愛と感動と怪獣の映画!?『ラブ&ピース』園子温監督トークショー

■「キネマニア共和国」

10月23日夜、新宿ピカデリーにて第28回東京国際映画祭・Japan Now部門『ラブ&ピース』の上映と園子温監督によるトークショーが開催された(司会:安藤紘平)。
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『ラブ&ピース』は、今年『新宿スワン』『リアル鬼ごっこ』『劇場版!みんなエスパーだよ!』と新作を連打する園子温監督が、25年来温めていた企画の映画化。
うだつのあがらないサラリーマンとミドリガメ・ピカドンの出会いが、やがて奇跡をもたらす愛と感動と怪獣の映画である⁉

「これは2014年の頭には出来上がっていた映画で、本当はクリスマスに見てほしい映画だったんですけど、クリスマス前に公開すると失敗するという興行のジンクスによって、今年の公開になっちゃったんですよ(笑)。
ですから『TOKYO TRIBE』の後にこれを撮り、その後で『新宿スワン』を撮ったんです」

27~28歳の頃に書いたシナリオが、宿願実っての映画化。そのせいか、どこかしら懐かしい感覚が漂う一方、現代に訴る内容にもなり得ている。
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「台本を書いてから、その後同じような感じの映画が作られたりしていたので、もう無理かなと思った時期もありましたが、あの時代はみんなバブルに浮かれてた一方、東京のゴミを集積した一帯を“夢の島”と呼んでいた。そして今、夢の島はなくなってしまいましたが、3・11や戦後の諸問題などいろいろあることをどこかに置いといて、みんな東京オリンピックに浮かれようとしている。そのあたりで、台本を手直ししました。
“ピカドン”という言葉も、今の若い世代100人に意味を聞いたら、みんな知らなかった。これには僕もびっくりしましたけどね。ただし、タイミングとして今の時代に合っているからどうこうではなく、この映画に関していえば25年前からいつでも作れるし、作りたい作品でした」

ちなみに25年前に書いたシナリオのストックは、まもなく公開される『ひそひそ星』をもって終了とのこと。
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特撮でCGを避けた理由は?

「今回はグリーンバック合成みたいなところはともかく、最初からCGは極力使わないようにしたいと思っていました。実はプロデューサーが円谷プロの方でしたので、特撮に力を入れていただけたんですけど、こういった昔ながらの堂々たる特撮って、この映画あたりが最後になるかもしれませんね」

福島弁をしゃべるサンタクロース役の西田敏行も異彩を放っていてユニークであった。
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「福島県出身の西田さんは、僕の原発告発映画『希望の国』(12)を見てくださっていて、“ありがとう”の意味も込めて絶対僕の映画に出たいと言ってもらえたんです」

観客からの質問コーナーでは、本作を含めて園作品は以前に比べてマイルドになってきているのでは? という指摘に対して、監督の明快な回答が。

「同じことを僕はやりたくないんだ。つまり園印みたいに、『彼だったらこういうことやるよね』みたいなものにいつも反発していたいと思っているし、みんなが望んでいる園映画からどんどんかけ離れていくのが自分らしいと。だからマイルドになっているのではなく、違うことをやっているだけのことなんですよ。
まもなく公開される『ひそひそ星』も、これがまたみんな『園子温、どこ行っちゃったんだ?』と思われるようなものになっていまして(笑)、マイルドどころじゃなくて異次元に行っちゃったような映画になっています」
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亀の名演に関しての質問に対しては?

「亀はいっぱい候補者を見つけてきてオーディションし、一番演技力のある“人”を選びました(笑)。ただ芝居は得意だけど動きが遅かったりしたので、人生ゲームの上を走るシーンではスタントマンを使っています。最終的には現場に5匹常備していまして、撮影後はそれぞれスタッフに引き取ってもらい、今はかなり大きくなっています。その中で一番演技力のあった子は、『ひそひそ星』にも出演していて、もう園組の常連です(笑)」

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(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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