大ヒット中の「ドント・ブリーズ」、てんとう虫に隠された重要な意味とは?

とにかく、「面白い!」「ドキドキさせられた」など、鑑賞後のレビューが非常に好評!
年末の公開以来、口コミで集客を着実に伸ばし、年明けからも上映回数と規模を拡大し続けている話題作、それがこの「ドント・ブリーズ」だ!

確かに、優れたエンタメ作品として楽しむことが出来る本作だが、それだけでは説明できない魅力に溢れた本作を、今回は年末の大晦日に鑑賞してきた。
既に午前の段階で、その日の上映回チケットは完売!という人気だったのだが、果たして、その内容と人気の秘密はどこにあったのか?

予告編

ストーリー

親と決別し、街を出るため逃走資金が必要だったロッキーは、恋人のマニーと友人のアレックスと一緒に大金を隠し持つと噂される盲目の老人宅に強盗に入る。だが彼は、目は見えないが、どんな“音”も聞き逃さない超人的な聴覚をもつ老人——そして想像を絶する<異常者>だった。

真っ暗闇の家の中で追い詰められた若者たちは、怪しげな地下室にたどり着く。そこで目にした衝撃的な光景に、ロッキーの悲鳴が鳴り響く——。 彼らはここから無傷で《脱出》できるのか——。(公式サイトより)

本作攻略のカギ、それは「てんとう虫」!これを見逃すな!

ポスターや予告編の印象からは、盲目の殺人鬼との対決を描くホラーサスペンス映画、そんな印象を受ける本作。だが、これだけの口コミが広がるということは、絶対に単なるホラー映画では無い筈!
そこで今回は、本編中で印象的に登場する、あるモチーフから、この作品を深く読み解いてみることにした。

その重要なモチーフとは、本作の冒頭から、何度か登場する「てんとう虫」。
うっかりすると見逃してしまいそうな描写だが、実はこの「てんとう虫」から本作を読み解くと、実に深い意味と意図が込められていたことが分かる。

本作でも語られている様に、欧米では「てんとう虫」は神様の使い、あるいは幸運をもたらす虫として、非常に大事にされているのだが、その大元となっているのは、以下のような故事による。

昔々、無実の罪で死刑にされそうな男がいた。
その男の肩に一匹の「てんとう虫」が止まったが、男は自分が死刑になる前に逃がそうと、ふっと息を吹きかけて「てんとう虫」を自分の肩から飛ばしてあげた。
やがてその「てんとう虫」は別の男の肩に止まったが、その男は「てんとう虫」を叩き潰してしまった。
その様子を見ていた領主がふと疑問に思い、この事件を再調査させたところ、なんとその叩き潰した方の男こそが真犯人だと判明した。

このことから、以後「てんとう虫」は無実の人を救う幸運の虫と考えられ、欧米で大事にされるようになったとのこと。

実は、この故事を踏まえて本作を鑑賞し直すと、冒頭のシーンで車の中にいるロッキーの指に「てんとう虫」が止まったり、手に「てんとう虫」のいれずみを入れている描写が、どれだけ深い意味を持つかが分かって頂けると思う。
欧米では幸運の印として「てんとう虫」のいれずみを入れることは珍しくないのだ。

その他にも、「てんとう虫」が体に止まると、願いがかなって幸運がやって来ると言われていたり、女性の手に「てんとう虫」が止まると、結婚(!)が近いことを意味するとも言われている。

また、実は「てんとう虫」は、3ヶ月程の短期間しか生きられないことから、「心配事や恐怖に怯えていないで、自分を信じて前進し、人生を楽しみなさい」という意味もあるのだそうだ。

どうでしょう?
既に鑑賞した方なら良くお分かりかと思うのだが、冒頭の「指にてんとう虫が止まる」からの、「その手にもてんとう虫のいれずみが見える」という描写だけで、既にラストまでの展開が暗示・説明されていたとは!

特に驚かされるのは、「結婚が近い」という意味。この意味と暗示が終盤の衝撃的展開に関わることは、鑑賞済みの方には分かって頂けると思うが、更に合わせて意味深なのが、「てんとう虫」の英語名が、LADY BUG、或いはLADY BIRDであるということ。実はこの「LADY」とは、聖母マリア様のことを指す。

この二点を踏まえて映画を観ると、ラストのあの部屋が馬小屋のイメージであることに気が付くし、なぜレイプしないのか?(処女受胎あるいは宗教的理由!)その理由も一気に明確になる筈だ。

更には、英語圏の子供が遊びで歌う、「てんとう虫」についての以下のような、マザーグースの童謡があるのを、ご存知だろうか?

LADYBIRD LADYBAIRD,FLYAWAY HOME.
YOUR HOUSE IS ON FIRE,AND YOUR CHILDREN ARE GONE.
ALL EXCEPT ONE,AND THAT IS LITTLE ANNE.
FOR SHE HAS CREPT UNDER THE WARMING PAN.

訳:てんとう虫、てんとう虫、急いでおうちにお帰りなさい。
  おうちが火事になり、子供たちは皆死んでしまった。
  でも、一人だけ助かった、それは末っ子のアン。
  フライパンの下に潜り込んでいて助かった。

はい、この歌詞の内容、正に本作のストーリーを物語っているではないか!

冒頭の「てんとう虫」のシーンだけで、誰が生き残るかとラストまでの展開を暗示する、見事な脚本と演出!ここにこそ、本作の大ヒットと高い評価の原因があるのは間違いない。

最後に

ある種の「ジャンル映画」に見せかけ、集客の敷居を低くしておいて、見に来た観客をその深い魅力で取り込み、口コミにより幅広い観客層を獲得するという、本作のアプローチ。
これって実は、昨年の大ヒット作品に共通する要素だったように思う。「君の名は」しかり、「シン・ゴジラ」「ズートピア」「この世界の片隅に」などがそうだった。

一見単なるホラー映画と見せかけて、実は深い宗教的な意味を内包する本作。
今まで述べて来た様に、本作でも「てんとう虫」という部分に着目するだけで、その世界が一気に深みを増すことがお分かり頂けたと思う。

映画に写っている物、登場する物全てには、必ず意味と必然性がある。
そんな基本的な事を思い出して見るだけでも、映画の楽しみ方と世界観は格段に広がりを持つのではないだろうか?

見に行くとあらゆる意味で予想を裏切るが、絶対に期待は裏切らない本作。全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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