8年ぶりの映画主演。宮沢りえの鮮烈な演技が印象深い、映画『紙の月』

昨年、映画『桐島、部活やめるってよ』(配給ショウゲイト)で日本アカデミー賞を始め、多くの映画賞を総なめにした感のある吉田大八監督の新作、宮沢りえ主演『紙の月』(配給松竹)が15日から全国260のスクリーンで公開されている。

土日2日間で動員数10万4018人、興行収入1億3000万円超でランキングも2位につけ、出足好調である(興行通信社調べ)。

角田光代の同名の原作小説は、すでに原田知世の主演によりNHKでテレビ化されている話題作で、映像化の過程は同じ原作者の『八日目の蝉』に等しい。

銀行に契約社員として勤める平凡な主婦が、社会に関わり重用されることを理解しようとしない夫との間の空虚さを抱え込みながら、ふと出会った大学生への傾斜をきっかけに横領事件を引き起こすという実際の事件に着想を得たとされる原作は、主人公とその恋愛相手となる青年いずれもが「ここから出して」という切実、苛烈な心情を訴え、鮮烈な読後感をもたらすサスペンス仕立ての社会小説だった。

吉田大八監督は、テレビでの実績めざましい若手の脚本家、早船歌江子を得て、先輩、同僚行員(小林聡美、大島優子)を新たに創出することによって、原作以上になった金銭をめぐる矜持まで輪郭鮮やかにし、主人公の満たされない現実を突き破ろうとする心の闇を強調することに手腕を見せた。

8年ぶりの映画での主演となった、主人公梅澤梨花に扮する宮沢りえは、しばらく続いた舞台で鍛え抜かれた演技力を十分に活かしきり、存在感も抜群。

一人の凡庸な主婦が酷い非現実へと駆け抜けてゆく様を目の覚めるような鮮烈な演技で体現して本年度の東京国際映画祭で観客賞と合わせて主演女優賞を獲得し、華麗に本年度映画賞レースの先頭に立った。

    ピックアップ

    新着記事

    Facebook Auto Publish Powered By : XYZScripts.com