実は感動大作な『西遊記 女人国の戦い』! 見逃すには惜し過ぎる「7つ」の魅力!

滅多に口頭で人に映画を勧めることがない筆者でも、数年に一度「これはぜひ観てほしい!」という作品に出会う。それが全国拡大ロードショーではなく、公開規模が小さかったり企画上映での作品ともなるとなおのことだが、今年「2019中華最強映画まつり」で順次公開された『西遊記 女人国の戦い』がその1本だった。

筆者は本作を劇場で4回鑑賞して、4回とも嗚咽するように泣いた。

それぐらい心に深々と突き刺さる作品だったのだが、公開館数が極めて限定的だったので周りで「観た」という人は本当に極々限られていた。……うーむ。全世界興収132億円というヒット作ながら、そして「西遊記」という人気シリーズでありながら、なぜ本作はこのような扱いなのか。疑問が残るところだが、とにもかくにも4月3日にはBlu-ray&DVDがリリースされ、多くの人の手に届くことになった。そこであえて言いたい。「ぜひ、観てほしい!」と。今回は、『西遊記 女人国の戦い』の魅力をじっくり紹介していきたい。

1:『西遊記』シリーズとは?

まずは本作『西遊記』シリーズについて復習しよう。

第1作は宇宙最強の男ことドニー・イェンが特殊メイクで主演した『モンキー・マジック 孫悟空誕生』で、監督はのちに『ドラゴン×マッハ!』を日本でもヒットさせたソイ・チェン。続く第2作では孫悟空役がアーロン・クォックにバトンタッチし、初登場となる三蔵法師にウィリアム・フォンが扮した『西遊記 孫悟空vs白骨夫人』を経て本作がシリーズ第3弾となる。シリーズを通してソイ・チェンが監督を務めており、前作からクォック、フォン、シャオ・シェンヤン(猪八戒)、ヒム・ロー(沙悟浄)が続投している。

本作のサブタイトル「女人国の戦い」という文字を見て、もしかしたら抵抗感を感じる人もいるかもしれない(こればかりは原題が「女兒國」なので仕方なし)。三蔵一行を除けば、確かにビジュアルも美女だらけで“いかにも”な感はある。が、ちょっと待ってほしい! 美女だらけではあるものの、間違ってもそれが本作の売りということだけは絶対にないことを声を大にして言いたい! あくまで軸はアクションとドラマに置かれていて、本作の舞台であり女性しかいない国=女人国というのは、物語を動かす上で「必要」であってしっかり「機能している」ことを理解してほしい。

2:“史上最もドラマティックな西遊記”に偽りなし!

“史上最もドラマティックな西遊記”とは本作に添えられた日本版のコピーだが、その文言通り本作はアクション作品ながら恋愛ドラマにも主眼が置かれている。いや、むしろこのドラマこそ本筋と言っても過言ではない。そのドラマパートを牽引するのが、三蔵法師と女人国女王陛下(チャオ・リーイン)の恋物語だ。ひょんなことから三蔵一行は女人国へと迷い込み、女王陛下との運命的な出会いを果たし、女人国には人間の男性がいないため女王陛下は男である三蔵法師と出会ったことで“病”=恋心を抱いていく。

しかし三蔵法師は出家した身であり、女王陛下の気持ちに応えることはできない。さらに女王陛下の育て人である国師(ジジ・リョン)は国を護るために三蔵一行を排除しなければならず、無情にも彼らに処刑宣告を下す。それでも三蔵法師への思いが揺るがない女王陛下は一芝居打って一行を逃がし、彼らが女人国から出るためのヒントを求めて女人国が生まれた“子母河”へと向かう。ここで三蔵法師・沙悟浄・猪八戒がまさかの妊娠をするのだが(コメディ調ではあるものの、原作にも三蔵法師らが妊娠する描写がある)、この妊娠をめぐって物語は前半と後半で大きくその表情を変えることになる。

子を宿したことで三蔵法師にはこれまでに生まれ得なかった感情を抱くようになり、女王陛下との向き合い方にも変化が生じていく。映画はこのパートを境にして三蔵法師と女王陛下により焦点を当てることになり、コメディ色を一切排して「ひとりを愛するのか、人々を愛するのか」という観点で宗教観を絡めながら進む。それは俗世を離れた三蔵法師だけでなく、国を統べる運命を背負った女王陛下にも突きつけられるのだ。

3:セリフに頼らない、感涙の結末へ

国師の策略により苦海へと追放される三蔵法師と、三蔵法師と一緒に居ることを決意し彼の懐へと飛び込む女王陛下。苦海で死線を彷徨った2人はやがて「来世で一緒に」なることを約束しながらとある場所へとたどり着くが、その代償として女人国全体に崩壊の危機が訪れてしまう。三蔵法師は女王陛下の存在に心が揺れ続け、女王陛下は意識を失った中で三蔵法師と過ごす“夢”を見る。終盤で描かれる怒涛のバトルの果てに、2人の思いが重なった瞬間に実は一切のセリフが用意されていない。なぜ言葉を必要としないのか、それでもなぜ2人の間に“答え”は出たのか。様々な感情が一気に押し迫るが、このシーンこそ本作の核心部にもなっている。

4:三蔵法師の一番の理解者・孫悟空

本作を語る上で、三蔵法師という人間を一番理解し最も近い距離で彼を救おうとするのがほかならぬ孫悟空だ。これまでの「西遊記」といえば、孫悟空が悪さをして緊箍児(きんこじ)と呼ばれる金の輪を三蔵法師の法力によって締めつけられ、孫悟空がもんどりうつというのがイメージしやすい姿だろう。しかし本作の孫悟空は三蔵法師に圧倒的な信頼を寄せていて、三蔵法師が天竺へ向かい教典を持ち帰ることの“意味”を誰よりも理解している。

それだけ三蔵法師を理解しているからこそ、孫悟空は「悪役になる」ことを決意しなければならなくなる。そのきっかけとなるのが三蔵法師らの妊娠であり、孫悟空の行動から一気に本作は強いドラマ性を帯びていくことになる。前半を占めていたコメディ調のテンポががらりと変わるのも、孫悟空が選んだ行動を真摯なまでに受け止めた結果なのだろう。もしもその行動以降コメディ要素が含まれては孫悟空の決断の重さが薄れてしまうし、“命”というテーマを扱う性質上そのように描かなければ物語そのものを裏切ってしまうことになるのだ。

孫悟空といえば万物の理を超越する神通力が魅力で、もちろん本作でも途中途中のアクションやラストバトルでその力が存分に発揮されている。ただ三蔵法師との関係性だけは、孫悟空のある意味人間以上に人間らしい心根と優しさが、顕著に表れていることにも注目してほしい。悪役になると決断した際の表情や、女王陛下の存在に心揺らす三蔵法師を見つめる瞳の奥の哀しみは、特殊メイクに隠れていながらなおクォックの繊細な演技が光り輝いている。

5:ソイ・チェン節炸裂! 超絶怒涛のVFXアクション

本作はドラマパートが見どころになっているだけでなく、圧倒的スケールで描かれるド迫力のバトルシーンが近年稀にみるほどの高揚感を体感させ仕上がりになっている。ソイ・チェンの卓越したアクションビジョンは本シリーズや『ドラゴン×マッハ!』で既に証明済みだが、VFXを駆使したアクションもバシリと決めてしまうあたり天才肌だと感じられる。本作の冒頭ではのちに重要な存在となる、“河の神”(演じるのは『レッド・クリフ』シリーズのリン・チーリン!)の化身である超巨大魚とのスペクタクル・チェイスが展開され、いきなり観客は「西遊記」という名のファンタジーワールドへと突き落とされることになる。

そして圧巻なのはやはりラストバトルであり、その相手こそ河の水をまとい巨大化した“神”でもある。ヒトの形をしながらもその身の丈は山ほどもあり、もはや孫悟空たちなど米粒のような存在。それでも全力で果敢に攻め込む孫悟空・猪八戒・沙悟浄を、水柱で易々と弾き返してしまうパワーを持っている。女人国を包み込むほどの水の渦を孫悟空が如意棒の共鳴によって打ち破った直後には、全てを飲み込む巨大な津波となって押し寄せるなど“敵”としては破格のスケールによって、孫悟空たちとの怒涛の徹底抗戦が描かれている。VFXはハリウッド顔負けの完成度を誇り、言うなればこの一大スペクタクルシーンだけで元が回収できるのではないだろうか。緩急を利かせながら孫悟空に追従するカメラワークのキレもあり、この迫力をスクリーンで堪能できたことは筆者にとって映画人生における財産になったほどだ。

6:一流スタッフが集結!

本作には世界各国から豪華スタッフが集結しているので、合わせて紹介したい。素晴らしいカメラワークを見せてアクションをより鮮明に映し出したのは、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどピーター・ジャクソン作品の多くで第二班撮影監督を務めているリチャード・ブラック。特殊メイクは『300 スリー・ハンドレッド』のショーン・スミス、美術は『タクシー運転手 約束は海を越えて』のチョ・ファソンが担当している。

そして音楽は前2作でハリウッドから『スパイダーマン3』などのクリストファー・ヤングを招いていたが、本作では日本から久石譲の音楽プロデューサー・小林雄が参戦。三蔵法師と女王陛下にはゆったりとした旋律が与えられて耳になんとも優しい一方、バトルシーンではしっかりと打楽器系を打ち鳴らしてシーンそのものにさらなるインパクトを加えている。筆者は終盤で答えを見出した三蔵法師と女王陛下に寄り添うピアノの音色が耳にこびりついており、ふとフレーズが脳裏をよぎっただけで目頭が熱くなるほど、鮮烈な印象を残すことになった。このピアノの響きが、間違いなく2人の場面をより情感的に彩るエッセンスになったと確信した瞬間だ。

7:まとめに代えて、願わくば2度、3度と鑑賞を

一見純度100%のエンターテインメント作品のように思えるが、実はスタッフ・キャストによる一魂注入の情熱を感じさせるドラマにも仕上がった本作。大のアクション好きの筆者のことだから気に入るだろうと目に見えていたとはいえ、正直自分が“恋愛映画”でこれほど涙を流せるのかと驚いた作品でもある。

「そうでもないんじゃない?」と言われればそれまで(確かに前半のコメディパートはスベっている感は否めない)だが、迫力満点のアクションや濃厚なドラマは決して観て損ではないはず。むしろ結末までたどり着いてもう一度見返せば、映像にしろ音楽にしろ、いかにラストに向かって綿密に伏線が張られているかより伝わってくるはず。少なくとも筆者は次の“推し作品”に出会うまでは、臆面もなく「騙されたと思って一回観てみて!」と本作の猛プッシュを続けていると思う。

最後に、三蔵法師役のウィリアム・フォンと女王陛下役のチャオ・リーインは本作での共演を機に結婚へと至っている。その点も踏まえて本作を鑑賞すると、より感動が深くなるのではないだろうか。

(文:葦見川和哉)

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    葦見川和哉

    葦見川和哉 映画が好き。旅が好き。小説が好き。 映画開眼と同時に映画音楽の魅力にも取りつかれたサウンドトラック収集家。

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