ロマンスカーから飛び出した 大島優子主演の映画『ロマンス』

■「キネマニア共和国」

少し前の話ですが、AKB48がまだブレイクする前、初期メンバーが多数出演したホラー映画『伝染歌』(07)の原田眞人監督が、実質的主演となる大島優子の俳優としての資質を当時大絶賛していたのを鮮明に記憶しています。
それから幾年も経ち、昨年の『紙の月』のいまどきOL役で彼女は大きく注目され、助演女優賞も多く受賞しました。
というわけで、

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.13》

そんな大島優子の最新主演映画『ロマンス』をご紹介!(今度の彼女もばっちりです!)
本ビジュアル

アテンダントと映画プロデューサーの小さな旅

映画『ロマンス』は、新宿・箱根間を往復する特急ロマンスカーの中から始まります。
『ロマンス』メイン
大島優子が扮する鉢子は、ロマンスカーのアテンダント(いわゆるお弁当にお茶といった、車内の移動販売員さんです)。成績は優秀で、営業スマイルも完璧に、日々の仕事をこなしています。
そんなある日、彼女は万引きしようとした中年男を捕まえ、駅員に引き渡そうと車外に連れ出してあれこれしていたところ、ロマンスカーが発車してしまい、ふたりともホームに取り残されてしまいました。

中年男の正体は映画プロデューサー桜庭。たまたま彼に母親からの手紙を読まれてしまった鉢子は、彼と一緒に久しく会っていない母を探すべく駅を出て、箱根の景勝地を訪ね歩くことに……。

ロマンスカーがもたらす、たった1日の小さな旅は、ロマンスたりえるのか?

そんな興味を抱かせながら、親子ほど違う女と男の不思議な道行は、どこかとぼけた味わいで、営業スマイルを解いて素に戻りイライラし通しの鉢子と、映画プロデューサーがどういう人種であるかを知っている映画業界関係者ならば「あ、いるいる、こんな人」と思わず頷いてしまう桜庭のリアリティ! 演じる大倉孝二の、どこまでがホントでどこまでウソかわからなくなるほどの二枚舌三枚舌ぶりも、とってもあるあるなのです。

今後を見守っていきたい女優と監督

このふたりがこの後どういう道のりをたどるのかは見てのお楽しみとして、それを見守り続ける観客は、いつしかほっこりした気分になり、最近いやなことばかりでウンザリしている人でも「ま、そろそろいいことあるかもね」といった、少しだけ前向きな気分にさせてくれる、そんな映画です。

監督はタナダユキ。これまでに『モル』(01)『百万円と苦虫女』(08)『ふがいない僕は空を見た』(12)『四十九日のレシピ』(13)など、若い女性特有のいじましさや情けなさなどを、常にささやかながらも温かな目線で綴ることに長けた監督で、今回も大島優子のこれまで見たことのない表情を等身大に、そして魅力的に捉えています。

実は幸薄い少女時代を過ごした鉢子の、どこか冷めた人生観を大島優子はさりげなくも巧みに体現。なかなか他人に甘えることができなくなって久しい若い女性の気丈さと、それゆえの切なさが、見る者に心地よく伝わってくる好演です。

決して大きな作品ではありませんが、『紙の月』での好評価の後で、こういった映画的な味わいに満ちた小品佳作を選んだ大島優子の姿もなかなかのもの。また、こういった作品こそがヒットすることで日本映画界の活性化につながると信じている身としては、大いに歓迎なのです。

主演女優も監督も、いちファンとして今後を見守っていきたいものです。

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(文:増當竜也)
映画『ロマンス』は、2015年8月29日(金)公開
公式サイト http://movie-romance.com/

(C)2015 東映ビデオ


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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