『映画 みんな!エスパーだよ!』を見て痛感する… 思春期のくだらない妄想と、その切なさを抱きしめて⁉

■「キネマニア共和国」

本当にもう、この映画に満足しきっています。だから本当は何も書きたくない気分なのですが、やはり気に入った作品は紹介しておかないと……。

ということで、

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街 vol.16》
Web
園子温監督の最新作『映画 みんな!エスパーだよ!』のエロエロな楽しさを、かつて思春期を過ごしたあなたに、今まさに思春期まっさかりなあなたに伝えたい!

何とも楽しい!アホエロな設定の数々だよ!

『みんな!エスパーだよ!』は、若杉公徳の同名コミックを原作にした2013年のテレビドラマを、染谷将太をはじめほぼ同じキャストで映画化したものですが、もうとにかく設定がぶっとんでいます。
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ある夜、突然宇宙からの怪光線を浴びた人類の中で、ある一定の条件を満たした者が超能力者、すなわちエスパーになってしまうわけですが、その条件というのが、

①性交未経験者であること(要するに童貞と処女)
②光を浴びたとき、性的エクスタシー状態にあったこと
(つまりはオ●ニー中⁉)
③能力に気づき自覚すること

③以外は、もう本当におバカですね。くだらないですね。恥ずかしいですね。でも、実にいいですね。
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で、こういった条件を満たした主人公らが、あれやこれやのアホエロ設定に翻弄されまくりつつ、いつのまにか人類存亡の危機に立ち向かっていくという、もうどうにでもしてくれといいたくなるほどに楽しいエピソードが満載なのです。

園子温監督ならではのアナーキズムの奥にうかがえる
柔らかなまなざし

こういった作品は、徹底的にやらないと逆にエロさがいやらしさになって笑えなくなるもので、その点、園子温監督はよくわきまえていて、パンチラにテンガなどなど臆することなくガンガン描出し続けながら、青少年の妄想を大いにあおっていきます。

実際、この作品にはあからさまなヌードやSEXシーンといったものは出てきません。

しかし、にも関わらず、園演出は池田エライザや真野恵里菜ら高校生役の女の子たちからさわやかなお色気を、神楽坂恵や高橋メアリージュン(個人的には彼女の存在感が一番ナイスでした)ら大人組からはアダルトな魅力を発散させ、対する染谷将太ら男組からはひたすらくだらなさや情けなさを抽出し(中年のマキタスポーツがエスパーになってしまうという悲喜劇も含めて!)、しかしその中から思春期特有の切なさであったり、いつまでたっても大人になり切れないおっさんたちの悲哀などを微笑ましく描いていきます。そこがたまらないのです。
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今年は『新宿スワン』『ラブ&ピース』『リアル鬼ごっこ』と続々新作が公開されている園監督ですが、それぞれまったくテイストの異なる題材であると同時に、園作品ならではのアナーキズムが炸裂している点で、彼の映画作家としてのパワフルな資質を痛感させられっぱなしではありますが、その中で本作は他の作品群よりも肩の力を抜いた柔らかさが心地よさにも転じているように感じられます。それはやはり思春期という、誰もが通る恥ずかしくも忘れがたい体験を肯定するでも否定するでもなく、でも「そうなんだよね」と明るく(実はその奥で照れ臭く)語りかけているからでしょう。

ホント、あの頃はエロも含めてくだらないことばかり考えていたものでした。
しかも困ったことに、それは今もなお続いているような気がしてならず、そんな男どものどうしようもなさを、女はいかに見るか?

その意味では、デートでこの映画を見ると、ある種のリトマス試験紙になるかもしれませんね……⁉

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(文:増當竜也)

公式サイト http://esper-movie.gaga.ne.jp/

(C)若杉公徳/講談社 (C)2015「映画 みんな!エスパーだよ!」製作委員会


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou

    鹿児島県出身。映画文筆。

    朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。

    取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。

    編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊)

    その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。

    ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊)
    現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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