「かの鳥」白石和彌監督×『不能犯』白石晃士監督が松坂桃李を語る!

──以前、和彌監督は「かの鳥」の陣治にすごく共感しながら撮っていた、というお話を以前伺ったのですが、晃士監督はいかがでしたか?

晃士監督:共感しますね。陣治にも共感しますし、十和子にも共感しますし、水島や竹野内豊さん演じる黒崎も、共感ではないですけど理解はできますね。みんな、その辺にもいるし、自分の中にも、みなさんの中にもその要素はありますよねって。

──男性で十和子にも共感するというお話が、少し意外だったのですが。

和彌監督:男性でも、共感というか理解できるという話はありましたね。

晃士監督:だって別に、恋に狂っちゃえば…ありますよね。恋というものは繁殖のために必要な精神病だと思うので、恋してるときはみんな狂ってるんですよ。なので、私も恋でおかしくなることはありましたし、裏切られて殺したいと思う気持ちもわかるし。そういう人たちのことを全然かわいいなって思うので、陣治の気持ちもわかります。彼の場合は恋ではなく、愛情だと思いますけど。

和彌監督:陣治は父性を意識したんです。帰ってきて、食事を与えて、毎日お金をあげて、最後まで十和子が生きていくことを望む姿に、十和子と同じ目線ではなく完全に親目線をもつ人なんだろうなと、原作を読んだときから思っていたので。ラストの展開も最初は理解できなかったんですけど、親だと考えたらわかるなって、僕も人の親なので、それはすごく感じたんですね。その感覚がなかったら作れてなかったかな。

晃士監督:実は僕も原作が出た頃に読んでいて、ラストを理解できなかったんですよ。ついこの間子供が生まれたんですけど、正直、映画を観ても、まだそこは理解できなかった。だから、どういう理解で陣治が死を選んだのか、もっと聞いてみたいなって思ったんですけど。

和彌監督:やっぱりまほかるさんって元々僧侶なので、輪廻転生的な哲学が原作にあるんですね。死ぬに当たって「俺の子供を埋め」というのは、最大の呪いみたいな言い方をする人もいるんだけど。でも、あの瞬間、確かに陣治が十和子の中に宿って、陣治の愛に気づいて産んだとしたら、十和子がちゃんとまともな人生を歩めるようになるんじゃないのかなって、なんとなく思ったんですよね。そうだったら、原作のように描いてもいいかなと思えたのが大きいですかね。

晃士監督:陣治が一緒に生きていくほうが、十和子にとっていいんじゃないのかな、ってちょっと思うんですけど…。

和彌監督:それは本当に思います。

晃士監督:映画も、その展開の直前まで大好きで、でも原作を読んだときと同じく、そこだけ納得ができなかったなって。今までずっと彼女のための行動だったのが、人生の結末として、最後だけ自分のためのナルシスティックな行動をしたように映るというか。

和彌監督:それは本当に僕も同じ感覚だったけれど、彼女のための行動として僕の中で置き換えることができたのは大きかった。ラストでバシャンって落ちた後、カメラもぶくぶくと沈んで…実はそれが子宮の中、という画を取ろうかな、とかいろんなことを考えたりもしたんだけど、でも、ストレートにいった方が物語としては強いんだろうなと、思い至ったラストですね。

監督デビュー前からお互いを知っていたという和彌監督と晃士監督。用がなければ、なかなか会うこともないということでしたが、ウィットに富んだ会話を交えながらお話される様子から、仲のよさとお互いの作品へのリスペクトが伝わってきました。

白石和彌監督の『彼女がその名を知らない鳥たち』は4月25日(水)にBlu-ray&DVDが発売、白石晃士監督の『不能犯』は現在公開中です。

『彼女がその名を知らない鳥たち』
2018年4月25日(水)ブルーレイ&DVDリリース
ブルーレイ特別版2枚組 6700円+税、DVD特別版2枚組 5800円+税
発売元:クロックワークス 販売元:松竹

『不能犯』
2月1日(木)全国公開
配給:ショウゲート
公式HP:funohan.jp
公式Twitter:@FunohanMovie

(取材・文:大谷和美)

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    ライタープロフィール

    大谷和美

    大谷和美

    高校2年の時に観た「バトルロワイアルⅡ」に衝撃を受け、映画の道を志すも、縁あって雑誌編集者に。特撮誌、若手俳優グラビア誌等の編集・ライター、WEB編集者を経て、現在はフリーランスで活動中。社会の闇を描いた邦画が好きで、気づけばR指定のDVDばかり借りていることも。一方、元々好きだったライダー・戦隊などの特撮作品やコメディ映画も好んで観ます。

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