「あらゆる表現が自己セラピーだと思う」『私は絶対許さない』佐野史郎インタビュー

4月7日(土)公開の映画『私は絶対許さない』は、雪村葉子の手記『私は絶対許さない 15歳で集団レイプされた少女が風俗嬢になり、さらに看護師になった理由』を原作に、精神科医でもある和田秀樹監督が実写化した作品。東北の田舎町で過ごす、ごく普通の女子中学生の身に起こった実話を描いています。

(c)「私は絶対許さない」製作委員会

シネマズby松竹では、主人公の葉子が東京で出会い、彼女ののちの人生に大きな影響を与える雪村を演じた佐野史郎さんにインタビュー。

本作のオファーを受けたときの感想から、和田監督の素顔までたっぷりと語ってくださいました。

人間、ひとりでは何もできない


──かなり衝撃的な内容でしたが、脚本を読まれたときの感想をお聞かせください。

佐野史郎(以下佐野):原作者の過酷な実体験だけに、演じるにあたって覚悟を突きつけられる想いでした。とはいえ、単にレイプ事件を告発することだけがこの作品の趣旨ではないとも思いました。“東北”をキーワードとしたこの国の深層に迫るものではないかと。僕が演じる雪村も、単なる変態だとは思わなかったので、彼の言動のチグハグさにどうリアリティを与えたら良いのかと悩みました。

レイプ犯への「ひとりじゃ何もできないくせに」という内容の葉子のセリフが印象的で。“数の論理”で物事が決まっていく世の中に対するメッセージにも聞こえました。

──できあがった作品をご覧になっていかがでしたか?

佐野:参加している人間が言うのもアレですけど、ずっと魅入っちゃいましたね。特に葉子の家族が素晴らしかったです。友川カズキさん、美保純さん、白川和子さん、お三方の生身の身体の迫力に圧倒されました。“東北”を象徴する身体の三上寛さんも、短いシーンながら水先案内人としての重厚さに惹き込まれました。隆大介さんの這いつくばるような存在も凄かったです。

──葉子の目線で撮影されるという独特な手法でしたが、他の現場と比べていかがでしたか?

佐野:撮影技師さんが常に葉子との間にいるので、動きに制限がかかることはありましたけど、その不自由さが返って面白かったです。あと葉子役の平塚(千瑛)さんが、ご自身はほとんど手足しか映らないのに、カメラと一体となって演技をなさっていたのが印象的でした。

(c)「私は絶対許さない」製作委員会

中学時代の葉子役の西川加奈子さんとはほとんど一緒のシーンはなかったのですが、大人になってからの自分との対話の間に僕がいる時にはゾクゾクしました。

──役作りで苦労された点を教えてください。

佐野:僕が演じた雪村は、自分の心情、状況説明をしているセリフが多かったんです。なぜ、そこまで自分や相手のことを語るのか正直分からなくて、ひとりの人物として成立させるのに、もどかしい思いをずいぶんしました。

でも、そのことで雪村という人物像を塾考することができ、監督ともいろいろ相談するなかで、発見もありました。彼は原作にある実在の夫という役柄として存在しているばかりではなく、監督の代弁者として作品に存在しているんだなと。つまり葉子という人物を女性像の象徴として捉え、監督の女性に対する想いを捧げているのだと。実際、作品の中で、登場する男性に救いはないけれど、女性には全て救いを与えています。この点については監督からも、“その通りです”とお言葉をいただきました。

──先ほど監督のお話が出ましたが、和田監督は精神科医の顔もお持ちです。今回初めてご一緒されてどのような印象を持たれましたか?

佐野:常に悶々としていらっしゃるように感じられました。それはおそらく精神科医でありながら、常にご自分も患者としてご自身を診察しながら現場に取り組んでいらっしゃったからなのではないかとお見受けしました。

あと、とにかくグルメ! 葉子に美味しいものを食べさせるシーンに出てくるものは、全て実際に監督が好んでいらっしゃるお店のものばかりで。なので、間違いなく僕の役は監督の分身です(笑)。ワインにも詳しくていらして、頻繁にご自宅でワイン会をやってらっしゃるそうです。

──撮影期間中にお食事行かれたりしたことはありましたか?

佐野:ありましたよ。金沢からロケ先の能登に向かう途中の、世にも美味しいお寿司屋さんに連れて行っていただきました! 素材は全て地のもので、ひっそりとした住宅街の中にある隠れ家的な佇まいで、知る人ぞ知る名店のようでした。

表現することの根本とは…

(c)「私は絶対許さない」製作委員会

佐野さんは本作のメッセージはどこにあると思われましたか?

佐野:タイトルの通り「絶対に許さない」という復讐劇として性犯罪を許さないという強いメッセージは当然あるでしょう。ですが、その「許さない」相手は、具体的な名前を挙げながらも象徴としての「男性」として受け取れるような気がします。先に述べましたように、登場する男性には救いを与えず、女性には全て救いを与えていますし。

では、「男性」とは何か? “東北”をキーワードとしたこの作品の中で語られる“レイプ”とは、単なる性犯罪のことだけではなく、否が応でもこの国の歴史に残された拭いきれない罪への問いかけなのだと思います。「戦場」に出かけた兵士=男性なのかもしれません。

この作品では様々な男性が登場しますが、僕が演じている雪村は具体的な肉体が希薄で、象徴としての「男性」のように思われます。そこに監督の分身として雪村を登場させることで、ご自身に対する問いかけにもなっているのではないかと感じました。

監督にとってこの作品を映画化するということは、とことんご自分と向き合うことであり、同時に魂の救済でもあるのだと思います。もちろん原作者の方にとってもセラピーの部分があると思いますが。

──男と女って何なんでしょうね。

佐野:永遠の謎。ぜひご覧いただいた方同士で共有しあっていただけたらと思います。

──本日はありがとうございました!

インタビューを終えて

もともと口数が多い方ではないのだと思いますが、ひとつひとつの質問をじっくり咀嚼してお答えいただく姿が印象的でした。

今作は主人公の主観で撮影したことによって、ドキュメンタリー風に仕上がっており、これまでにない感覚に陥りました。佐野さん同様、ひとりの女性の人生に魅入ってしまう自分がいました。作品内容から嫌厭される方もいらっしゃるかもしれませんが、ひとりでも多くの方にご覧いただきたい作品です。

『私は絶対許さない』のあらすじ

東北地方の田舎で育った中学3年生の葉子(西川可奈子)。ごく普通に暮らしていた彼女の人生が15歳の元旦にあった集団レイプ事件により一変する。

信頼していた家族からも見放された葉子はある日レイプ犯のひとりの養父と援助交際の契約を交わし、男たちへの復讐のために生きるようになる。高校を卒業した葉子は東京で全身整形を施し、新たな生活をスタートさせるが…。

グラビアなどで活躍する平塚千瑛が整形後の主人公・葉子役、NHK大河ドラマ「西郷どん」に出演の西川可奈子が学生時代の葉子役を演じてダブル主演を務め、隆大介、佐野史郎、美保純、友川カズキ、白川和子、吉澤健、三上寛らベテラン勢が脇を固める。

『私は絶対許さない』公開情報

出演:平塚千瑛、西川可奈子、美保純、友川カズキ、白川和子、隆大介、佐野史郎 ほか
監督:和田秀樹、原作:雪村葉子(ブックマン社)、脚本:黒沢久子

4月7日(土)から、テアトル新宿にて公開ほか全国順次
http://watashihazettaiyurusanai.com

(写真:結城さやか、文:ナオ)

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