は、日本が国連に加盟して60年という節目でもあり、今回の国際会議実施となりました。

母と暮せば 核兵器のない世界へ 長崎国際会議 山田洋次 吉永小百合

根本(国連広報センター所長):「母と暮せば」は私は東京でみましたが、長崎でみるのは感慨深いものがあります。本日のスペシャルゲストを大きな拍手でお迎えしたいと思います、山田洋次監督、吉永小百合さんです。

根本:ユース代表の河野さんは原爆体験の継承がテーマと言っていましたが、どうご覧になりましたか?

河野(ユース非核特使):息子の浩二が長崎大学で夢を追いかけるために勉強しいてるのが自分と同じ立場、その中で家族が支えてくれて愛する人がいる。71年前も今も同じ世界で生きていたと感じました。その世界が、1つの核兵器によって一瞬でなくしたことは、核兵器はいかに愚かなものかと感じました。

根本:山田監督、本日の機会をどのように捉えていますか?

監督:僕たちの国にとって大事な会議で、僕の映画が上映されたのは光栄に感じる。長崎大学の学生の浩二が死んでしまった話ですが、こういう悲劇が第二次大戦中に何百万どころでない犠牲者ひとりひとりにこのような悲劇があるのだと想像してもらいたいと思い、この映画を作りました。ちょうど1年前、去年の12月12日に公開されたので、不思議な縁を感じます。

根本:この映画にはどのような思いを込めましたか?

監督:主人公の母と息子の願っていた暮らしは静かでささやかなもの。愛する人と暮らして子供をつくる、ということがついえてしまった。その悲劇は世界中の人にとって共通なことです。僕ら、戦争を経験した世代は伝えていかねばならない。それが責務だと思います。

根本:吉永さんはユースのメッセージをどう受け止めた?

吉永:この映画に関わり、こんな形で3年も息子を待っていた母がいたということを実感しました。核兵器を廃絶するため、もっと声を出して世界に向かってアピールしなくてはいけないと撮影中に感じていました。

根本:世界から会議に参加するこの機会については?

吉永:海外での朗読詩の活動は、これまでオックスフォードやシアトルでもやったことがあり、今年5月にバンクーバーでも行いました。そこで彼らが本気で考えてくれていることが伝わり、胸が熱くなりました。

根本:土山先生は浩二のモデルと言われていますが。

土山:モデルにはなっていないのではないでしょうか。浩二は死んでいるけど私は生きている(笑) ただ、メンデルスゾーンのくだりは実話。クラシックが大好きで憲兵に怒られるので蓄音機に座布団をかぶせて耳を寄せて聞いた最後がメンデルスゾーンのコンチェルト。また浩二が憲兵に捕まえられたのは兄のエピソードで、大変光栄です。見終わってしみじみと原爆の非人間性、戦争の不条理を考えさせられます。

武井:私たちは微力だが無力でない。原点に立ち戻らねばならない。感謝しています。戦後70年、伝えることができにくくなっている。語り部が10年後どうなっているかと思うと映画に残してもらえてありがたいですし、伝えていかねばなりません。こういう時だから日本から唯一の被爆国として世界に訴える重要性を考えています。

ウォンス:ウィーンから東京に来る間に映画を見ました。核兵器で、恋人や大切な人を失う。しかし、人間性というか平和を思う思いが悲劇を克服すると信じています。若い世代が核兵器を作ったのではない、古い世代により作られたもの。若い世代には、この廃絶のおもいを絶やさないで欲しいと思う。映画をみてそう感じました。

河野:モンゴル、中国、韓国を訪問して若者に非核を伝えた。戦争、核兵器が2度と使われない世界になってほしい、というのが共通な思い。自分たちも協力していこうと誓って活動しています。

キンバリー(ユース非核特使):間違った兵器を正しく使える、ということはない。これは人間が仕組んだひどい悲劇なの、というセリフが印象的でした。非人道性、核兵器廃絶は大きいテーマだけど、1人1人の問題とするとシンプルに感じました。

吉永:核の廃絶に意見が一致しないのが悲しいが、あきらめないで声をだして、核のない世界にしようと言い続ければ、きっと実現すると願っています。小さな力だけど行動したいです。

ウォンス:我々は核兵器を廃絶させる責務を負っています。そこに行き着く手段が難しいですが、来年から新たな交渉をします。多くのプロセスがありますが、各国と話し、理解し敬意を払い目標に向かいたい。誰でも、どの国でも話し合いで解決しないことはないと思います。

監督:より多くの人に見てもらえたら。この映画で伝えたいことたくさんある。戦争が国同士の憎しみを煽ることが戦争になる。レコードも聞けない、あらゆる英米が禁止された。ドイツは友好国だけど欧米のものは皆禁止された。どこの国でも話し合って解決しないことはないと。憎しみから生まれる良いことはない。

吉永:若者のつながりについても心強い。白熱して話し合って、世界の若者が心つないで、1日も早く核廃絶がきてほしいです。ぜひお願いします。

監督:絶望するのは簡単。若者が情熱的に議論したと聞いて、希望を抱きます。ぜひがんばって。

ウォンス:若い世代のエネルギーがとても大事。長崎の被爆者が年寄りになり、君たちに掛かっている。ぜひ、この映画に今年のオスカーをとってほしいと願っています。

母と暮せば 核兵器のない世界へ 長崎国際会議

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