映画コラム

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2016年05月18日

「殿、利息でござる!」から改めて考える"映画とご当地"の関係性

「殿、利息でござる!」から改めて考える"映画とご当地"の関係性

殿、利息でござる!


(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会



新しい映画の盛り上がり方(?)新感覚ご当地映画!!


好評公開中の「殿、利息でござる!」。「武士の家計簿」「駆込み女と駆出し男」「超高速!参勤交代」シリーズ「武士の献立」と“切り合い”がメイではない新感覚時代劇のヒットが続いている。「殿、利息でござる!」もはるか先の延長線上に我々がいるであろう等身大の人々たちの悲喜交々の生きていく姿が見られる。

そんな「殿、利息でござる!」が舞台となった舞台となった宮城・仙台で全国に先駆けて、一週早く公開されていたことをご存じだろうか。最近、このような新感覚ご当地映画というべき作品が多く、新しい映画の盛り上がり方の一つとなっている。

昔から、ご当地映画というものはあった。“寅さんシリーズ”の誘致合戦があったなどということがまことしやかに語られていた、大林宣彦監督の “尾道三部作”で尾道が映画の聖地として認知されたりすることもあった。

最近の新感覚ご当地映画はこれらともちょっと違った盛り上がり方をしている。「殿、利息でござる!」の宮城・仙台で映画といえば、人気作家伊坂幸太郎原作の仙台サーガがある。

「アヒルと鴨のコインロッカー」「重力ピエロ」「ポテチ」などは仙台で先行公開され、仙台=伊坂幸太郎を強く印象付けた。絶対王者東宝による「ゴールデンスランバー」はさすがに先行公開はなかったが、主演コンビと監督による仙台凱旋プレミアが行われた。

地域色が強く出ることでいえば北海道&大泉洋の作品群も触れないわけにはいかないだろう。「探偵はBARにいる」シリーズは北海道で首都圏を上回る混雑ぶりを見せ、三島有紀子監督との2作品「しあわせのパン」「ぶどうのなみだ」は北海道で先行上映された。“おらが故郷から出た人気者がおらが故郷を舞台にした映画”となるとやはり盛り上がりも二乗三乗されて盛り上がるのも頷ける。

近作でも「モヒカン故郷に還る」でも舞台となった広島で先行公開され、「世界から猫が消えたなら」の函館、「さらばあぶない刑事」の横浜では大々的に映画ロケ地を取り上げてMAPを作成して配布されている。「海街diary」の鎌倉はアニメ・コミック・テレビドラマなどで立て続けに舞台となっていて、今では海外からの観光客も増えている。

アニメーションと地域の結びつきも濃くなっていて、ちょっと懐かしいところでは「新世紀エヴァンゲリオン」の箱根、「サマーウォーズ」の長野・上田、「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」の埼玉・秩父なども聖地のような存在になっている。

映画と地域の橋渡し役フィルム・コミッション


21世紀に入ったころから邦画のエンドロールでよく見かけるようになったのが、○○フィルム・コミッション、○○ロケーションサービスなども文字だ。

もともと、地方公共団体の観光課や観光協会などから、映画・映像の撮影協力に特化して窓口役になる組織で、映画の誘致活動から始まり、各種撮影許可申請の代行やエキストラの募集などのより強力な撮影へのバックアップをする。

さらに映画撮影終了後も地元と連動する形で映画の告知活動なども行い続け、地元観光業への還元するところまでを目指している。行政が絡むことで従来では撮影許可が下りにくい場所でも撮影が可能になる。クリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」やソフィア・コッポラ監督の「ロスト・イン・トランスレーション」、人気シリーズ「007スカイフォール」(軍艦島)などのハリウッド映画への協力もある。硫黄島などは自衛隊の基地があることもあって、通常は民間人の立ち入りが難しいのだが行政が間に入ることで、ことが進みやすくなっている。

さらに地域発信の映画祭や映像制作ワークショップなどで映画を支える地盤つくりにも熱心なところもある。“尾道三部作”の大林宣彦に故郷に恩返しができる映画を作るようにと諭された本広克行はその後出身地香川県を舞台にした「サマータイムマシン・ブルース」「UDON」を制作。さらに讃岐映画祭では映画祭ディレクターも務めている。映画から地方、地方から映画へと映画が相乗効果を生み始めている、一例といっていいだろう。

地元が映れば映画が近づく。


私自身の地元に築95年になる一風変わった建物がありそこは豪邸や裁判所、病院、学校などとしてよく登場している。最初に働いていた映画館もなかなか凝った作りの建物で、小栗旬監督作品「シュアリー・サムディ」などに登場していておっと思うことがあった。これらは、それぞれ横浜と川崎のフィルム・コミッションが協力している。

ちょっと気にしてみると皆さんの身近な土地・建物がスクリーンに登場しているかもしれない。こんな映画との距離の近さの感じ方も、また一興ではないだろうか?

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(文:村松健太郎

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