2人と一緒に旅をする。男がときめくバディ・ムービー『アリーキャット』榊英雄監督インタビュー

── コーラに関しては作中でも何度か出てきますが、なぜお酒ではなくコーラだったのでしょうか?

 お酒に逃げたくないっていうのが1つあります。あまりお酒のパートがないこともありますが。あと、コーラの瓶ってセクシーな感じがするんですよ。あのちっちゃい瓶って。

最近も子どもたちとお台場に遊びに行った時に、瓶のコーラが入った販売機があって。自分で栓を抜くタイプの。すぐに買いましたもん。なぜかみんな飲んでるんですよね、子どもだけじゃなくて、お父さんもお母さんも。

あの何とも言えない瓶の魅力を2人の珍道中の旅にいれることで、無理にお酒を入れる必要はなかったですね。

── マルとリリィの2人。いつかは大きいことをしたいと思いながらも、実際に目の前で大きな事件が起きた時にビビってしまうダサいところが「あるある」で印象的でしたが、男ってそういうものですよね。

 ヘタレの男2人ね。(笑)

なんかこう…路地裏の猫じゃないですか、アリーキャットって。すみっこに生息しているにすぎない。生きているっていうよりも生息しているような猫。マルとリリィもそんな猫のような人間なんですよ。

まあ多分、負けも知っていれば勝ちも知っているけど、負けが多くて今の感じになってる。その中で、日々生息する感じで生きている中で、たまたま大きいことをやろうってきっかけが来て、表に出ようとするんだけど、大通りだと車が多いからビビってしまう。

で、「行けぇー!」って勢いで渡っちゃうんですよ。そこで車にはねられて死んでしまう猫もいれば、渡りきる猫もいるようなもの。1回ひかれたけど何とか戻ってきたりして、また渡ろうとするとか。そう考えると2人のことがすごくわかりやすくなるかと思います。

── 三浦誠己さん演じる経営コンサルタント・柿沢が1番怖かったです。柿沢というモンスターをつくるにあたり、モデルにした人物などはいるのでしょうか?

 やっぱり大事な悪役は欲しいと思っていました。ただし誰かをモデルにするというよりは、誰が演じるのかってところから入りますね。僕はどうしても三浦誠己さんにやってほしいと思っていました。

(C)2017「アリーキャット」製作委員会

僕の大好きな俳優の1人で、できれば全作品にどんな形でも出てほしいと思っている役者さんです。そんな彼が興味を持って、演じたいと思わせるような役を書いてくれと脚本家に依頼しましたね。

表面的には笑顔なんですけど、頭を下げるのはご飯を食べるような、日々のなんでもないことでいくらでも下げられますよ、みたいな。でもその心持ちはものすごくどす黒い。そんな男を彼が演じてくれたので良かったですね。裏も表も精通していて何が何だかわからないけど、1番悪いのはお前だ、とはっきり言えるような。

でも、もっと悪いのは市川由衣さんの役の冴子なんですけどね。「お前と出会ったばっかりに…」みたいな。(笑)

(C)2017「アリーキャット」製作委員会

── その市川由衣さんが演じる冴子ですが、かなりきわどいシーンがありますよね?

やっぱり俳優にとってそこはナーバスになるところですから、もちろん市川さんも心配だったと思うので、大丈夫だよって話をしました。高川裕也さんとのシーンでしたので、高川さんと段取りを確認しながら、それを説明して、やってもらったんです。

── 火野正平さんに2人がガチで蹴られるシーンがありましたが、撮影現場ではどのようなやりとりがあったのでしょうか?

 火野さんには思いっきり、本気でやってくださいとお願いしました。となりでリリィこと降谷君が「え?」って言ってましたけど(笑)。

ちゃんと痛くないところを蹴ってくれるよって言ってたんですけど、全然思いっきり蹴ってましたね。アザになっちゃったみたいですけど、みんな楽しかったみたい。2人とも「勲章ですよ」と言ってくれて。

(C)2017「アリーキャット」製作委員会

あそこをゆるく流していると、2人のシーンを割らなくちゃいけなくなりますから。少しはカットを入れてますけど、できればあれを長回しで、引きで撮りたかったのでありがたかったですね。

── 監督ご自身は、マルとリリィ、どちらが自分に近いと思われますか?

 (即答で)リリィですね。僕がリリィをやったら降谷君とは違うリリィをやります。ってそれじゃ話にならないですね(笑)。

でも、やっぱり僕はリリィですね。マルはどうしても出来ない。そういうタマじゃないし。

── マルはあまりふざけるところがないですからね。

 ないですね。でもそれが今の窪塚君だと思うんですよね。『池袋ウエストゲートパーク』をやってた頃から抜けた感じの。新しい考え方を自分の中で確立しているからこそ、今のマルをやれたというか。

これまでならリリィのように動いていたはずだけど、そこじゃなくて。もうリリィの年齢を過ぎていると言うか。格好とか、経験とか。みんな大人ですよね、もちろんリリィを演じてくれた降谷君も。

── 最後に、シネマズ by 松竹の読者へ絶対に見たくなるひとことをお願いします。

榊 やはり窪塚君と降谷君の2人ですよね。マルとリリィ。2人のコンビ感とお芝居。世代の中のスターだしカリスマでもあるけど、その前にしっかりと素敵なドラマを2人が演じてくれている。

映画という虚構の中で旅をするならば、素晴らしいベストパートナーであり、ガイドであること。小さな小さな旅ですけど、時にはジェットコースターのように、時にはすごく静かな映画になっています。ぜひ2人と一緒に楽しんでもらえたらと思っています。

(取材・文・撮影:ゆうせい)

公式サイト http://alleycat-movie.com/

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