『お嬢さん』パク・チャヌク監督インタビュー、韓国では観客の8割が女性!LGBTからも大絶賛なガールズムービー

日本でも『オールド・ボーイ』などで知られるパク・チャヌク監督。最新作『お嬢さん』は世界中で賞賛され、外国語映画賞を席巻しています。そんな監督が同作のプロモーションで来日しました。シネマズでは来日中の監督にインタビューを行いました。

── 今回の作品の女優陣の熱演は強烈でした。女優陣から情熱を引き出す秘訣はあるのでしょうか。

チャヌク 脚本を一行ずつ一緒に読んでいきました。二人だけでなく、全員のセリフとト書きまで読んでいきました。読みながら、私としてはなぜこういう風に書いたのか説明していきました。

あとは二人きりの読み合わせをしてもらい、私と二人の三人での読み合わせ、男の俳優さんも含めた読み合わせを行いました。

たくさんの読み合わせの時間を持つことで、一方的に脚本を渡して読ませるだけでなく、彼女たちの意見を言ってくれるようになり、私もその意見を脚本に反映して直したりしたため、彼女たちも自発的に参加しているという気分になったのだと思います。

── 映画を見た観客で男女の反応に違いはありますか。アメリカのレズビアンサイトで大絶賛されていましたが、女性の視点を意識しましたか。

チャヌク 今回の映画に出てくる二人の男性は所謂「できそこない」で、哀れな男、みみっちい男たちです。だから男性の観客で心の狭い人は居心地が悪かったみたいです。

女性の観客が中心で、男性は彼女に連れてこられたという人が多かったようですね。

日本の状況は分からないのですが、韓国で映画を公開すると舞台あいさつで全国を回ります。だいたい8割が女の観客でした。女性のファン層ができて、雑誌に特集になったりするくらいでした。また一人で映画館で110回見たという人もいました。

ただ女性の観客のなかで、無条件に映画が好きという人もいれば、映画は良かったけど男性二人が出すぎているという意見も聞きました。

私としては4人が主人公として作った映画。こういう意見の人は原作ファンの方が多いようです。原作では男の出番は少ないため、私が映画のために育てたようなキャラクターで、その二人が多くでてることに不満がでたようです。でも映画は原作通りに作らなければいけないルールはないので、私はあくまで4人を主人公にしました。だからこういう批判を聞くと残酷な批判だなと感じました。

また男性の視点で撮ったのではないかという批判もありました。その批判をした人というのはシーンの分析をしてこうだから、構成がこうだから、アングルがこうだからと分析をして男性視点といったわけではなく、監督が男性だからということと、エロティックなシーンが多く肌の露出が多いからという意見でした。でもそういう批判は受け入れがたいなと思っています。

また朗読会のシーンはキム・ミニ演じる秀子が男の視線に晒されています。ある意味視線の暴力とも言えます。そして男性の視線の暴力にさらされている女性を赤裸々に見せるというシーンでもあります。このシーンで私が意図したのは、男性視線の暴力からの解放であり、脱出です。それを讃える映画を作りたいと思っていたので、女性の濡れ場やベッドシーンを男性が覗くような男性視線で作る気はありません。そういうシーンを作るときは気を使いながら、最大限気をつけながら作っています。

── 原作を映画化する上で気をつ付けた部分やアレンジした部分はありますか。

チャヌク まずは二部を読んだときに、一部で見たことをなぞるけど、別の観点から見ることになり、真相を知り事件の全体を知ることになります。こういう構造は興味深いし教訓を与えてくれることだと思いました。物事は一方的な視点では全体像がわからないので違う角度から見るということは、映画の中でもやらなければいけないと思いました。

もう一つ、ベッドシーンのところで一人が「男性はどういうことを望んでいるの?」と聞き、もう一人が「こういうことを望んでいますよ」と教える形式も生かしたいと思いました。あそこは二人は愛を感じてはいるし、愛を感じる行為ではあるけど演技をしていて騙し合っているのでは?というような状況を映画にも持ち込みたかったです。

それからスッキがお嬢さんの歯を研いで上げている時に歯が当たって口が切れるシーン、絵としていいものになりそうだったので、映画では極大化して見せたいと思った。なので、原作ではお風呂ではなかったけど、映画ではお風呂にした。

原作者の方がおっしゃってたのですが、子供の頃に体験していることに根ざしたシーンで、おばあちゃんがあんな風にしてくれた記憶があるのですが、映画ではあんなエロチックなシーンになるとは思わなかったとおっしゃっていました。

── 『イノセントガーデン』をアメリカで撮られました。今回舞台を朝鮮半島と日本に舞台を変えた理由はありますか。イギリスでも撮ろうと思えば撮れたのではないでしょうか。

チャヌク 実はBBCのドラマで作られたものがありました。私が違う脚本を書いても似てしまうのではないかと思い設定を変えました。

そうすることで原作にはないもう一つの意味のある壁ができました。もともとは階級の差というのが二人にはありましたが、そこに国籍の壁というのができました。しかもただの国籍の差ではなく、敵対し合う二国間の壁ができ物語として豊かになったと思います。

さらに、いまの出来上がったお嬢さんを見ますと、韓国式の韓服を召使が着ていますし、日本とヨーロッパの要素を織り交ぜた空間も出てきます。そういうところでも豊かになっていたと思います。

── キム・テリさんが無名からスターになったと言われていますが、彼女を起用した決めては何だったのでしょうか。

チャヌク キム・テリは『お嬢さん』が成功したあとに、以前に撮られた中編の映画が公開されることになりました。私はその映画を見ていませんが、演劇を長くやっていたということは知っていました。オーディションに来てくれまして、良かった点が若い新人女優にも関わらず私の前に立っても気後れすることがなく、自分が言いたいことや考えをはっきり話せる人で、緊張もせずオーディションを受けてくれました。

またオーディション中、短いシーンをやってもらいましたが、皆さんはそれぞれ解釈して演じてくれるのですが、解釈が似ていて、同じような解釈で演じてくれました。しかし彼女だけはまったく違う解釈で演じてくれました。いいか悪いかは別として、彼女なりの考えを持っているんだなということが分かり、そこを評価しました。

── ハ・ジョンウさんの設定で、母親がムダンであるのが面白かったです。そのような設定にした理由は?

チャヌク この伯爵のストーリーだけで一つのパートを構成しようと思ったくらい、興味深い背景を持った役と思いました。まずチェジュ島(済州島)出身にしたのは日本から移った人が多かったというのもありますし、彼は下層民という設定にしたのですが、ムダンは人は勝手なもので困ったことや相談事があるとムダンのところに行くのに、蔑視しているというところがあります。

彼は蔑視されて、さげすまされて生きてきたが、頭はよく器用で絵も上手い少年でした。蔑まれて生きてきて、このままではやっていられないと思い、祖国を捨て日本に渡ります。日本の娼婦の街で客引きしているという設定で、素手で拳一つでやっていこうとした悪い人でもある。

私が捉えた彼の人間像は、街中で誤っておかしなことを学んだ人で、女性に対する見方が捻くれていて、彼のセリフで「女は無理矢理の関係で快楽を感じる」というのもあり、骨の髄まで悪党というよりはしっかりした教育を受けられなかった、誤った教育を受けた哀れな人物と思いました。

── 二人の女優さんの印象を教えてください。

チャヌク キム・ミニさんは猫のような印象です。私の住んで居る街にも野良猫がいて観察しています、家にも飼い猫がいます。野良猫というのが優雅で白く長い毛を持っていて、それを思い出しました。
キム・テリさんは可愛い子犬という感じでした。

同作は、スラム街で育ったスッキは、伯爵と呼ばれる詐欺師と共謀し、日本の貴族と財産目当てで結婚し、結婚後に精神病院に送りこもうと企むが……。お嬢様とメイド、詐欺師と貴族の騙し合いを描いたエロティックミステリー。

(取材・文:波江智)

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