映画コラム

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2017年08月27日

『新感染 ファイナル・エクスプレス』は韓国エンタメ映画の真骨頂!新世代のスター、コン・ユの存在感

『新感染 ファイナル・エクスプレス』は韓国エンタメ映画の真骨頂!新世代のスター、コン・ユの存在感

■「〜幻影は映画に乗って旅をする〜」




(C)2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.


ここ数年、再び注目を集めはじめている韓国映画。重厚なドラマ性を備えたクオリティの高い娯楽映画に、多くの映画ファンが舌を巻いているのだ。2000年代前半に、ドラマ『冬のソナタ』をきっかけに一大センセーションを巻き起こした〝韓流ブーム〟から早15年。当時と比べればその熱量は下がりつつあるとはいえ、確実にその潮流は生き続けている。

もちろん、その礎となるのはいわゆる〝韓流スター〟の存在だ。かつて四天王と呼ばれたイ・ビョンホンやペ・ヨンジュンらから幾度も世代交代を重ね、今もっとも人気のある俳優といえば、やはりコン・ユではないだろうか。

9月1日(金)から公開となる彼の主演作『新感染 ファイナル・エクスプレス』は、列車という密室空間でのアクションに、バイタリティが高すぎるゾンビ(〝アンデッド〟的なニュアンスのほうがいいだろうか)、そして韓国映画には欠かせない家族愛の要素もふんだんに詰め込まれた、究極の娯楽大作に仕上がっている。

<〜幻影は映画に乗って旅をする〜vol.46:『新感染 ファイナル・エクスプレス』は韓国エンタメ映画の真骨頂!新世代のスター、コン・ユの存在感>

新感染 ファイナル・エクスプレス ScreenX


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ファンドマネージャーのソグは、仕事に没頭するあまり妻と離婚し、引き取った幼い娘・スアンとも微妙な関係だ。スアンの誕生日、釜山に暮らす母親に会いたいと言い出す彼女を連れて、早朝のソウル発釜山行きの高速鉄道KTXに乗り込むソグ。すると、発車直前のソウル駅で謎の暴動が発生。発車したKTXの車内には不穏な乗客の姿が。

一見すると、『バイオハザード』のようにゲームらしいシチュエーションで描き出されるが、生きることに必死になる人々を描こうとするゾンビ映画のヒューマンドラマ的側面が、見事に韓国映画的な家族愛の物語と重なり合って、感動作になっているのでだから実に予想外だ。

娘を守ろうと命を賭けるコン・ユ演じる主人公に、妊娠中の妻を守る強面の男。そして高校生のカップルや、年老いた姉妹、悪役に徹する傲慢な中年男など、各キャラクターのドラマが余すところなく描き出されており、性別を問わずあらゆる世代に受け入れられる作品ではないだろうか。

コン・ユといえば、韓流四天王の次世代を担ったクォン・サンウ主演作『同い年の家庭教師』でスクリーンデビューを果たし、2007年にドラマ『コーヒープリンス1号店』で日本でもブレイク。いわば韓流第3世代のスター俳優だ。ロマンティック・コメディから、シリアスドラマ、さらにはアクションまで幅広くこなすその演技の幅は、今や韓国映画界には欠かせないものとなっている。本作でも、ドラマチックにハードなアクションをこなす彼の演技が最大の注目要素だ。



今回共演しているチョン・ユミと組んだ『トガニ 幼き瞳の告発』はここ10年の韓国映画でもトップクラスの作品になったわけだが、今回は紹介する新作とは正反対のロマンティック映画から一本紹介したい。

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2010年に制作され、翌年日本で公開された『あなたの初恋探します』。つい先日日本でも上演された韓国の人気ミュージカルを、同作の舞台監督を務めていたチャン・ユジョン自らの手で映画化したロマンティック・コメディだ。

舞台監督の仕事に明け暮れるジウは、初恋の相手を忘れられずに婚期を逃し続けていた。それを心配した父親が、彼女を「初恋探し株式会社」に連れていく。そこは、融通の利かない生真面目な青年ギジュンが開いた、文字通り初恋の相手を探してくれる会社だったのだ。今ひとつソリの合わない二人は、10年前にジウの初恋相手である〝キム・ジョンウォク〟という青年を探し始めることになる。

韓流ブームがブレイクした最大の要因は、日本ではちょっと恥ずかしくなってしまう、おとぎ話のようなラブファンタジーを堂々と描き出す点にあったと思える。この『あなたの初恋探します』をはじめとしたロマコメは、近年注目を集める重厚なミステリーや激しいバイオレンスと双璧をなす、韓国のエンタメ映画界には欠かせない一面なのである。

今回の『新感染 ファイナル・エクスプレス』でコン・ユという俳優の魅力を発見したならば、ぜひとも彼のキャリアを形作ったロマコメ俳優としての面も観てもらいたいところだ。

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(文:久保田和馬)

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