大ヒット御礼企画☆『トイレのピエタ』のあのシーンを松永監督が大暴露〜宏(野田洋次郎)編

親子の壁が崩壊する時

―— あとですね、個人的に好きなシーンがもう1つあるんです。宏が療養のために実家に帰ってからは、涙腺が崩壊しっぱなしだったのですが…。

松永監督「宏が子供の頃の絵が飾ってあって、賞状が飾って、みたいな」

―— そうそう!もう自分と被りまくりで(笑)。最初の方のやりとりで、宏とご両親の間には壁があるように感じたんです。でも、実家には息子を案ずる気持ちや愛おしさが溢れていたんですよね。極めつけは、お父さんが宏の絵を買うシーンですよ!

松永監督「ああ、あそこね〜!」

―— 宏の余命を知ってこそかも知れませんが、親元を離れて都会に出てきた人間には、たまらない破壊力があると思うんです。もう、思い出しただけで涙ぐんじゃうんですけど、そういった過去が監督にもあるんじゃないかと思いました。

松永監督「『トイレのピエタ』という作品は、僕の投影ですからね。“宏の父親=僕の父親”という側面もあります。僕が映画を撮り始めた時、それを知った父から『そんな絵空事』とか『一攫千金狙い』などと言われました。でも一攫千金を狙うなら、映画なんてわざわざ撮らないです…。」

―— 確かに。もっと儲かる仕事は他にありますから(笑)。

松永監督「でも、そんな父が、僕のデビュー作品であるドキュメンタリー映画『ピュ~ぴる』が公開された時、必死に宣伝してくれたんですよ。本当に。」

―— なんだかんだ言っても、お父様は我が子を応援してくれてたんですね。

松永監督「そうなんです。僕が載ったメディアの記事を取っておいてくれたりとか、そういうのを見ちゃって…。」

―— そうそう、大好きなシーンの話に戻りますが、岩松了さんが演じる宏の父親が、宏の絵を買うところ…あれ、すごいシーンですよね!壁を感じていた父親が、1人の人間として、自分の絵をお金を払って買うという…。

松永監督「不器用な親父さんが、どうやって死期の迫った愛する息子に接するかなあ、と。」

―— ポケットからクシャっとお札を取り出して「絵、売ってくれないか」って照れくさそうに言った岩松了さんのあの感じは、まさに“不器用な親父”でしたね。

松永監督「あれが、宏のお父さんの精一杯の言葉というか、努力なんだと思います。そういう姿に心を動かされる宏を描きたかった。本当の気持ちって、自分も他人もなかなか解らないものだと思うんです。でも、取り返しがつかないトコまで来ちゃった時、人間ってそういうことに気付いたりするんですよね。もっと早く気付けば良かった、行動しとけば良かったって。」

―— 頭でいくら想像しても、いざその境地に立ってみないと解らないものですね。

松永監督「良く『死ぬ気になれば…』って言うけど、本当に死ぬって言われないと死ぬ気になれないですよね。『後悔先に立たず』とは良く言ったもので、そういう事をあのシーンでは描きたかったんです。」

―— 息子がこの世を去ると理解したからこそ、自然と湧いて出た言動ということですね。

松永監督「そうそう。そこで初めて、宏は『父はいつも自分を想ってくれた』という感じる。そして『俺は何も分かっていなかった。分かろうともしていなかった』という自己嫌悪や恥ずかしさが湧いてきます。だけど宏は『別に大したこと無い』って平静を装うんですが、やっぱり自分には嘘をつき切れない。そんなやり切れない気持ちを『威風堂々』を鼻歌で奏でながら涙を流すことで表現しました。」


    ライタープロフィール

    大場ミミコ

    大場ミミコ

    小学生の息子を持つ主婦ライター。美大卒業後、ストーリー漫画家を目指してシナリオ学校の門を叩く。その後10年ほど、映画・ドラマ・コミック原作などのプロットやコンペ原稿などの下積みを経験し、出産を機に引退。現役中は、お金を浮かせるために飯田橋ギンレイ、早稲田松竹などの名画座に通う傍ら、フリーペーパーなどのシネマコラムも執筆する。好きな映画は「真夜中のカーボーイ」「アメリカン・ビューティ」「チョコレート・ドーナツ」など、切ない&救いのない系の作品。一方、「ウェインズワールド」「プロデューサーズ」などのおバカコメディも大好物♡好きな俳優は佐藤健、好きな監督は中島哲也、内田けんじ。

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