『パディントン』1作目、週末はモフモフ紳士クマに癒される!

滝口アキラの「週末こそ動物映画で癒されたい!」 第2回『パディントン』

(C)2014 STUDIOCANAL S.A. TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S Paddington Bear™, Paddington™ AND PB™ are trademarks of Paddington and Company Limited

会社や子育て、学校などで毎日忙しい中、やっと迎えた週末!そんな貴方の疲れた心と体を癒してくれる、様々な動物たちが登場する映画を毎回1本取り上げて紹介するこの連載。
第2回目で取り上げるのは、喋るクマを主人公にした人気シリーズ『パディントン』、その記念すべき1作目です。
現在、続編の『パディントン2』が絶賛公開中ですが、人気の秘密は何と言っても主役のパディントンの可愛らしさ!
CGと判っていても、その毛並みのモフモフ感は実にリアル!しかも常に敬語で誠実、紳士的な態度を忘れないクマが主人公となれば、これはもうどれだけ癒してくれるか?期待出来るというものです。

ストーリー

ある日、大都会ロンドンのパディントン駅に、真っ赤な帽子がトレードマークの小さなクマが降り立つ。南米ペルーの奥深いジャングルから、長旅の末ようやくイギリスまでたどり着いた彼は、右も左もわからない状態だった。思い切って丁重な態度で通行人に語りかけるものの、言葉を話すクマに反応してくれる人はおらず……。

予告編

実は可愛いクマだけじゃ無く、
意外に大人向けの深い内容なのです。

その昔、人間の冒険家と出会い言葉と文化を教わったパストゥーゾ叔父さんとルーシー叔母さんの影響で、何故か人の言葉を話せる子グマのパディントン。彼が都会に出てきて巻き起こす騒動を描く本作は、イギリスの作家マイケル・ボンドの児童文学「くまのパディントン」を映画化した物。

その外見とは違い、常に親切で紳士的な物腰のパディントン。彼と直接触れ合った人々は、皆パディントンの人柄?と誠実さを認めて、彼に好意を持つ様になります。

そんなパディントンの内面に最初に気付いたのは、後に彼を家族として迎えるブラウン一家の母親、メアリーでした。
家族からは変わり者と思われているメアリーの優しさと、誰にでも偏見無く接する態度のおかげで、ブラウン家に招かれることになったパディントン。そう、実は人間には発音出来ない名前だった彼に、「パディントン」の名前を付けたのも彼女なのです。もしも彼女が通りかからなかったら、パディントンは今でも駅のホームで途方にくれていたかも・・・。

実はこの駅でのシーン、作者のマイケル・ボンドが子供時代に実際に体験した思い出を元にして書かれたとされています。映画の中でも語られている様に、第二次世界大戦中のイギリスでは、ロンドンから地方に疎開してきた子供たちが、自分の名前が書かれた名札を首からぶら下げて、疎開先や受け入れ先の家族を探していたのでした。
この様に、原作に含まれた暗い戦争の爪痕もちゃんと描いている本作ですが、子供たちへの将来の指標となるメッセージも多く、大人が見ても参考になる箇所が非常に多いのに気付かされます。

そう実はこの映画、偏見や差別の無い公平な目、そして他人への思いやりが大事だと、教えてくれるのです!

「親切な人間に世の中は優しい」とは、続編『パディントン2』の中に何度も登場するセリフですが、これは正に名言!

そう、言わば他人は自分を映す鏡、人に愛されたいと思ったら、まず他人を愛すること。
何だか、実は我々大人の方が映画の中のパディントンに学ぶことが多そうな気がしますね。

パディントン ブラウン一家

(C)2014 STUDIOCANAL S.A. TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S Paddington Bear™, Paddington™ AND PB™ are trademarks of Paddington and Company Limited

最後に

一見すると、子供向けのファンタジーに思われがちな本作ですが、前述した様に実は非常に重く現実的な問題を描いています。

映画の冒頭でいきなりパストゥーゾ叔父さんが亡くなるという展開も衝撃ですが、実は本作で描かれるのは、イギリスにおける移民問題や、言葉の違いや宗教・文化の違いによる差別や偏見と、それを乗り越えていかに移民たちが見知らぬ土地で受け入れられるために苦労したか?に他なりません。

それはエンディング曲の歌詞にもよく現れているのですが、実際に映画の中でもこうした移民の歴史を暗喩した描写が登場します。
例えば、パディントンが人々に認められ地域社会に受け入れられるきっかけになる、スリを追跡して捕まえるまでの大アクションシーンがそれです。その時、何故かパディントンは警察官の帽子を被っていたので、警察の応援を得て無事に犯人逮捕!となるのですが、実はこのシーンにも移民の苦労と辛い歴史が隠されています。そう、アメリカの警官にはアイルランドからの移民が多かったと言う歴史を踏まえて観ると、実はこのシーンにも重要な意味があると解るのです。

実は、アメリカに渡ったアイルランド移民は異教徒だったため、就ける仕事も限られているなど非常に強い差別や偏見に晒されました。そのため、危険な仕事である警官や消防士の職に就くことで、地域社会に自身を認めてもらうしか道が無かったのです。

これを踏まえて映画を観ると、パディントンが警官の扮装でスリを捕まえるという危険を犯したことで、地域の人々に温かく迎えられると言うこの描写が、決して単なるほのぼのとしたシーンだけでは無いことがお分かりになると思います。

もちろん、純真で疑うことを知らないパディントンとの触れ合いを通して、明るく楽しい人物へと変わって行くブラウン家の人々の姿にも癒されるのですが、パディントンの可愛いキャラクターを通してこの様なデリケートな問題を描くことで、一般の人々や更には子供たちにもより興味を持って受け入れられやすくしている点は実に見事!

実は日本公開当時の評価も、「子供向けの作品と思って身に行ったら、予想外に深い内容で驚いた」との声が多かったのですが、確かに子供向けのほのぼの路線かと思わせて、突然『ミッション・インポッシブル』のパロディが飛び出すなど、アクションシーンも中々見ごたえがある本作。巧妙に散りばめられた伏線の回収も見事に決まって、充分に大人の観客にも楽しめる内容となっています。

「人は第一印象で他人を判断する」とは、本作の中のセリフの一つですが、人種や宗教・文化の違いによる「偏見の壁」を壊すには、まず自身の中にある「心の壁」を取り払うこと!人生に必要なのは他人への思いやり、そして好奇心や興味に素直に従って行動に移すこと!

そんな生き方の基本を我々に教えてくれる映画こそ、この『パディントン』なのです。

週末のお楽しみはもちろん、続編「パディントン2」鑑賞前の予習も兼ねて是非!

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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