大ヒット御礼企画☆『トイレのピエタ』のあのシーンを松永監督が大暴露〜宏(野田洋次郎)編

手放すこと、受け入れること、向き合うこと

―— 主人公の宏は絵を、松永監督は映画を、野田さんは楽曲を作られています。3人とも無からモノを生み出す表現者ですし、全員男性でもあります。ということで、ご両親との関係や創作への思いや不安、人生観などは、きっと同じようなものが流れているんじゃないかと思うのですが…。

松永監督「そうかもしれないですね」

―— 同じような母数を持った3人が集まり、それぞれが持つ全てのものがワッと出て、それがカチッと嵌まり、狙いを超えた想定外の化学変化を起こした…。あのシーンはそんな瞬間だったように思うんです。

松永監督「後戻りできないところまで来ちゃってますからね、宏は。死ぬ事が解ってるから悔しいし、苦しいんです。」

―— 人間の意志では抗えない運命を前に降参した…みたいな?

松永監督「降参というより、運命を受け入れたという感じかな。今の状況を受け入れたってことは、宏の成長でもある。それまではダメだった自分と向き合わずに、そっぽ向いてましたからね、宏は。」

―— その通りですね。体重計に乗りたくないのは、太ったという事実を見たくないからですものね。いざ体重の数値を見てしまったら、受け入れるしかないですものね。

松永監督「受け入れてしまうと、自分の弱さも全部分かってしまいますから。」

大切な人を失って得た感覚

―— 個人的な話なのですが、昨年母が亡くなったんです。母はある瞬間から自分の死期を察したようでした。その頃の母は、そこそこ会話もできていたし、虫の息ってわけでもなかったんです。でも彼女は「あと僅かだ」って確信したんでしょうね。『ありがとう』なんて言わない人だったんですが、突然感謝を伝え始め、その数日後に息を引き取りました。

松永監督「そうだったんですか…だから森のシーンが特別に感じたのですかね。」

―— 変な話、人間には死期を察する力があるように感じます。母と私が最後に会ったのは病院のロビーだったのですが、不思議な事に「これが最後」とお互いに解りました。じゃあねと明るく別れましたが、こっそり立ち戻って母の姿を今一度目に焼き付け、ひとり隠れて泣きました。

松永監督「そういう(察する)能力を、人間は潜在的に持ってると僕も思っています。」

―— 宏と母がシンクロしちゃって…。だから、宏が実家に帰ってから『威風堂々』を歌うまでのシーンに、めちゃめちゃ魅せられてしまったんですよね。

松永監督「分かります。映画って、その人の経験によって、その人の感じ方になるのが面白い。最愛の人との別れを経験をした人だからこそ解ることや、ものすごい後悔をしたことがある人だからこそ解ることってあると思うんです。自分でもあのシーンは、誰かの心を強く揺さぶるシーンの1つだと思います。」

(次回『真衣(杉咲花さん)編』に続く)

…いかがでしたか? 森のシーンへの思い入れや撮影秘話はもちろん、お互いの親子話まで飛び出すほど濃厚で楽しい時間を過ごすことが出来ました。松永監督の誠実で親しみやすいお人柄と、ウィットに富んだ会話の様子が伝わったら嬉しいです。

後編は、杉咲花さん演じるもう一人の主人公・真衣のフェイバリットシーンや書き下ろし小説について伺ったお話をまとめました。宏編に引き続き、ぜひぜひご期待下さいね!!

(取材・文・イラスト/大場ミミコ)

(C) 2015「トイレのピエタ」製作委員会

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    ライタープロフィール

    大場ミミコ

    大場ミミコ

    小学生の息子を持つ主婦ライター。美大卒業後、ストーリー漫画家を目指してシナリオ学校の門を叩く。その後10年ほど、映画・ドラマ・コミック原作などのプロットやコンペ原稿などの下積みを経験し、出産を機に引退。現役中は、お金を浮かせるために飯田橋ギンレイ、早稲田松竹などの名画座に通う傍ら、フリーペーパーなどのシネマコラムも執筆する。好きな映画は「真夜中のカーボーイ」「アメリカン・ビューティ」「チョコレート・ドーナツ」など、切ない&救いのない系の作品。一方、「ウェインズワールド」「プロデューサーズ」などのおバカコメディも大好物♡好きな俳優は佐藤健、好きな監督は中島哲也、内田けんじ。

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