【本音】『インフィニティ・ウォー』否定派が『エンドゲーム』を観た感想

©Marvel Studios 2019

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の歴史に1つの区切りをつける『アベンジャーズ エンドゲーム』が、映画史に新たな歴史を刻んでいる。全米オープニング週末興収は、前作『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』が持つ歴代記録を大幅に更新する3億5700万ドル超えを達成。この成績はモンスター級という言葉すら可愛く感じられるほどで、映画産業においては天文学的な数字なのではないだろうか。全世界興収でも公開1週間を待たずして12億ドルを突破しており、早くも世界歴代興収No.1の『アバター』が持つ27億8796万ドルにどれだけ迫るか注目を集めている。

『インフィニティ・ウォー』にノリきれなかったが

MCUはおろか映画史にとって重要な位置づけとなった『エンドゲーム』だが、実を言うと筆者は前作『インフィニティ・ウォー』にノリきれなかった部分が多い。

©2018MARVEL 

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』より

“ヒーローが敗北する”という側面以上に構成への違和感がどうしても先に出てしまう。そのため果たしてそんな感情を持ったまま『エンドゲーム』に挑むことができるのだろうかという思いが強くあった。多くの映画ファンが最速上映に足を運ぶ中、自分自身も話題作はいつも初日に観に行くはずなのに“今すぐに”という鑑賞欲が沸いてこない。

結局時間の都合もあり間を置いた日曜日の夜に鑑賞へと至った訳だが、なんのことはない、感情大爆発である。満員の観客とともに笑い、感嘆の声を上げ、そして目頭が熱くなり… と感情のフルコース。それこそ映画鑑賞に求める醍醐味であり、鑑賞後にはスタンディングオベーションを捧げたいほどの感動に包まれることになった。

そもそもなぜ筆者は『インフィニティ・ウォー』が肌に合わなかったのか。もちろんアクションとしては素晴らしかったし、あれだけの数のマーベルヒーローを一堂に会したスケール感にもワクワクするものがあった。ただ中盤ぐらいからだろうか、「このヒーローたちはなんのために戦っているのか」という疑問がチラつくようになった。

もちろんサノスの野望=指パッチンを防ぐためだが、その時初めて「誰かを守るために戦うヒーローが見たかった」のだと気づいた。たとえば『アベンジャーズ』ではニューヨークひいては人類全体、『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』ではソコヴィア市民のためにアベンジャーズは戦っていたが、『インフィニティ・ウォー』ではそういったヒーロー周りの第三者の姿がほとんど見えてこなかったのだ。

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『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』より

その結果、指パッチンを防ぐためとは言え言葉は悪いが「ヒーローを一斉登場させてなんかわちゃわちゃやってる」ように見えてしまった。膨れ上がった各マーベルキャラクターの配置に時間が割かれることで、ヒーローに庇護されるべき第三者の描写がなかったのは残念としか言いようがない。そのためサノスの野望阻止失敗からの指パッチンという結末に流れ込んでも、慣れ親しんだキャラクターたちが次々と灰となって散っていくショックは大きかったものの、イマイチ人類の半分も消滅したという恐怖感までは伝わってくることはなかった。

ヒーローたちが何のために動くのか

さてサノスの指パッチンから1年、ようやく『アベンジャーズ エンドゲーム』が公開されたわけだが。まずはいきなりとある家族が灰になって消滅するという、主要キャラではない“第三者の悲劇”が展開するではないか。さらに友人・家族を失った一般市民の描写が続き、とある街ではおそらく何千・何万の名前が刻まれているのであろう行方不明者の石碑も登場する。『インフィニティ・ウォー』で描き切れなかった、第三者が被った“災厄”が如実に目の前で示されたのだ。

そういった描写があったからこそ、今回はすぐに「ヒーローたちが何のために動くのか」という“動機”について感情移入することができた。そこからの筆者はもう、「転げ落ちるように」という状態。消滅した仲間・人々のために再び団結するアベンジャーズの魅力と、『インフィニティ・ウォー』でドクター・ストレンジが示したサノスに勝利するための「1400万605通りの1」という確率の内容というものはどのようなものなのか、という興味がぐいぐいとこちらの感情を引っ張っていく。

さらに『エンドゲーム』はサノスに勝利することを主眼に見せかけておいて、実は10年という歳月をかけて“家族”というテーマ性を一気に昇華させることが目的にあったのではないか。それほどに、実はドラマチックな要素が多い。確かに超絶怒涛のアクションも魅力的だが、何より10年という時間の中で各キャラクターがどのような人生を過ごしてきたか総括する意味においては、本作が1つの答えになっているのは間違いない。それは“アベンジャーズ”“エンドゲーム”というタイトルには現れていないが、MCUにおける極めて大切なテーマだったように思える。

©Marvel Studios 2019

そうした“家族”という点を踏まえながら訪れる結末は、お見事と言うほかない。これほどまでに「集大成」という言葉が相応しい作品はほかになく、上映時間3時間という枠組みの中でよくぞ10年というMCUの歴史をここまでまとめ上げたという感動が一気に押し寄せてくる。もちろんドラマ作品も含めMCUタイトルを観ておくに越したことはないが、サノスとの死闘の果てに迎える結末の余韻は、『エンドゲーム』という作品だからこそのもの。感情の整理が追いつく間もなくエンドロールへとなだれ込み、最後の最後まで「MCU」という1つのブランドたる誇りと燦然とした輝きが観客を魅了する。繰り返すが、この感動は『エンドゲーム』という作品だけがもたらすことができる“奇跡”でもあるのだ。

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『エンドゲーム』はどの部分を切り取って解説しようにも、ファンの興味を削ぎかねない“ネタバレ”になってしまう。監督のルッソ兄弟やキャスト陣が繰り返しネタバレしないようメッセージを贈り続けていたのも納得以外の何物でもなく、まさに全編が見どころ。正直なところ筆者はアメコミに疎いので、『エンドゲーム』ひいては「MCU」の神髄を知るならばぜひほかの方々のレビューを参考にしてほしい。筆者も鑑賞後に理解が及ばなかったポイントについてチェックして、情報を補填しては「なるほど!」と膝を打つ場面が多かった。

もはやお祭りの様相を呈しているが、実はどの映画作品にも負けないほどのドラマ性も包括している『エンドゲーム』。

MCU10年の集大成を、ぜひその目で確かめてほしい。

(文:葦見川和哉)

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