イ・ビョンホンが天才音感少年の兄を激アツ感動好演『それだけが僕の世界』!

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俄然好調の韓国映画ですが、今やハリウッドにも進出して国際的な人気を獲得したイ・ビョンホンこそは、韓国映画界を代表する大スターと呼んでも異を唱える人は皆無でしょう。

ハードボイルドからアクション、ラブストーリー、コメディとあらゆるジャンルに対応し得る巧みな演技力や、何よりもどんな役にも自然に溶け込みながら作品の質を大いに高めてくれる存在感は、彼ならではのものです。

そんなイ・ビョンホンのヒューマニスティックな個性を好もしくも切なく醸し出す秀作が『それだけが僕の世界』であり、そのテーマは……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街352》

ずばり家族の絆なのでした!

断絶したはずの母との再会
初めて会った弟の才能

『それだけが僕の世界』でイ・ビョンホンが演じているのは、かつてWBCウェルター級東洋チャンピオンの座まで昇りつめながら、現在はチラシ配りで日々をしのぐネットカフェ難民と化している40歳過ぎの中年元ボクサー、ジョハです。

ある日、彼は17年ぶりに縁を切ったはずの母インスク(ユン・ヨジョン)と思いがけず再会し、一緒に暮らそうと頼まれ、“生きていくため”にやむなく母の家へ。

そこで彼は弟のジンテ(パク・ジョンミン)と、生まれて初めて出会いました。

サヴァン症候群で何を言っても無邪気な返事をするばかりのジンテにジョハは苛立ちを隠せず、ジンテもまた荒っぽい兄に恐怖心を抱きます。

しかし、ジンテは一度聴いた音をすぐにピアノで演奏できるという、天才的な音感とピアノの才能を持っていました(ついでにTVゲームの腕前も神クラス!)。

そんな中、ジョハは以前自分を夜道で轢き、彼を“当たり屋”と勘違いした車の主ハン・ガユル(ハン・ジミン)とばったり出くわします。

実は彼女、ジンテも大ファンの天才若手ピアニストでしたが、ジョハとの諍いの後で今度は自分が車に轢かれて右足を失い、今は表舞台から遠ざかっていたのでした。

やがてジョハはジンテをガユルに引き合わせるのですが……。

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人肌よりもちょっと高めの
韓国映画ならではの感動作

かつての栄光から一転して人生の落後者と化して久しい男が、母との確執や純粋すぎる弟との出会いと連帯などを通して、少しずつ家族の絆を取り戻し、クライマックスは画と音の融合によるエモーショナルの洪水で観る者すべてを感涙させてくれる、まさに韓国映画ならではのスペクタクル級激アツ感動ドラマ、それが『それだけが僕の世界』です。

ジンテに扮するパク・ジョンミンのナチュラルな演技力もさながら、天才的音感の持ち主で携帯ゲームを傍らにどんな難しい高度なピアノ曲を吹替なしで弾きこなす演奏シーンなどの見事さは、もうじかにその目で確かめてみてくださいとしか言いようのない、まさに稀代の天才を目の当たりにしているような驚愕的感動がもたらされていきます(何でも撮影の3か月前からピアノの猛特訓をしての成果!)。

母親役のユン・ヨジョンは、韓国の映画やドラマに少しでも接したことのある方なら絶対に顔は知っているであろう大ベテラン。ここでは不器用ながらも息子たちに健気に愛を注ごうと腐心し続ける母を好演しています。

今回のイ・ビョンホンは自分のスター性のオーラを消しながら、天才肌のパク・ジョンミンと大ベテランのユン・ヨジョンの魅力を引き立たせつつ、結果として一度は堕ちた男の人生の再生を巧みに体現しています。

とにもかくにのこの3人のコンビネーションの見事さ(加えてガユル役ハン・ジミンの美しさ!)が映画的な情緒とリズムを呼び込んでいく面白さ!

本作は『王の涙 イ・サンの決断』の脚本で注目されたチェ・ソンヒョンの第1回監督作品ですが、奇を衒わないオーソドックスな演出の中から時に軽やかで時に辛辣、そして常に人肌よりちょっと高めの温かさで兄と弟、子と母の関係性を描出し得ています。

最初はほっこりと、次第に怒涛のような感動をもたらすヒューマン映画。年末年始の慌ただしい時期だからこそ、ふと心に優しいゆとりを与えてくれる秀作として、ぜひとも観ていただければ幸いです!

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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