エライザのいいところは“3つのアレ”ー『ルームロンダリング』池田エライザ×片桐監督対談

2018年7月7日(土)公開の映画『ルームロンダリング』。今作は、事故物件に住んでその履歴を帳消しすることを生業とする内向的な少女・八雲御子と、事故物件に居座る幽霊たちとの関わりを通して、彼女が自身の人生に向き合っていく姿を描いた作品。

崔洋一監督、廣木隆一監督らの元で助監督を務めてきた片桐健滋さんのオリジナル企画で、長編映画監督デビュー作となっています。

そこで、御子を演じる主演の池田エライザさんと片桐監督に対談形式でお話を伺いました。

──片桐監督は、世間のイメージにある池田さんと本人のギャップが面白いんじゃないかと思ってオファーされたそうですね。

片桐健滋監督(以下、監督):廣木監督から、池田さんは世間のイメージとは違って実は暗いとか、雑誌で書評を書いているというような話を聞いていたのですが、実際にお会いしてみて僕が想像していた池田さん像と変わらなかったので、最初から安心感がありました。会う前から、勝手にそうに違いないと思っていたので(笑)、オファーをさせていただきました。

──池田さんは以前『チェリーボーイズ』でお話を伺った際に、セクシーな役を持ってきた監督が次は根暗な役を…というお話をされてましたね。

池田エライザ(以下、池田):まさにこの作品の話だったんです(笑)。廣木監督が関わっていることをあの時はまだ言えなかったので。

──では、演じてみて、御子の方が共感しやすいんでしょうか?

池田:セクシーな役が近いわけがないんですけどね(笑)。御子ちゃんが日頃の行動に近いところはあるんですけど、それでもやっぱり、彼女の境遇というところでは圧倒的に近づけない部分はあったりするので…。

似た生活の中で、どういうところで御子ちゃんは立ち止まってしまうんだろう、とか、自分ならそういうことを気にも留めずに進んでしまうなとか、そういうことを考えると、近いとは言いきれないなと思います。

キャストを一言で表すと…?

──キャストの方々についても伺いたいです。“一言でいうとこんな人”という言葉を教えてください。

御子の叔父・雷土悟郎役 オダギリジョーさん


監督:ファンタジー
池田:ボストンバッグ

監督:僕は悟郎がやっている仕事が一番よくわからないんですよ。この都会で何をして、何を食べているのかわからない、という感じ。オダギリさんは、それを演じることができる“ファンタジー”を持っている俳優さんだなって思うんですね。オダギリさんって、存在しているんですけど、でも世の中にいるんだかいないんだかわからない感じがする(笑)。その感じが“ファンタジー”だと思っていて。

池田:(笑)。

監督:そこにいるだけで画になる人。そんな人はなかなかいないので、そういう意味で僕は“ファンタジー”だなと思うんです。

池田:私も近いんですけど、ひとつはわかりやすく懐の深さがあるところ。御子ちゃんが悟郎さんに対して内弁慶でいられたのも、オダギリさんが吾郎おじさんでいてくれたからというのがあります。もうひとつは、何を詰めているかわからないところ。見かけはボストンバッグなんだけれど、オダギリさんはその中に何を詰めて、どんな思いを詰めて日々生きているんだろう、どういうものが彼にとって必需なのか…まったく想像がつかなくて、それが中身の見えないボストンバッグのようだなって思いました。

幽霊のパンクロッカー・春日公比古(きみひこ)役 渋川清彦さん


監督:性善説
池田:多国籍

監督:この人じゃないと、というのは他の配役でも言えることなんですけど、パンクロッカーは絶対KEE(渋川)さんじゃないと嫌だなって思ってたんです。僕がご本人をよく知っているということもあるんですけど、絶対に悪い人じゃないし、悪い人を演じてもどこかいい人が残るんですね。だから、絶対に憎めない人なんですよ。

池田:うんうん。

監督:だから、死んでしまった公比古を、そのまま体現できるのはKEEさんだと。人を傷つけない存在で、いつ見ても性善説だなって思うんです。

池田:外国のパンクロッカーみたいな要素もあれば、堅い侍のような瞬間もあって、どれがKEEさんなんだろうって、わからなくなるんですね。本当に真面目じゃないですか。

監督:うん。真面目。

池田:ひとつひとつ、お仕事に取り組んでいらっしゃって。そういう部分ってすごく日本人的だなって思うんですけど、お芝居に入ると、それをまったく感じさせない。「御子!」ってくる感じとかも、日頃からそうであるかのように見えるところが外国人っぽい気がするというか。そういうところが“多国籍”な感じがすると思いました。

御子の隣人・虹川亜樹人役 伊藤健太郎さん


監督:素
池田:宇宙人

池田:素が宇宙人ってこと(笑)?

監督:(笑)。でも、それが近いですね。僕は違う映画のオーディションのときに1回会っていて。そのときの素の状態を見て、亜樹人は健太郎くんにやってもらいたいなって思ったんです。でも、どういう役が得意なのかわからないまま現場に入ったので、ひとまず彼の素を見てみよう、と。そしたらすごく感性が豊かで振り幅があったんですよ。“素”で現場に来て、“素”で演じて帰るんで(笑)。現場に対して気負いがないんだろうな、という感じでしたね。

池田:初めて会ったのは、私が21歳で彼が19歳のとき。21歳と19歳ってかなり歳が近く感じますけど、やっぱり10代ですし、圧倒的な乗り越えられない壁みたいなものをずっと感じてて。彼、何考えてるかわからないですよね?

監督:ははは。

池田:ひとりで何かしてるなって思うんですけど、それの意味することがまったくわからなくて。私なんか、イヤホンをつけて喋ってる人を見るだけでビクッとしますから、ワイヤレスなんとか、みたいな、文化と言語の壁を感じて「宇宙人」だなって。なかなか仲良くなれなかったですね(笑)。

幽霊のOL・千夏本悠希役 光宗薫さん


監督:繊細
池田:遊牧民

監督:池田さんと違うところでの勘と発想があるな、と思いました。

池田:勘がいいですよね。

監督:その勘のはたらき方が“繊細”でしたね。御子ちゃんがこうするんだったら、私はこうするという、芝居を受けて考えてくる発想に、僕が考えてなかったこともいっぱいあって。そういうところが“繊細”だと思うし、御子ちゃんに影響を与えなきゃいけないというセリフの前とか、重要なシーンの表情の作り方や体の向きのもっていき方というのが“繊細”だったので、池田さん、光宗さんにそれぞれ違うよさがすごくあったなと思ってます。

池田:私とはまた違う感じなんですけど、彼女も多少引きこもりな部分があるってお話をしたんです。でも、彼女の心の中はすごく自由で解き放たれてるなって思っていて。自分が何を愛しているのかとか、何に魅力を感じているのか、というのにすごく素直でそこにアンテナを張っている人だなって思ったので、私は純粋にすごくうらやましかったですし、“遊牧民”のようだなって思いました。

撮影中にコメディ映画だと気づいた…!


──今作は「事故物件」がテーマでもありますが、脚本にどういった印象を受けました?

池田:私が台本をいただいたタイミングが、ちょうど母の実家に帰っていたときだったんです。それこそ、久しくあっていなかった家族に会って、普段は目に見えないところにいるけれど、こうやって生きているだけでもありがたいことだなと感じていたときで。だから、私にとって『ルームロンダリング』は御子ちゃんとお母さんの心と心がもう一度つながるまでのお話なのかな、っていう印象を最初に抱きました。

「コメディだ!」と気づいたのは、渋川清彦さんとお芝居してからでした。それまですごくズーンとした面持ちで現場に向かっていて、渋川さんとのシーンから、「あれ? そっちか!」ってつかむことができました(笑)。

──ポップでカラフルな美術面も魅力的でしたが、それも現場で初めて知った感じですか?

池田:人を救いあげる作品だな、というのは感じていたので、色味はきっと暖かい色になるんだろうなとか、現実とファンタジーの境目のようなキャッチーな部分もあるんだろうな、というのは意識していました。

──では、御子ちゃんについて、お二人はどういったディスカッションをされたんですか?

監督:あんまり、ないっちゃないんですよ。脚本を渡して池田さんに決まってから、2ヶ月くらい会ってなかった。

池田:もっと会ってなかった気がする。

監督:ね。オファーして、やってもらいます、となって、衣装の打ち合わせをするまで、1回たりとも会ってないんですよ。

池田:どんな人なんやろ~?ってお互いに思ってた。

監督:で、こっちは出てる作品を勝手に見てるし、池田さんは池田さんで、僕の人間像を知らないなかで脚本を読んでいて。初めて会った日は衣装の話をして、アヒルをみてもらって、その次がもう現場だったんです。ホン読み(脚本の読み合わせ)もなく。それって結構バクチなんですけど、でも役について打ち合わせたのは初日だけですね。「これくらい喋る感じ」とか、「こういうリアクションになる」とか。

池田:あとは御子ちゃんの世間話みたいな。「こんなとき、こんな感じだよね」って。

監督:だから、殊更、僕から池田さんにこういう風にやってほしいというのもなかったし、池田さんと僕で初日にちょいちょいって話したら、後はもう転がっていった感じですね。それも含めて、池田エライザという人に御子ちゃんを演じてもらったのが一番最初の正解だった。

池田:きゃっ(笑)! あとはオリジナル脚本ということもあるので、いくつかのシーンを撮っていくなかで、御子ちゃんの心が、意外とこういうところで停滞しているのかもしれない、とか、そういう相談はさせていただいていました。それも、セリフがもうちょっとこうなのかなっていう相談や、「大丈夫だよ」って言ったりとか、言われたりだとか。「大丈夫、なんとかなるよ」っていう感じ(笑)。

──そういうお話の中で、印象的だった言葉とかってありますか?

池田:本当に「ありのままでいいよ」とおっしゃってくださって。すごくそれで気が楽になりました。周りが本当に個性の強いキャストで…。キャストの個性が強いっていうと、ちょっと違うのかな…いや、強いか(笑)!

監督:そうだね。アクが強いというか(笑)。

池田:「御子ちゃんが周りのキャラクターの個性のなかで影響されていく話だから、素直に御子ちゃんとしてその場にいて、振り回されてみればいいんじゃない?」って言ってくださって。なので、基本のスタンスはそうでしたね。公比古にちょっとムカっとすれば、「調子乗るな!」って言ってみたりとか。自然体でやれたというか。

監督:女の子とお母さんの関係がストーリーの根本で、スタートとゴールが合っているんですね。だから、一番最後に撮りたかったところへ、そのまま転がっていけばよかったというか。

──監督が池田さんをキャスティングした時点で正解だった、というお話もありましたが、最後に、このシーンは特に想像を超えたいいものが撮れたな、というようなイチオシのシーンを教えてください。

池田:あるのかな、そんなの~。

監督:いろんなこだわりのカットっていうのはたくさんあるけれど、僕はやっぱり、お母さんと御子ちゃんのシーンが一番好きですね。大してカットをたくさん撮ってないんですが、それで十分というくらいだったんです。特に風が吹いて、御子ちゃんが上を向いて涙を流しているシーンは僕の中ですごくいいカットだったと思ってるんで。

池田さんのいいところは、すごくかわいい時と、すごく悲しそうな顔をしている時と、かわいくない時っていうのがちゃんとあるんですよ。全部が全部かわいくても見てる側の感情ってのらないじゃないですか。そこがすごく3つぐちゃぐちゃになってる顔で見ていて気持ちいいカットというのが、そのカットなんじゃないかなと思います。

映画『ルームロンダリング』は2018年7月7日(土)より、新宿武蔵野館、渋谷HUMAXシネマ、シネ・リーブル池袋ほかで公開です。

(写真:HITOMI KAMATA、取材・文:大谷和美)

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    ライタープロフィール

    大谷和美

    大谷和美

    高校2年の時に観た「バトルロワイアルⅡ」に衝撃を受け、映画の道を志すも、縁あって雑誌編集者に。特撮誌、若手俳優グラビア誌等の編集・ライター、WEB編集者を経て、現在はフリーランスで活動中。人間の感情や社会の闇を描いた邦画が好きで、気づけばR指定のDVDばかり借りていることも。一方、元々好きだったライダー・戦隊などの特撮作品やコメディ映画も好んで観ます。他、元上司のバカタール加藤が主催するニコ生番組「崖の上の生放送」に準レギュラーで出演中。

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