大ヒット御礼企画☆『トイレのピエタ』のあのシーンを松永監督が大暴露〜真衣(杉咲花)編

感情を殺してニッコリ笑う、杉咲花の演技力

―— もう1つ、真衣のシーンで好きなのは、おばあちゃんをお風呂に入れる場面です。真衣のおばあちゃんは認知症で、お風呂が嫌いなんですよね。あの手この手を使って、真衣が風呂に誘導しますが、なかなか入ろうとしない。そのうち、真衣の顔はイライラに支配され「あ、怒鳴る?殴る?」となった瞬間、何と真衣はニッコリ笑うんです。多くの人は、真衣が怒鳴り散らすシーンを予想しましたが、気持ち良く裏切られました。

松永監督「怒鳴れたら、もっと楽だと思います。」

―— 感情を押し殺した作り笑顔が、恐ろしくリアルでした。あのシーンが生まれた経緯をお聞かせ下さい。

松永監督「実は2~3年前、介護の映画を撮りたいと思っていて、1ヶ月ほどデイサービスの施設で介護のバイトをしました。多くの利用者(老人の方)はお風呂に入りたがらないんです。でも、スタッフの方はみんな笑顔で、一生懸命にお風呂にいれるために格闘する。そういう実体験が反映されています。」

―— 介護する側にも、される側にも、様々な事情があるんですよね。特に真衣はおばあちゃん子で、沢山の愛を注いでもらった設定ですから、その表現も一筋縄ではいかなかったのではないでしょうか?

松永監督「17歳という遊びたい盛りに、好き勝手できない不自由さというか…あんな小さな女の子が、ある意味自分の人生を犠牲にしている。その苦しさが真衣にはあると思うんです。しかも真衣は、本当におばあちゃんのことが大好きなんです。だから絶対怒れない。その辺りの背景は、小説には詳しく書いてあります(笑)。」

―— あのシーン自体は説明ゼリフもなかったし、余計なものを削ぎ落とした演技と表情がメインのシーンでしたよね。シンプルゆえに「愛しているから怒鳴れない」という真衣の葛藤が痛いほど伝わる名シーンでした。

松永監督「映画の方は、台詞や音楽を最小限にしたい。削ぎ落とすことで露わになる心の機微があると思ってますので。その代わり小説は、細かい描写を盛り込んで書きました。」

sugisaki01


    ライタープロフィール

    大場ミミコ

    大場ミミコ

    小学生の息子を持つ主婦ライター。美大卒業後、ストーリー漫画家を目指してシナリオ学校の門を叩く。その後10年ほど、映画・ドラマ・コミック原作などのプロットやコンペ原稿などの下積みを経験し、出産を機に引退。現役中は、お金を浮かせるために飯田橋ギンレイ、早稲田松竹などの名画座に通う傍ら、フリーペーパーなどのシネマコラムも執筆する。好きな映画は「真夜中のカーボーイ」「アメリカン・ビューティ」「チョコレート・ドーナツ」など、切ない&救いのない系の作品。一方、「ウェインズワールド」「プロデューサーズ」などのおバカコメディも大好物♡好きな俳優は佐藤健、好きな監督は中島哲也、内田けんじ。

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