うまくまとめられたテレビシリーズの総集編映画 『ラストエグザイル 銀翼のファム Over The Wishes』

■「キネマニア共和国」

テレビ・アニメーション・シリーズを劇場用映画にまとめてお届けする作品は昔も今も多数ありますが、やはりどこをどう取捨選択するかで勝敗は決まるもの……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.107》

『ラストエグザイル 銀翼のファム Over The Wishes』も、実にうまく構成された総集編映画でした!

ラストエグザイル 銀翼のファム Over The Wishes

(C)2016 GONZO/ファムパートナーズ

スモーキーで魅惑的な画と
ベストキャストで贈るバトル・ファンタジー

そもそも『LAST EXIL』とは2003年に製作された全26話のテレビ・アニメーション・シリーズですが、2011年にはその後の世界を描いた『LAST EXILE 銀翼のファム』全21話が製作されました。

この『銀翼のファム』、続編とはいえ前作を見てなくても単体で十分に楽しめる造りとなっていて、大災害から再生した母星を舞台に、地表に留まり生き延びた民族と、移民船で母星に帰還してきた民族との争いを背景に、どの国家にも属さない空賊のファムと、帰還民族国家の第2王女ミリアとの友情を軸に描いたバトル・ファンタジーです。

村田連爾による丸みを帯びた愛らしいキャラクターデザインと、小林誠のプロダクションデザインの融合は、どこか懐かしくもスモーキーで魅力的な画を構築し、『けいおん!』などの豊崎愛生をはじめとする声優陣のピタリはまったキャスティングも妙味な作品です。

そんな中で今回、およそ2時間にまとめられた『LAST EXIL 銀翼のファム――Over The Wishes』は、ヒロインのファムではなく第2王女ミリアの目線から、国家間の争いに翻弄されながらも少女たちが成長していく姿に焦点を絞って構成されています。

平和を願う勢力同士の
力を用いた争いの矛盾

テレビシリーズは時間軸が錯綜していたのに対し、映画のほうは時系列通りに構成することでわかりやすくし、またファムが自分の年齢と同じ15隻の船を奪取する“鯨捕り”のエピソードは、テレビシリーズ主題歌に乗せたクリップ風の処理で一気にまとめあげています。

新たに追加&手直しされたシーンも多く、そのためテレビシリーズの画と若干差が出てしまった箇所もありますが、そもそも『銀翼のファム』はテレビシリーズ開始の際、映画館で3話ほどイベント上映されたほどにクオリティの高い画の構築がなされていましたので、さほど気になることもないでしょう。

(とはいえ、テレビシリーズから3、4年の月日でこうも躍進するものかと嘆息するほどに、アニメーション技術は日進月歩の進化を遂げているのもわかります)

本作は最終的に、力をもって平和を成し遂げようとするする勢力に対して、力をもってそれを駆逐しようとする勢力との攻防戦へと集約されていきます。
実は平和を願うがためのお互いの闘いといった図式から、いったいどんな建設的な解決が望めるのか、テレビシリーズを見ていた際は、正直そこに疑問も残らないではなかったのですが、映画版ではそんなクライマックスも、敵側ながらも話し合いでの平和を望み続けていた幼き女王サーラをファムたちが救出に赴くといった方向性での編集がなされているのは、今のきな臭いご時世の中で見識と思いました。

いずれにしましても、こういった総集編映画は大元のテレビシリーズを見ていたファンから「あのシーンがない」といった不満が出てくるのはやむをえないところですが、それでもよくぞここまでうまくまとめたものだと、そちらをこそ褒めたたえたい気分ですが、それ以上に、今度は元祖『LAST EXIL』の劇場版と、今回の更なる続編なども見てみたくなってきました。

そう思わせてくれただけでも、本作は十分成功していると思います。

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(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou

    鹿児島県出身。映画文筆。

    朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。

    取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。

    編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊)

    その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。

    ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊)
    現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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