意外!『ゴースト・イン・ザ・シェル』を吹替版で見るべき理由とは?

ゴースト・イン・ザ・シェル


(c)MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.



現在公開中の映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』は、士郎正宗の人気漫画「攻殻機動隊」を原作に、主演にスカーレット・ヨハンソン、共演にビートたけしを迎えて実写映像化した話題作だ。

実は、原作漫画はおろかアニメ版すら見たことが無い「攻殻機動隊」弱者の自分。過去に日本の漫画をハリウッドで実写化した、同傾向の作品群に対する失望感から、本作に対する事前の印象は非常に否定的なものだった。

「いや、そもそも主人公が日本人じゃ無くて外国人女優という時点で、もうダメに決まってる。」

そんな、ある種の先入観と偏見が頭の中に出来てしまって、勝手に『バイオハザード』的な内容とルックの映画だと思い、完全にスルーを決め込んでいたのだが・・・。どうやら既に見た人達の感想を読むと、日本語吹替版の評価が非常に高いらしい。

今回鑑賞した日の最終回が、たまたま吹替版での上映だったため、世間の評判の高さを確かめるべく、敢えて挑戦してみたのだが、さて、果たしてその結果はどうだったのか?

予告編


ストーリー


ネットに直接アクセスする電脳技術が発達すると共に、人々が自らの身体を義体化(=サイボーグ化)することを選ぶようになった近未来。かつて凄惨(せいさん)な事故に遭い、脳以外は全て義体化された少佐(スカーレット・ヨハンソン)率いるエリート捜査組織「公安9課」は、サイバー犯罪やテロ行為を取り締まるべく、日夜任務を遂行していた。

そんな中、ハンカ・ロボティックス社の推し進めるサイバー技術の破壊をもくろんだテロ組織による事件を解決すべく、少佐は同僚のバトーらと共に捜査にあたるが、事件を調べていくにつれ、自分の記憶が何者かによって操作されていたことに気付く。真の自分の記憶を取り戻していく中で、少佐は自身の驚くべき過去と向き合うことになるのだが・・・。


高評価の日本語吹替版!字幕版で無く、敢えて本作を吹替版で見るべき理由って?


冒頭でも触れた様に、まず誰もが感じるのが、外国人俳優が主要キャラクターを演じることへの違和感!

実は吹替版で鑑賞することにより、この重要な部分がかなり緩和されることが今回判った。

特に主役のスカーレット・ヨハンソンが、感情を表に出さないキャラのため、アニメと同じ日本語吹替声優陣の演技力が、そこを充分に補ってくれる今回の吹替版は、この違和感解消に実に効果的だと言えるだろう。加えて、英語のセリフを聞いて更に日本語に要約された字幕を読むという手間が省かれることで、観客がスクリーンに集中出来て、本作をより楽しむことが出来るようだ。

次に、実はビートたけしのセリフは今回全編日本語なのだが、吹替版でも彼のセリフだけは吹替でなく本人のままである。そのため、登場人物全員が英語でセリフを喋る中、一人だけ日本語を話す登場人物がいるという違和感も、当然消え去ることになる。この点も外国人俳優が日本の漫画のキャラを演じる違和感の解消に、大きく貢献していると感じた。

そして第三の要素。実はこの吹替え版をオススメする一番の重要な点がここだ。

物語の終盤、ある重要な役で登場するのが、日本人女優の桃井かおり。彼女は全編英語でセリフを話しているのだが、今回の吹替版では彼女のセリフは日本語に吹替えられている。もちろん、本人による日本語吹替では無いのだが、実はこの吹替声優の方の「桃井かおり再現力」がハンパ無く高いのだ!

清水ミチコや椿鬼奴の様なオーバーな物では無いが、語尾や喋り方などを桃井かおりチックに演じていて、ここだけ見ても今回の吹替版のクオリティの高さと、製作陣のこだわりが判って頂けるはずだ。

ゴースト・イン・ザ・シェル 少佐


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最後に


今回、原作やアニメと比較すること無く、純粋に映画単体として鑑賞した結果、予想外にかなり楽しめた本作。ただ、原作やアニメのファンの方からは、やはり厳しい辛口の意見も出ているようだ。

本作を見終わって感じたのは、過去に公開されたこの手の作品群とは明らかに違う、ということ。

特に感心したのが、予告編でも印象的に描かれている、水浸しの道路の上で光学迷彩スーツの素子が闘うシーン。力技でガンガン見せ場を撒き散らしていくような演出では無く、激しい追跡シーンの次にちゃんと静寂を挟んで、光学迷彩スーツでのアクションに繋げるという、静と動、押して引くという気配りが出来ている。

そのため、派手な画面やアクションは確かに登場するのだが、それらが続けば続くほど逆に観客は退屈するという、最近のハリウッド大作アクションが陥っていた悪循環からは見事に脱しており、原作やアニメに馴染みの無い一般の観客にも、充分にオススメ出来る作品となっている。

どうしても、『バイオハザード』や『トランスフォーマー』、『ミュータント・タートルズ』の様な感じの映画だと思って、スルーしようと考えている方も多いと思うが、本作は単に派手なSFアクションでは無く、実は人間ドラマの部分にも重きを置いている。

そう、例えば、『ロボコップ』+『CASSHERN 』+『君の名は。』とでも言えば、本作の内容に一番近いかも?

主人公を何故外国人女優が演じるのか?という最大の疑問点にも、実はちゃんと理由と説明が成されている本作。肯定派かそれとも否定派か。どちらにしても、まずはご自身の目で見て判断して頂きたいので、是非劇場に足を運んで頂ければと思う。

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(文:滝口アキラ)

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