『友だちのパパが好き』だなんて、そんな!

■「キネマニア共和国」

人間誰しもモテまくってみたいと思う生き物ではあるでしょうけど、こういうモテまくりは果たして幸せなものかどうか……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.81》

ユニークで切ない恋愛映画の快作『友だちのパパが好き』!

友だちのパパが好き
©2015 GEEK PICTURES

ややこしい人間関係の中から
醸し出される奇妙な微笑ましさ

『友だちのパパが好き』は、一言でいえば吹越満演じる“友だちのパパ”霜崎恭介がモテまくってしまうお話です。

恭介の娘で大学生の妙子(岸井ゆきの)は、友人マヤ(安藤輪子)が自分の父のことを急に好きだと言い出して、呆れてしまいますが、マヤはかなり本気のようです。

一方、恭介は妻ミドリ(石橋けい)と離婚することになりました。

なぜなら、恭介には愛人ハヅキ(平岩紙)がいて、ミドリは身を引くことになったのです。

しかもハヅキは妊娠しているようです……。

離婚のことを知ったマヤは、これで気兼ねなく恭介と一緒になれると喜び、さらなるアタックを仕掛けていきますが、そのためにつきあっていた恩師の男をふってしまい、彼はストーカーと化してしまい……。

ピュアな愛を貫こうとするマヤから醸し出される凄みや、妻から愛人、そして娘の友人と愛されまくりの恭介のデレデレぶり、冷めきった中から“女”としての自分を取り戻していく妻ミドリ、何もかも呆れ果てて言葉も出ない妙子、妻には勝ったような、でも女子大生には負けてしまったような愛人ハヅキなどなど、妙にややこしい人間関係の中から、微笑ましくも切ない人間の業というものが切々と醸し出されていく作品です。

出色なのは、やはりモテまくりの中年男を演じる吹越満で、一見飄々とした佇まいの中から、男のエゴや情けなさなど複雑な情緒を巧みに発散させながら、ある意味諸悪の根源たる男を好演しています。
友だちのパパが好き

男女間、世代間を繊細に見据えた
恋愛エンタテインメント!

監督は、ソフトバンクモバイル「白戸家」シリーズや「NOVA」などのCMディレクターとして知られる山内ケンジで、演劇プロデュースユニット“城山羊の会”を発足させ、15年の『トロワグロ』で第59回岸田國士戯曲賞を受賞している才人です。

本作は、『ミツコ感覚』(11)で映画監督としてデビューを果たした彼の第2回監督作品でもありますが、前作以上に鋭い人間観察の中からエッジを利かせた男と女の世代を超えた愛憎の形が、なぜかしらユーモラスに映えわたっていきます。

男から見るとどこかうらやましいような、女から見るといいかげんにしろと怒られそうな、そんな中年男と娘の友だちの歳の差ラブの行方は、当然ながら単純なハッピーエンドなど迎えるはずもなく、では一体どういう結末を迎えるかは見てのお楽しみ⁉

ただ、いずれにしましても恋というものは、男女間も世代間も関係なく、どこかしら心に深い傷を残してしまうものでして……、そういった繊細な機微をエンタテインメントとして見事に描出した快作です。

カップルでご覧になると、鑑賞後はなにがしか男女の恋愛観の相違といった観点などで、会話が弾むかもしれませんね(喧嘩になっても責任は持ちませんけど……)。

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:増當竜也)

『友だちのパパが好き』
12月19日、ユーロスペースほか全国公開
http://tomodachinopapa.com/

(C)2015 GEEK PICTURES


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou

    鹿児島県出身。映画文筆。

    朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。

    取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。

    編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊)

    その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。

    ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊)
    現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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