価値観が試される!お金と幸せを描く『億男』

(C)2018映画「億男」製作委員会 

佐藤健さん、高橋一生さんらが出演し、現在劇場上映中の映画『億男』。映画プロデューサーである川村元気さんの同名小説を原作に、「るろうに剣心」シリーズや『3月のライオン』(2017)など人気作品を数多く手がけている大友啓史さんが監督をつとめました。

今回は映画『億男』に出演したキャストの魅力を中心に、本作をご紹介します。

『億男』あらすじ

兄が3000万円の借金を残して失踪して以来、その保証人である弟・一男(佐藤健)は、昼間は図書館司書として、夜はパン工場で働き詰めの毎日を送っています。

一男には妻子がいますが、別居中。娘のまどかと久しぶりに会った日、地元の抽選で当たった宝くじに、当たりが入っていました。当選金額なんと3億円。このお金で借金を返し、家族の関係も元どおりだと喜んでいた一男でしたが・・・。

起業して億万長者になった大学時代の親友・九十九(つくも/高橋一生)にお金の正しい使い方を教えてほしいと頼んだところ、九十九は突然、3億円とともに行方をくらまします。

お金を得て、失って、見えてきたのは・・・?

個性派キャストが個性的キャラクターを熱演!

一男:佐藤健

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川村元気さんの原作「世界から猫が消えたなら」でも主演を演じた佐藤健さん。再タッグとなりました。

佐藤さんといえば、朝ドラ「半分、青い。」と7月期の連続ドラマ「義母と娘のブルース」の出演が重なっていたことが記憶に新しいです。『億男』の一男は、「義母」で演じたハツラツとしていて開放的な麦田に比べると、「半分、青い。」の律に近い印象を受けます。

とくに一男は、大学を出て就職し、妻子もいるけれどこれといって特徴のない男性です。

兄の3000万円の借金を背負って、その返済のために働きづめの日々を送っています。そんなある日、突然に宝くじで3億円が当たったら、たしかに一男のように舞い上がってしまうかもという納得の行動を自然に体現していました。

高橋一生さん演じる九十九と合わせて”百”になる、本作におけるツートップのひとりです。

九十九(つくも):高橋一生

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あまりに普通だった一男に比べて、特徴を見せたのが九十九でした。

普段は言葉が円滑に話せない吃音症を持ちながらも、古典落語の「芝浜」を流暢に語り、大学時代は一男とともに落語研究会に入っていました。一部ではありましたが、一生さんが落語をしている場面も。語り口、抑揚のつけ方、表情など、プロが見ると難点はあるのかもしれませんが、筆者のような素人目には見事でした。落語の場面だけでも十分満足した観客も多いように思います。

大学時代、一男とともにモロッコへ旅行した九十九は、そこで「大学を辞めて起業をする」と宣言します。モロッコの旅行中には、九十九のお金に対する価値観が表れている部分があり、映画においても重要な場面です。何より、異国の風景や人、砂漠の圧巻の風景は一見の価値があります。

そして、起業をして億万長者になってからの九十九のビジュアル(とくに目にかかった長い前髪)、九十九自身がお金に翻弄されたことで、他人に怯えたような目を向けるお芝居も素晴らしかったです。一生さんが九十九を演じている、なりきっているというよりは、九十九が一生さんに棲み着いた印象を受けました。

「バイカム」の人たち

誰よりも個性を発揮したのが、九十九とともにフリマアプリを運営する会社「バイカム」を立ち上げた人たちです。「ミリオネアニューワールド」という胡散臭いセミナーの教祖でもある千住を演じた藤原竜也さん。「バイカル」で働いていた若かりし時代と現在では、目を疑うような絶妙な体型の変化もあってくすっと笑えます。

(C)2018映画「億男」製作委員会 

そして、「バイカム」の技術責任者であった百瀬は、演じたのが北村一輝さんだったのか!! と驚かされるほど「誰?」という見事な変わりっぷり。とはいえ、こういう人いるよなと思わせてくれる話し方、立ち居振る舞い、大胆な言動などは北村一輝さんさすがでした。

(C)2018映画「億男」製作委員会 

「バイカム」の広報で、九十九の秘書だった十和子は、現在、専業主婦として質素な暮らしをしています。演じた沢尻エリカさんの美貌をいかした変化も見どころです。一見つつましい部屋のふすまや畳、押入れからバサバサと10億円があふれてくる場面は、沢尻さんご自身もとても楽しそうで痛快でした。

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若干疑問が残る点も

解せなかったのは、原作小説と映画で、兄と弟が入れ替わっていること。原作では「弟が、妻とふたりの子どもを残して突然消えたのは二年前の大晦日だった。(略)弟には三千万円の借金まであった。」(文庫版 p.15)と<一男=兄>であるのに対し、映画では、「失踪した兄の借金を返済するため」(映画公式HPより)、<一男=弟>となっています。

三千万円の借金をした、映画でいう兄に関するエピソードはほとんど出てこなかったので、ストーリー上の不都合はなかったのかもしれませんが、原作を知らないまま映画を観ると、弟なのに”一男”なのか? という違和感を持ったままストーリーが進んでくことになります。

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また、一男の妻・万左子(黒木華)や娘についても多くは語られません。一男が司書として勤務する図書館で出会い、距離を縮めていったこと、娘・まどかのバレエの発表会が年に1度の楽しみだということは描かれましたが、お金に奔走させられる一男を見て、万左子が「あなたは欲を失ってしまった」というほど、一男は素直な欲や願望の持ち主で、それに従って生きていたのでしょうか。

原作者の川村元気さんが「(川村さんが書く小説の)主人公は”世間”」と話しているだけに、一男自身のキャラクターや人格が曖昧で見えづらかった点には疑問が残りました。家族や九十九と関連させることで語られていた一男をもう少し知りたかったと思います。

『億男』は観る人の価値観によって印象が変わる

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三億円という大金を宝くじの当選によって手に入れ、親友に奪われる形で一度手放し、あっさりと一男の手元にそのまま戻ってくる簡素な展開に、釈然としない気持ちを抱いた人も多いかもしれません。

そこで、原作である小説(文庫版)に高橋一生さんが解説を寄せていますので、その一部を引用したいと思います。

「ここから先は、本を読了してから読み進めてほしい。」としたうえで、「小説のラストで一と九十九は電車で別れ、百になることを選ばなかった。完璧になることを手離すのだ。三億を巡る旅を経て、生々しい現実に立ち戻っていく。もうしかすると、知ることは、知っていたことに気付くことで、旅をするのは、辿り辿って旅の最初に立ち戻ることかもしれないと思うのだ。」(p.242 一部省略)

これが、本作の違和感に対する答えになるかどうかはわかりませんし、観る人の価値観や考えによって印象が変わる作品だと思いますが、いずれにしても大金の行方にばかり気を取られ、三億円を軸に解釈しようとしていた私、すでにお金に囚われている気がしてドキッとしました。

現在、『億男』は劇場にて上映中です。

<書籍情報>

億男 (文春文庫)

川村元気(2018 文庫版)『億男』文藝春秋

※今回の引用はすべて文庫版より

(文:kamito努)

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