「ゴースト・イン・ザ・シェル」まだ彼女は「全裸で犯人逮捕する女性刑事」と思われているのか?

■「役に立たない映画の話」

ゴースト・イン・ザ・シェル ティザーポスタービジュアル

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「攻殻機動隊/インターナショナル・バージョン」をめぐって。

先輩 「攻殻機動隊」、押井守監督のアニメ映画とは、ちょっとご縁がありまして。

爺 なんだい? もう22年も前の映画だぞ。

先輩 その映画に海外公開バージョンがあるのをご存じですか?

爺 世界中で上映されただろうから、そういうバージョンもあるだろうなあ。

先輩 「攻殻機動隊/インターナショナル・バージョン」ってのがありまして、これが1997年3月に日本で劇場公開されているんです。で、その時僕はちょっと宣伝とかに絡みまして・・。

爺 君の営業熱心なのは、昔からだったのか?

先輩 いやまあ、成り行きで・・。それでこの「攻殻機動隊/インターナショナル・バージョン」のパンフレットに「ワールドワイド・レポート」という文章を書いたんですよ。当時講談社が集めた、世界のメディアがどのように「攻殻・・」を評価したか。論じたか。それを読破して、その上でこのレポートを書いたわけです。

爺 ふーん。

先輩 今でもその内容を覚えているんですが、フランスの新聞だかどこかで掲載された批評で、「モトコという女性刑事は犯人を逮捕するたびに全裸になる」と書いてあって・・。

爺 なんじゃそりゃあ!!

先輩 どーも真面目にそう思っているようで。

爺 とんでもない誤解をしているな。

先輩 でも、当時の日本のアニメ映画の海外評価なんて、そんなもんでしょう。本来は日本製アニメを馬鹿にする意味で使っていた「ジャパニメーション」という言葉を、国内では褒め言葉と勘違いして、「ジャパニメーションの最高傑作!!」とか言ってたから(笑)。

爺 そもそもが海外の評価を鵜呑みにしてしまう国民性なんだな。その割には日本のソフトが海外でどう評価しているのか、その実態を知らない。イメージだけで捉えてしまう。

先輩 だから「裸になって犯人を逮捕する女性刑事モトコ」なんて評価をされているなんて、知らないんでしょうね、当時の関係者は。

爺 あるいはそういう評価を知ってはいるけれど、「海外のメディアが相手にしてくれた」ことに対して、喜んでいるだけなのか。

先輩 でも、「攻殻機動隊」が海外で評価された背景には、あのファーストシーンのインパクトが大きいと思いますよ。

ゴースト・イン・ザ・シェル サブ

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スカヨハよ、コスブレ・ヒロイン道をばく進せよ!!

爺 それは今回の実写版アメリカ映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」を見ても分かるよ。素子・・・じゃなくて少佐が全裸に見えるコスチュームで捜査活動してるじゃないか。熱工学迷彩との設定だそうだが、なんか肌色の肉襦袢みたいな感じで(笑)。

先輩 なんだかなあ・・という気が多分にしますけど、でも実写版「攻殻」と言うよりも、独立した映画としてはまあ悪くはないかな。途中からぐんぐん面白くなってくるんですよね。

爺 スカヨハってこういうアニメっぽい映画が似合うなあ。

先輩 「LUCY/ルーシー」があったじゃないですか。リュック・ベッソン監督の。

爺 ああ、配給会社がトンデモ映画で売ろうとしたという、あの珍品な(笑)。しかもこれがヒットしてしまったと。

先輩 アベンジャーズの一員でもあることだし。もうコスプレ・ヒロイン系女優道、まっしぐらですね(笑)。

爺 荒巻役のビートたけしは、さすがの存在感を見せるんだけど、あのヘアスタイルは独自のもので、アニメ版を踏襲してないな。

先輩 別に原作やアニメ版を、逐一踏襲する必要はないと思いますよ。独自の世界を目指したハリウッド映画の新作だと捉えれば良いわけだし。

爺 そうじゃな。日本のアニメ映画が元になっていると思うと、あそこが違うだこいつは分かってないだと、粗探しをしたくなっていかん。

先輩 桃井かおりは良い役をもらいましたね。これは儲け役。

爺 つまるところ、「攻殻機動隊」を原作にして作った作品だけど、その原作を変な形で踏襲してしまった部分と、オリジナルらしい部分が混在していて、何とも言えない後味が残る映画じゃ。

先輩 それって誉めてるんですか?

爺 うーんと・・・まあそういうことにしておこう(笑)。

ゴースト・イン・ザ・シェル 少佐

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日本のコンテンツが海外で評価され、映画化されることについては、正直微妙な気分・・。

先輩 海外で「攻殻機動隊」のオープニング・シーンが誤解されながらも強いインパクトを残したってことでもう一つ言えば、川井憲次さんの音楽も、彼らにとっては強烈だったようですね。

爺 エンディングで河井さんの、あのテーマ曲をアレンジしたバージョンが流れるが、さすがにこっちはあの独自の旋律をきちんと踏襲していた。ここを変えたら、まさに「攻殻」ではなくなってしまうからな。

先輩 この映画の製作には、原作を出版した講談社のCEOやアニメ版を制作したプロダクションI.G.のトップ、そしてギャガ・コミュニケーションズの創設者で、現在日本のコンテンツを海外で展開する仕事をしている藤村哲哉さんも名を連ねています。この映画が成功したら、これから日本のアニメやコミックのハリウッド映画化が増えることでしょうね。

爺 ・・・あの、それってうれしいか?

先輩 もちろんですよ。なんか肩身が広くなるじゃないですか(笑)。

爺 わしはそうでもないんだがなあ。やっぱり日本のコンテンツは、日本人の手で映画にするのが一番良いと思うんじゃが。

先輩 日本のコンテンツに対する、客観的な評価と受け止めれば良いじゃないですか。そもそも海外で映画化されることによって、大きなマーケットに出られるわけだから、ビジネスとしてもメリットは大きいですよ。

爺 そうかなあ・・・。とりあえず、国内凱旋となる「ゴースト・イン・ザ・シェル」が、原産国の日本で、どういう評価をされてどれほどのヒットになるのか、注目してみよう。

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(文:斉藤守彦)

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    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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