『GONIN』ブルーレイで 『GONINサーガ』の予習復習を!

■「キネマニア共和国」

9月26日より、ヴァイオレンス映画の鬼才・石井隆監督の最新作『GONINサーガ』が劇場公開されますが、これはおよそ20年前に公開された『GONIN』(95)の続編にあたります。

というわけで、

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街 vol.23》

伝説的バイオレンス・アクション映画『GONIN』シリーズをおさらいしてみましょう!

キレたら止まらない男たちの
闘いの中から愛が浮かび上がる『GONIN』

GONIN ブルーレイ
『GONIN』は、それまで名美という名のヒロインによる愛と性と暴力の映画を撮り続けていた石井隆監督に対し、そのデビュー作『天使のはらわた 赤い眩暈』(88)や『ヌードの夜』(93)で主演を務めた石井映画の常連でもある竹中直人が「石井さんに男まみれの映画を撮ってほしい」と懇願したことをきっかけに企画されたものです。

借金まみれのディスコのオーナー(佐藤浩市)をはじめ美しき恐喝者(本木雅弘)、元刑事(根津甚八)、リストラされたサラリーマン(竹中直人)、元ボクサー(椎名桔平)の5人が永島敏行、鶴見辰吾らヤクザの隠し金を強奪し、その報復として組織の親玉(室田日出男)からビートたけしと木村一八の殺し屋が差し向けられ、血で血を洗う抗争が繰り広げられていくオールスター・キャスト大作として、当時大いに話題を集めました(竹中直人の娘役で、まだ子役だった栗山千明の姿も見られます)。

見どころはもちろん数々のハードなヴァイオレンス描写ではありますが、それを彩るスタイリッシュかつセクシャルな映像美や、その中に蠢く男たちの危険な香りや連帯から醸し出されていく“愛”としか言いようのない想いの描出など、石井映画の新機軸ともなった快作です。

当時、この作品を見て日本独自のアクション映画に魅了された映画ファンは数多く、松江哲明など後進の映画人にも多大な影響を与えました。

なお、ブルーレイには劇場公開109分版と、2007年ディレクターズカット(リアルエディション)121分版の二種類が収録されているのもファンには嬉しいところです。

名美を演じた名女優たちが一挙集結した
シリーズ第2作『GONIN2』

『GONIN』が好評だったことから、続いてキレたら止まらない女たちの闘いを描いた『GONIN2』(96)が製作されました。
GONIN2 ブルーレイ
強盗に押し入られた宝石店に居合わせた、それぞれワケありの5人の女たちが、いつのまにか宝石を奪って逃走し、そこに妻を自殺に追いやられた男(緒形拳)の復讐劇が交錯していく壮絶なヴァイオレンス劇です。

ここでは『死んでもいい』(93)の大竹しのぶ、『ヌードの夜』の余貴美子、『夜がまた来る』(94)の夏川結衣と、石井映画で名美という名の歴代ヒロインを演じた名女優たちが集結。
喜多嶋舞も後に『人が人を愛することのどうしようもなさ』(07)で名美を演じています(『GONIN』では『天使のはらわた 赤い閃光』94で名美を演じた川上麻衣子が出演)。
石井映画初出演の西山由海は、阪本順治監督の監督の異色作『トカレフ』(94)で注目された若手女優でした。
また強盗犯の一人を熱演した片岡礼子は、『黒の天使Vol.2』](99)でも主人公を超えるほどのインパクトある熱演を示しています。

私は『GONIN2』の撮影現場をお邪魔したことがありましたが、闇の描写に長けた石井監督の現場は夕方から準備が始まり、そこから粘りに粘るため、深夜を経て翌朝まで続くことが常で、この日もスタッフ&キャストの緊張の度がマックスではありました。

また、この日ですべての出番を終えた大竹しのぶ(何とセーラー服姿の娼婦役!)に対して石井監督が「また来てね」と言ったら、「え~、次は昼間がいいな」と笑顔で帰っていったことを鮮明に覚えています。

どんなに過酷な撮影であっても、監督と俳優の意気がどこかでかっちりと通じ合っていることを、まざまざと見せつけられた想いでした。

どうしても『GONIN』の影に隠れがちな作品ではありますが、こちらも愛してやまない秀作だと確信しております。

GONINの子どもたちが織りなす
最新作『GONINサーガ』

さて、シリーズ最新作『GONINサーガ』は、第1作『GONIN』の正当な続編となっています。
GONIN サーガ
およそ20年前の強奪事件の中、東出昌大(久松)は鶴見慎吾の、桐谷健太(大越)は永島敏行の子ども、安藤政信(式根)は室田日出男の孫と、強奪された側の子どもらが大人になり、忌まわしき血を呼び覚ましていくかのように、敵味方に分かれて熾烈な争いを繰り広げていきます。

特筆すべきは『GONIN』で死んだと思われていた元刑事の氷頭役で、病気のために俳優業を引退した根津甚八が、石井監督の懇願に答えて久々に映画出演を果たしていることで、やはり彼が画面に登場すると新たな若手GONINチームもまだまだメンコの数が足りないなと唸らされるほどのインパクトをもたらします。
また、竹中直人は前作とは別の非情な殺し屋役で出演していますが、さすがは石井映画の顔ともいえる存在感で、特に石井映画に必須ともいえる土砂降りの雨、その描出に彼が大きく関わっていきますので、お見逃しなきよう。
GONINサーガ
『GONINサーガ』は単体でも楽しめるかとは思いますが、やはり『GONIN』を見ておいたほうが確実に世界観や設定など理解しやすくなると思います。

かつて『GONIN』をご覧になっている方は復讐を、未見の方は予習として、ぜひ発売されたばかりのブルーレイをご覧になることをお勧めしておきます。

また関東在住の方に朗報!

9月19日から1週間限定で、角川シネマ新宿にて『GONIN』がリバイバル公開されます。
19日には19時半より石井監督と竹中直人、安藤政信のトークショーもありますので(映画の開映は20時予定。20日以降は20時半予定/料金・全席指定1100円)、お楽しみに。
お問い合わせは角川シネマ新宿(電話:03-5361-7878)まで。

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(文:増當竜也)

『GONINサーガ』は9月26日より全国ロードショー
公式サイト http://gonin-saga.jp/

(C)2015『GONIN サーガ』製作委員会


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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